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従属国の姫
鷲の紋章のついた甲冑を身に付けた兵士達を引き連れた深紅のマントの高貴な男が、一番良い席に座り謝罪をした。
「プリュム王国が中立国であることは重々承知していた。だが、サボデュール王国に奇襲をかけるにはプリュム王国から攻めた方が効果があると判断した。申し訳なかった。
ガルム王よ。貴殿の国 プリュム王国は今や戦争に加担した国だとサボデュール王国は思っているだろう。プリュム王国側からも攻めたからだ。
サボデュールは敗戦国として我らグリフ王国に支配される。プリュム王国は従属を受け入れたと声明を出してもらえないだろうか。そうすることがサボデュールの残党から守ることになるはずだ。
勝手な事をしたし、勝手な提案なのは分かっているが、もう後戻りはできない。
そして姫を輿入れさせてくれないか。
表向きにはプリュム王国はグリフ王国の従属国とするが、実質は戦争前と同じで構わない。どうだろうか」
逞しい体躯には所々傷跡があり、手も大きくゴツゴツしていた。彼の名はイザーク。グリフ王国 アーサー王の弟で将軍だ。
「第一王女は嫁いだばかり、第二王女クリステルはまだ14歳、第三王女はもっと幼い。
婚姻は直ぐなのだろう?プリュムの成人は19歳だ。とても受け入れられない」
戦争に巻き込まれたプリュム王国の国王ガルムは眉間に皺を寄せた。
こんなことをされて話し合いの席に着いているのは、プリュムが無血だからだ。
イザーク将軍がグリフ王国の遣いとしてプリュムの王を訪ね、そのまま王を人質に一旦武装解除させた。そこでサボデュール王国の悪事を説明し、攻めるのはサボデュール王国だから兵を通してくれというものだった。
グリフ王国はプリュム王国よりも規模の大きい国だ。時間をかければ頭を下げずに制圧することも可能だったはずだ。
この時に決断をしたのは王太子だ。父王が人質になっている以上、王太子が代理権を行使する法律があった。
王太子は受け入れ、プリュム兵にはグリフ兵に手出し無用と命じた。
だが、今、王太子は激しく後悔していた。
彼にとって第二王女は一番愛おしい存在だったからだ。
「では、19歳になるまで別の建物に住まわせ、不自由のない暮らしを約束しよう」
「どなたの妻に?正妃ですか?側妃ですか?」
「兄王ならば今年43歳。既に正妻と側妃が2人いる。
王太子は21歳。去年正妃を迎えたばかりだ。
第二王子は10歳だ」
「第二王子は対象外として、娘は側妃以外 道がないのか。…将軍は…王弟殿下は?」
「…正妻はいない」
「隠さず話してもらいたい」
「俺は側妃が産んだ王子だ。それも父が酔って下位貴族籍の侍女に手を付けたときの子だ。
城の敷地内の東側にある紅鷲の宮に住んでいる。
今回のように戦場に出てしまうし、血筋も半分だ。だから正妻は娶る予定はない。特に子を産ませようという気もない。だが別棟に何人か女を住まわせている」
「愛人ということだろうか」
「愛は無い」
「少し時間が欲しい」
「滞在中に答えを出してくれ」
イザーク将軍を客間へ案内した後、ガルム王は真下の部屋へ向かった。
イザーク将軍と話をしていた部屋と真下の部屋は伝声管のようなもので繋がっていた。
真下の部屋では、王妃である母と王太子である兄、第二王女の私が声を押し殺し、静かに上階の部屋の会話を聞いていた。
国王の父が家族の前に現れた。
母も私も血の気が引き、兄は怒りを隠せないでいた。
父「聞こえたか」
母「はい」
兄「勝手に戦争にプリュムの土地を利用して、挙句にクリステルを差し出せと!?あり得ませんよ!」
父「だが、プリュムは小さな国だ。こうなってはグリフの協力が必要だ。サボデュールにとってプリュムも敵国扱いになってしまった。敗戦国になっても油断はできない。グリフの完全統治が終わるまで報復に怯えなくてはならない。
理不尽だということは百も承知だが、時は戻せない」
母「それでは この子を犠牲にすると言うのですか!」
兄「クリステルは14歳ですよ!」
父「だが、国を守るために存在するのが王族なのだ。クリステル」
私「……直ぐにグリフ王国へ移住しなくてはならないのですね」
父「そうなる。嫁ぐ相手を選べるかもしれない」
沈黙が続いた後、母が案を絞り出した。
母「将軍の正妻はどうかしら。子を望んでいないなら白い結婚で済むわ。他に女性達がいるのならクリステルは相手をしなくて済むもの。
何年後か状況は変わってプリュムに返してもらえるかもしれないわ」
父「そうだな。王に嫁げば初夜は避けられない。多分王太子でも同じだろう。
クリステル。助け出せるなんて約束は出来ない。政略結婚と同じで契約書を交わして守らせるようにすることはできる」
母「王や王太子相手では、男児を授かった場合に正妃から疎まれるかもしれないわ。だから、」
私「分かりました。将軍の元へ嫁ぎます」
父「すまない クリステル」
兄「守ってやれなくてごめん」
母「愛してるわ」
私「務めを果たします」
明日 契約が済めばそのままグリフ王国へ連れて行かれる。道中は戦争が終わったばかりで危険だ。
医塔へ行き処置セットを鞄に詰めた。
よく使いそうな薬も詰めた。
「みんな、元気になってね」
「ううっ…クリステル様」
「まだ子供なのに…ううっ」
「クリステル様のために早く元気になります」
病床の患者さん達にお別れをした。
「プリュム王国が中立国であることは重々承知していた。だが、サボデュール王国に奇襲をかけるにはプリュム王国から攻めた方が効果があると判断した。申し訳なかった。
ガルム王よ。貴殿の国 プリュム王国は今や戦争に加担した国だとサボデュール王国は思っているだろう。プリュム王国側からも攻めたからだ。
サボデュールは敗戦国として我らグリフ王国に支配される。プリュム王国は従属を受け入れたと声明を出してもらえないだろうか。そうすることがサボデュールの残党から守ることになるはずだ。
勝手な事をしたし、勝手な提案なのは分かっているが、もう後戻りはできない。
そして姫を輿入れさせてくれないか。
表向きにはプリュム王国はグリフ王国の従属国とするが、実質は戦争前と同じで構わない。どうだろうか」
逞しい体躯には所々傷跡があり、手も大きくゴツゴツしていた。彼の名はイザーク。グリフ王国 アーサー王の弟で将軍だ。
「第一王女は嫁いだばかり、第二王女クリステルはまだ14歳、第三王女はもっと幼い。
婚姻は直ぐなのだろう?プリュムの成人は19歳だ。とても受け入れられない」
戦争に巻き込まれたプリュム王国の国王ガルムは眉間に皺を寄せた。
こんなことをされて話し合いの席に着いているのは、プリュムが無血だからだ。
イザーク将軍がグリフ王国の遣いとしてプリュムの王を訪ね、そのまま王を人質に一旦武装解除させた。そこでサボデュール王国の悪事を説明し、攻めるのはサボデュール王国だから兵を通してくれというものだった。
グリフ王国はプリュム王国よりも規模の大きい国だ。時間をかければ頭を下げずに制圧することも可能だったはずだ。
この時に決断をしたのは王太子だ。父王が人質になっている以上、王太子が代理権を行使する法律があった。
王太子は受け入れ、プリュム兵にはグリフ兵に手出し無用と命じた。
だが、今、王太子は激しく後悔していた。
彼にとって第二王女は一番愛おしい存在だったからだ。
「では、19歳になるまで別の建物に住まわせ、不自由のない暮らしを約束しよう」
「どなたの妻に?正妃ですか?側妃ですか?」
「兄王ならば今年43歳。既に正妻と側妃が2人いる。
王太子は21歳。去年正妃を迎えたばかりだ。
第二王子は10歳だ」
「第二王子は対象外として、娘は側妃以外 道がないのか。…将軍は…王弟殿下は?」
「…正妻はいない」
「隠さず話してもらいたい」
「俺は側妃が産んだ王子だ。それも父が酔って下位貴族籍の侍女に手を付けたときの子だ。
城の敷地内の東側にある紅鷲の宮に住んでいる。
今回のように戦場に出てしまうし、血筋も半分だ。だから正妻は娶る予定はない。特に子を産ませようという気もない。だが別棟に何人か女を住まわせている」
「愛人ということだろうか」
「愛は無い」
「少し時間が欲しい」
「滞在中に答えを出してくれ」
イザーク将軍を客間へ案内した後、ガルム王は真下の部屋へ向かった。
イザーク将軍と話をしていた部屋と真下の部屋は伝声管のようなもので繋がっていた。
真下の部屋では、王妃である母と王太子である兄、第二王女の私が声を押し殺し、静かに上階の部屋の会話を聞いていた。
国王の父が家族の前に現れた。
母も私も血の気が引き、兄は怒りを隠せないでいた。
父「聞こえたか」
母「はい」
兄「勝手に戦争にプリュムの土地を利用して、挙句にクリステルを差し出せと!?あり得ませんよ!」
父「だが、プリュムは小さな国だ。こうなってはグリフの協力が必要だ。サボデュールにとってプリュムも敵国扱いになってしまった。敗戦国になっても油断はできない。グリフの完全統治が終わるまで報復に怯えなくてはならない。
理不尽だということは百も承知だが、時は戻せない」
母「それでは この子を犠牲にすると言うのですか!」
兄「クリステルは14歳ですよ!」
父「だが、国を守るために存在するのが王族なのだ。クリステル」
私「……直ぐにグリフ王国へ移住しなくてはならないのですね」
父「そうなる。嫁ぐ相手を選べるかもしれない」
沈黙が続いた後、母が案を絞り出した。
母「将軍の正妻はどうかしら。子を望んでいないなら白い結婚で済むわ。他に女性達がいるのならクリステルは相手をしなくて済むもの。
何年後か状況は変わってプリュムに返してもらえるかもしれないわ」
父「そうだな。王に嫁げば初夜は避けられない。多分王太子でも同じだろう。
クリステル。助け出せるなんて約束は出来ない。政略結婚と同じで契約書を交わして守らせるようにすることはできる」
母「王や王太子相手では、男児を授かった場合に正妃から疎まれるかもしれないわ。だから、」
私「分かりました。将軍の元へ嫁ぎます」
父「すまない クリステル」
兄「守ってやれなくてごめん」
母「愛してるわ」
私「務めを果たします」
明日 契約が済めばそのままグリフ王国へ連れて行かれる。道中は戦争が終わったばかりで危険だ。
医塔へ行き処置セットを鞄に詰めた。
よく使いそうな薬も詰めた。
「みんな、元気になってね」
「ううっ…クリステル様」
「まだ子供なのに…ううっ」
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病床の患者さん達にお別れをした。
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