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侯爵邸
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広く日当たりの良い、屋敷の中で一番良い客間を改装して“エリスの部屋”を作ったのはお祖父様だ。
私が産まれて顔を見ると直ぐに子供用の家具に入れ替えて玩具やぬいぐるみで埋め尽くした。
7歳になる頃には再改装して、12歳でも、成人でも再改装した。
お祖母様やお祖父様の子達よりも待遇が良い。
顔がそっくりなので誰も何も言わない。
そしてまた改装されている。
多少落ち着いてはいるが、その代わりかなり高価な物が目につく。
「ねえ。また?」
「はい。エリス様の婚姻後に直ぐ」
「そっか」
クローゼットを開けると何故かドレスが。
「これ…」
「大旦那様が毎年注文なさっております。
昨年のものは隣のお部屋に保管しております。
それより前のものは処分しております」
「もったいない」
「サイズが変わると嬉しそうにドレスを注文なさっておられました」
「何で知ってるの?」
「サヴォワ領の服と靴の店全部にサイズが変わったら教えるよう命じました」
「お直しの店にも?」
「はい」
プライバシーは皆無ね。
「エリス様、あちらのキャビネットをご覧ください」
鍵を渡され、半透明の硝子のキャビネットを開けた。
「ちょっとコレ!」
高さは私の顎までの高さ。幅は私の腕の長さ。奥行きは指先から肘までの長さくらいのキャビネットにとんでもない物が並べられていた。
可愛らしいものから豪華なものまで、超大型のジュエリーボックスだった。
「下の引き出しは最高級の毛皮の襟巻きなどが入っております。
下から二番目と三番目の引き出しは産まれた時から嫁がれるまでの物がしまわれております」
一体いくらかけたのよ~
「よく叔父様達が怒らなかったわね」
「エリス様にかけるお金は、大旦那様個人資産の運用による収入から捻出しておりますので、文句など出ることはございません」
「お婆ちゃまも?」
「はい」
「さあ、湯浴みにいたしましょう」
侯爵夫人である祖母は息子夫婦と領地で暮らしている。
ここにはお祖父様と跡継ぎ教育中のニコラが住んでいた。
ニコラは私と同い年。22歳だ。
結婚は来春になるみたい。
婚約者が今年学園を卒業するからだ。
湯浴みを済ませ髪を乾かすと夕方になっていた。
「エリス、離縁したんだって!?」
「署名はしたから近日中にそうなるわね」
気不味そうな顔をしているのはニコラだ。
友人宅から帰ってきたばかりだ。
「そんな顔をしないで。私、すごく嬉しいの」
「ならいいけど。詳しく教えてよ」
「長いから食後にね」
「相変わらずエリスは可愛い顔をしているな」
「お爺ちゃまの真似をしなくていいのよ?」
食事を終えてお茶を飲みながらサヴォワ伯爵家での扱いを簡単に話した。
二「持参金は?」
私「私の生活費に充てると言われたけど、あの生活なら一生分よね。返してもらいたいけど解放されたことが大事だから諦めるわ」
二「お前の旦那は何も言わないのか」
私「早くにお義父様が亡くなって、その後はジョゼフ様が継いだけど実質はお義母様がやっているから言いなりなの」
爺「彼の母親は子ができない理由を知らないのだろう?」
私「多分」
爺「では知っていて赤い離縁届にしたかもしれない可能性があると?」
私「私に非がないと追い出すのに慰謝料がかかるから。
でも毎週閨の日の昼間に授かる方法の講義をお義母様から受けて、翌日にはジョゼフ様にしっかり注いだか聞いていたから知らないとは思うのだけど」
二「はあ!? 何だよそれ!」
そう。昼間から性器や体位の教本のような絵の本を見ながら、“今日はこの体位で子種を受け止めなさい”と指定してくるのだ。
身に付けるナイトドレスはお義母様の若い時のもの。
初夜の1時間前には私とジョゼフ様に予行演習をさせた。正常位と腰の振り方だ。
爺「そんな屈辱を受けていたのか!」
私「もう次のお嫁さんが決まっているらしいけど、きっとジョゼフ様も私じゃなくなれば上手くいくわ」
爺「エリス。明日の午後、教会へ行くからな」
二「教会?エリスと?何しに行くんですか?」
爺「白百合の証明をしてもらうんだ」
二「はあ!?」
私が産まれて顔を見ると直ぐに子供用の家具に入れ替えて玩具やぬいぐるみで埋め尽くした。
7歳になる頃には再改装して、12歳でも、成人でも再改装した。
お祖母様やお祖父様の子達よりも待遇が良い。
顔がそっくりなので誰も何も言わない。
そしてまた改装されている。
多少落ち着いてはいるが、その代わりかなり高価な物が目につく。
「ねえ。また?」
「はい。エリス様の婚姻後に直ぐ」
「そっか」
クローゼットを開けると何故かドレスが。
「これ…」
「大旦那様が毎年注文なさっております。
昨年のものは隣のお部屋に保管しております。
それより前のものは処分しております」
「もったいない」
「サイズが変わると嬉しそうにドレスを注文なさっておられました」
「何で知ってるの?」
「サヴォワ領の服と靴の店全部にサイズが変わったら教えるよう命じました」
「お直しの店にも?」
「はい」
プライバシーは皆無ね。
「エリス様、あちらのキャビネットをご覧ください」
鍵を渡され、半透明の硝子のキャビネットを開けた。
「ちょっとコレ!」
高さは私の顎までの高さ。幅は私の腕の長さ。奥行きは指先から肘までの長さくらいのキャビネットにとんでもない物が並べられていた。
可愛らしいものから豪華なものまで、超大型のジュエリーボックスだった。
「下の引き出しは最高級の毛皮の襟巻きなどが入っております。
下から二番目と三番目の引き出しは産まれた時から嫁がれるまでの物がしまわれております」
一体いくらかけたのよ~
「よく叔父様達が怒らなかったわね」
「エリス様にかけるお金は、大旦那様個人資産の運用による収入から捻出しておりますので、文句など出ることはございません」
「お婆ちゃまも?」
「はい」
「さあ、湯浴みにいたしましょう」
侯爵夫人である祖母は息子夫婦と領地で暮らしている。
ここにはお祖父様と跡継ぎ教育中のニコラが住んでいた。
ニコラは私と同い年。22歳だ。
結婚は来春になるみたい。
婚約者が今年学園を卒業するからだ。
湯浴みを済ませ髪を乾かすと夕方になっていた。
「エリス、離縁したんだって!?」
「署名はしたから近日中にそうなるわね」
気不味そうな顔をしているのはニコラだ。
友人宅から帰ってきたばかりだ。
「そんな顔をしないで。私、すごく嬉しいの」
「ならいいけど。詳しく教えてよ」
「長いから食後にね」
「相変わらずエリスは可愛い顔をしているな」
「お爺ちゃまの真似をしなくていいのよ?」
食事を終えてお茶を飲みながらサヴォワ伯爵家での扱いを簡単に話した。
二「持参金は?」
私「私の生活費に充てると言われたけど、あの生活なら一生分よね。返してもらいたいけど解放されたことが大事だから諦めるわ」
二「お前の旦那は何も言わないのか」
私「早くにお義父様が亡くなって、その後はジョゼフ様が継いだけど実質はお義母様がやっているから言いなりなの」
爺「彼の母親は子ができない理由を知らないのだろう?」
私「多分」
爺「では知っていて赤い離縁届にしたかもしれない可能性があると?」
私「私に非がないと追い出すのに慰謝料がかかるから。
でも毎週閨の日の昼間に授かる方法の講義をお義母様から受けて、翌日にはジョゼフ様にしっかり注いだか聞いていたから知らないとは思うのだけど」
二「はあ!? 何だよそれ!」
そう。昼間から性器や体位の教本のような絵の本を見ながら、“今日はこの体位で子種を受け止めなさい”と指定してくるのだ。
身に付けるナイトドレスはお義母様の若い時のもの。
初夜の1時間前には私とジョゼフ様に予行演習をさせた。正常位と腰の振り方だ。
爺「そんな屈辱を受けていたのか!」
私「もう次のお嫁さんが決まっているらしいけど、きっとジョゼフ様も私じゃなくなれば上手くいくわ」
爺「エリス。明日の午後、教会へ行くからな」
二「教会?エリスと?何しに行くんですか?」
爺「白百合の証明をしてもらうんだ」
二「はあ!?」
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