5 / 24
礼桜兄!?
しおりを挟む
「新奈だろう?」
「え?」
「礼桜だ」
「……」
王太子殿下は立ち上がり、私の所までくると手を引いて立たせて抱きしめた。
「ごめん!新奈!お前を殺したのは俺だ!」
「お兄ちゃん!?」
「居眠りをして単独事故を起こした。新奈は即死だった。謝って済む事じゃないけど……ごめん……」
「スマホいじっていて死んだ記憶がないの。恐怖も痛みも分からない。だから大丈夫。
お兄ちゃん、大丈夫だから」
泣く礼桜兄が落ち着くのを待った。
クロエ様、ごめんなさい。レオナルド王太子殿下を救えなかった。薬が間に合わなかったのね。しかもギリギリで。だから礼桜兄が入れたんだわ。
「これ、茉由奈の乙ゲーだよな。お前が寝た後、何度か茉由奈に付き合わされたんだよ」
「そうなんだ」
「大丈夫か?大変なキャラだろう」
「まぁ、大丈夫よ。お兄ちゃんこそ大丈夫?いきなり既婚者だけど。しかも将来国王とか」
「それな。そろそろ覚悟を決めなくてはならなそうだ」
「?」
「新奈、これから第二王子を呼ぶ」
「何で?」
「お前を守るためだ」
「え!?いいよ!王族は緊張するから」
「もう遅い」
ノックと共に現れたのは王様にも王太子にも似ていない男の子だった。
「エリオット、こちらは私の命の恩人で、今、妹になったニーナ・イリスだ」
「お初にお目にかかります。王子殿下にご挨拶を申し上げます」
「君が…」
「エリオットは2年生だな。ニーナは1年生だ。レイノルズの息子がニーナを苦しめている。ニーナが困っていそうなら助けてやってくれ」
「お兄ちゃん!」
「……」
「ニーナには“お兄ちゃん”と呼べと命じた。私の命より大事な子だ。よろしく頼む」
「…かしこまりました」
「エリオット、わざわざすまないな。ありがとう。もういいぞ。
ニーナ、ケーキ食べるか?」
「……失礼します」
複雑な表情を浮かべて去っていったけど大丈夫かなぁ。
ケーキを食べ陛下と伯爵の元へ戻り、挨拶をした。
「ニーナ嬢、其方の案を頂こう。ミュゲールに恩を売ることにした。平伏させる方法は戦争だけではないということを教わった」
ええ!!戦争するつもりだったの!?
「ニーナ、週に1度は遊びにおいで。欲しい物ができたら私が買うからすぐ言うんだよ」
「レオナルド王太子殿下、畏れ多いことでございます」
「ニーナを妹の如く可愛がることに決めたんだ。だから“お兄ちゃん”とか“お兄様”と呼びなさい。可愛い妹を甘やかすのは私の役目だからな」
嬉しそうに抱きしめながら頭を撫でるけど両父が絶句してる気がする。見えないけど。
「「……」」
「お兄ちゃん」
「なんだニナ」
「帰る」
「次は泊まって行け」
「ええ~」
「お兄ちゃんは悲しいぞ。可愛い妹に避けられたら」
「じゃあ、アレで決めますか」
「いいぞ」
「「ジャンケン……」」
負けた私は週末泊まりに来る約束をさせられた。
帰りの馬車で。
「ニーナ…その、王太子とは…」
「 ? 」
「ニーナは王太子殿下が好きか」
まぁ、お兄ちゃんだからね
「 はい 」
「王太子殿下には正妃がいらっしゃる。
お前はそれでもいいのか?」
仕方ないも何も既婚者に転生したのだから仕方ないよね。
「仕方がないことです」
「場合によっては側妃も娶るかもしれないぞ」
あぁ、正妃はお兄ちゃんが選んだわけじゃないもんね。つまりお兄ちゃんに好きな人ができたら側妃にするってこと?
「本人達が良ければいいのでは?」
「お前は?」
「別に…」
「そうか」
私は知らない。
父が大きな勘違いをしていたことに。
「え?」
「礼桜だ」
「……」
王太子殿下は立ち上がり、私の所までくると手を引いて立たせて抱きしめた。
「ごめん!新奈!お前を殺したのは俺だ!」
「お兄ちゃん!?」
「居眠りをして単独事故を起こした。新奈は即死だった。謝って済む事じゃないけど……ごめん……」
「スマホいじっていて死んだ記憶がないの。恐怖も痛みも分からない。だから大丈夫。
お兄ちゃん、大丈夫だから」
泣く礼桜兄が落ち着くのを待った。
クロエ様、ごめんなさい。レオナルド王太子殿下を救えなかった。薬が間に合わなかったのね。しかもギリギリで。だから礼桜兄が入れたんだわ。
「これ、茉由奈の乙ゲーだよな。お前が寝た後、何度か茉由奈に付き合わされたんだよ」
「そうなんだ」
「大丈夫か?大変なキャラだろう」
「まぁ、大丈夫よ。お兄ちゃんこそ大丈夫?いきなり既婚者だけど。しかも将来国王とか」
「それな。そろそろ覚悟を決めなくてはならなそうだ」
「?」
「新奈、これから第二王子を呼ぶ」
「何で?」
「お前を守るためだ」
「え!?いいよ!王族は緊張するから」
「もう遅い」
ノックと共に現れたのは王様にも王太子にも似ていない男の子だった。
「エリオット、こちらは私の命の恩人で、今、妹になったニーナ・イリスだ」
「お初にお目にかかります。王子殿下にご挨拶を申し上げます」
「君が…」
「エリオットは2年生だな。ニーナは1年生だ。レイノルズの息子がニーナを苦しめている。ニーナが困っていそうなら助けてやってくれ」
「お兄ちゃん!」
「……」
「ニーナには“お兄ちゃん”と呼べと命じた。私の命より大事な子だ。よろしく頼む」
「…かしこまりました」
「エリオット、わざわざすまないな。ありがとう。もういいぞ。
ニーナ、ケーキ食べるか?」
「……失礼します」
複雑な表情を浮かべて去っていったけど大丈夫かなぁ。
ケーキを食べ陛下と伯爵の元へ戻り、挨拶をした。
「ニーナ嬢、其方の案を頂こう。ミュゲールに恩を売ることにした。平伏させる方法は戦争だけではないということを教わった」
ええ!!戦争するつもりだったの!?
「ニーナ、週に1度は遊びにおいで。欲しい物ができたら私が買うからすぐ言うんだよ」
「レオナルド王太子殿下、畏れ多いことでございます」
「ニーナを妹の如く可愛がることに決めたんだ。だから“お兄ちゃん”とか“お兄様”と呼びなさい。可愛い妹を甘やかすのは私の役目だからな」
嬉しそうに抱きしめながら頭を撫でるけど両父が絶句してる気がする。見えないけど。
「「……」」
「お兄ちゃん」
「なんだニナ」
「帰る」
「次は泊まって行け」
「ええ~」
「お兄ちゃんは悲しいぞ。可愛い妹に避けられたら」
「じゃあ、アレで決めますか」
「いいぞ」
「「ジャンケン……」」
負けた私は週末泊まりに来る約束をさせられた。
帰りの馬車で。
「ニーナ…その、王太子とは…」
「 ? 」
「ニーナは王太子殿下が好きか」
まぁ、お兄ちゃんだからね
「 はい 」
「王太子殿下には正妃がいらっしゃる。
お前はそれでもいいのか?」
仕方ないも何も既婚者に転生したのだから仕方ないよね。
「仕方がないことです」
「場合によっては側妃も娶るかもしれないぞ」
あぁ、正妃はお兄ちゃんが選んだわけじゃないもんね。つまりお兄ちゃんに好きな人ができたら側妃にするってこと?
「本人達が良ければいいのでは?」
「お前は?」
「別に…」
「そうか」
私は知らない。
父が大きな勘違いをしていたことに。
644
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄されたユニコーンの乙女は、神殿に向かいます。
秋月一花
恋愛
「イザベラ。君との婚約破棄を、ここに宣言する!」
「かしこまりました。わたくしは神殿へ向かいます」
「……え?」
あっさりと婚約破棄を認めたわたくしに、ディラン殿下は目を瞬かせた。
「ほ、本当に良いのか? 王妃になりたくないのか?」
「……何か誤解なさっているようですが……。ディラン殿下が王太子なのは、わたくしがユニコーンの乙女だからですわ」
そう言い残して、その場から去った。呆然とした表情を浮かべていたディラン殿下を見て、本当に気付いてなかったのかと呆れたけれど――……。おめでとうございます、ディラン殿下。あなたは明日から王太子ではありません。
「婚約破棄だ」と笑った元婚約者、今さら跪いても遅いですわ
ゆっこ
恋愛
その日、私は王宮の大広間で、堂々たる声で婚約破棄を宣言された。
「リディア=フォルステイル。お前との婚約は――今日をもって破棄する!」
声の主は、よりにもよって私の婚約者であるはずの王太子・エルネスト。
いつもは威厳ある声音の彼が、今日に限って妙に勝ち誇った笑みを浮かべている。
けれど――。
(……ふふ。そう来ましたのね)
私は笑みすら浮かべず、王太子をただ静かに見つめ返した。
大広間の視線が一斉に私へと向けられる。
王族、貴族、外交客……さまざまな人々が、まるで処刑でも始まるかのように期待の眼差しを向けている。
『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!
志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」
皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。
そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?
『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!
【完結】よりを戻したいですって? ごめんなさい、そんなつもりはありません
ノエル
恋愛
ある日、サイラス宛に同級生より手紙が届く。中には、婚約破棄の原因となった事件の驚くべき真相が書かれていた。
かつて侯爵令嬢アナスタシアは、誠実に婚約者サイラスを愛していた。だが、サイラスは男爵令嬢ユリアに心を移していた、
卒業パーティーの夜、ユリアに無実の罪を着せられてしまったアナスタシア。怒ったサイラスに婚約破棄されてしまう。
ユリアの主張を疑いもせず受け入れ、アナスタシアを糾弾したサイラス。
後で真実を知ったからと言って、今さら現れて「結婚しよう」と言われても、答えは一つ。
「 ごめんなさい、そんなつもりはありません」
アナスタシアは失った名誉も、未来も、自分の手で取り戻す。一方サイラスは……。
【完結】真実の愛に気付いたと言われてしまったのですが
入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済みです!!!】
かつて王国の誇りとされた名家の令嬢レティシア。王太子の婚約者として誰もが認める存在だった彼女は、ある日、突然の“婚約破棄”を言い渡される。
――理由は、「真実の愛に気づいてしまった」。
その一言と共に、王家との長年の絆は踏みにじられ、彼女の名誉は地に落ちる。だが、沈黙の奥底に宿っていたのは、誇り高き家の決意と、彼女自身の冷ややかな覚悟だった。
動揺する貴族たち、混乱する政権。やがて、ノーグレイブ家は“ある宣言”をもって王政と決別し、秩序と理念を掲げて、新たな自治の道を歩み出す。
一方、王宮では裏切りの余波が波紋を広げ、王太子は“責任”という言葉の意味と向き合わざるを得なくなる。崩れゆく信頼と、見限られる権威。
そして、動き出したノーグレイブ家の中心には、再び立ち上がったレティシアの姿があった。
※日常パートとシリアスパートを交互に挟む予定です。
【 完結 】「婚約破棄」されましたので、恥ずかしいから帰っても良いですか?
しずもり
恋愛
ミレーヌはガルド国のシルフィード公爵令嬢で、この国の第一王子アルフリートの婚約者だ。いや、もう元婚約者なのかも知れない。
王立学園の卒業パーティーが始まる寸前で『婚約破棄』を宣言されてしまったからだ。アルフリートの隣にはピンクの髪の美少女を寄り添わせて、宣言されたその言葉にミレーヌが悲しむ事は無かった。それよりも彼女の心を占めていた感情はー。
恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい!!
ミレーヌは恥ずかしかった。今すぐにでも気を失いたかった。
この国で、学園で、知っていなければならない、知っている筈のアレを、第一王子たちはいつ気付くのか。
孤軍奮闘のミレーヌと愉快な王子とお馬鹿さんたちのちょっと変わった断罪劇です。
なんちゃって異世界のお話です。
時代考証など皆無の緩い設定で、殆どを現代風の口調、言葉で書いています。
HOT2位 &人気ランキング 3位になりました。(2/24)
数ある作品の中で興味を持って下さりありがとうございました。
*国の名前をオレーヌからガルドに変更しました。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる