【完結】転生先で婚約者の自爆を待つ

ユユ

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レオナルド王太子殿下(入角礼桜)

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【 レオナルド(礼桜)視点 】

熱い!身体中が熱い!

『レオナルド!レオナルド!』

『ミュゲールの薬は飲ませたのであろう!』

『危篤状態ですので、間に合わなかったかもしれません。私が早く気付けていれば…』

『兄様!目を開けて!』





身体がだるい。

『陛下、もう大丈夫でしょう。
かなり消耗なさっておいでですので、ゆっくり回復させます。病人食から徐々に普通食に切り替え、建物内の散歩から始めましょう』

『良かった!ではミュゲールの病で確定か』

『はい』

目を開けると見知らぬ外国人に囲まれていた。

大昔の貴族?医者?メイド??

『おお!レオナルド!』

『良かったわレオ!』

『其方はミュゲールの病にかかり、生死を彷徨った。クロエの婚約者の妹、ニーナ・イリスが救ってくれた』

『か、鏡を…』

鏡を見て強烈な刺激が全身を駆け抜ける。
電気が走ったような。そこで意識を失った。

翌日、専属侍従に全てを聞き確信した。
ここは乙女ゲームの世界でニーナは新奈だ!

私は新奈を殺したのに、私を救ってくれた。





新奈に会うと乙ゲーのニーナが現れた。
とても可愛い子だ。ゲームの絵が実物になるとこうなるのか…。

陛下に説明する新奈が可愛いな。
そもそも私が病に倒れ、青熱病の治療を受けていることを伯爵令嬢が知る術はない。
クロエも話していないだろう。


2人きりになり『新奈』と呼ぶと桃花色の瞳が大きく見開かれた。あの時は神も自分も呪ったが、再び会わせてくれたことに心から神に感謝をした。

中身が新奈じゃなければ交際を申し込みたい程の可愛い容姿だ。
縁を繋げたくて手紙や週一の登城を約束させた。

国王陛下も伯爵も驚いていたが新奈以外はどうでもいい。



1時間後。

エリオットが部屋に訪ねてきたが、早々に人払いをさせた。

「兄上、正直に答えてください」

「なんだ」

「兄上はニーナ嬢をどうなさるおつもりですか」

「は?」

「ニーナ嬢の卒業を待って第二妃に召し上げるおつもりですか」

「その気はない」

「純粋に妹のように慕うと?」

「ニナは命の恩人だ。賢くて可愛い。当然だろう」

「…もう愛称で呼んでいるのですか。
レイノルズ公爵令息の婚約者ですよ」

「だからなんだ。あんなクズ!
ニナを泣かせたら殺してやる!」

「兄上…」

「大丈夫。婚約は解消させる。ニナ自身がそう動いているはずだ」

「義姉上には?
政略結婚とはいえ、複雑でしょう」

「いいか、私はニナを守ると決めた。
ニナが将来結婚したい男が現れたらしっかり躾けようと思っているし、結婚を望まなければ私が娶って自由にさせ、私の庇護下置く」

「自由にですか」

「そうだ。正妃にはこれから話す」

「もし、私が…娶ると言ったら兄上は私をどうなさいますか」

「ニナ次第だ。
ニナがエリオットを望めば考える。
だが、エリオットがニナを泣かせたり、他の女に手を出せば、その命をもって償わせることになるだろう。

ニナが望み、エリオットがニナを大事にすれば、ニナごとお前も大事に守る」

「女に狂ったと指を刺されます」

「ハッ!それは独裁者だけだ。

私はニナが生きやすいように国を整える。
私は令嬢達の人権を守りたい」

「人権?」

「貴族令嬢としての義務もわかるが、娘にだって人権はある。無理矢理嫁がされては性奴隷と同じではないか。主人が飽きるまで続く強姦に耐えなくてはならない。

そして男児を2人ほど産めと強要される」

「それは…」

「エリオット、お前がその身で体験するか?

色狂いの年増を探して婿にやろうか?お前と婚姻しても複数の男と関係をもち、女が望むまま、自由に其方を閨に呼べる。飽きるまで…いや、性欲が無くなるまで」

「!!」

「女の方が大変だぞ?男は何度か果てれば終わりだが、女は疲れるか気を失うまで出来るからな。口で奉仕もさせられるぞ?」

「兄上…」

「女に強いていることだろう」

「……」

「何故、誰もおかしいと思わない。誰も変えようと思わない。女に犠牲を強いて成り立たせる貴族など、貴族とは呼ばない」

「……」

「はぁ、下がれ」

「兄上…」

「下がれ!」

「失礼します」





紅茶を飲んで、落ち着かせた後。

「レオナルド様」

「人払いを」

正妃か。乙ゲーで細かな情報はなかったからレオナルドの記憶だけが頼りだな。

「…第二妃のお話ですか」

「可能性はなくもない。だが、迎える時は白い結婚となるだろう」

「は?

……失礼いたしました」

「ジャンヌ。これから私は奇妙な事を話す。
其方が信じても信じなくても誰にも口外しないと誓ってくれ。其方に危害を加えたくない」

「!!

……かしこまりました」



俺は全てを話した。これから味方につけなければならないのは一番に正妃だからだ。

「……別の世界での兄妹ですか」

「そうだ。確かにこの世界の彼女は血も繋がっていないし似てもいない。可愛いとも思うし、私が望めば娶るのは簡単だ。
だが、中身は別の世界で血のつながった兄妹だったんだ。彼女は受け入れない」

「ニーナ様はご存じなのですか」

「私が兄の礼桜だということは教えた。死んでもなお私の心配をしてくれた。優しくて可愛い妹だ。

レイノルズのクソとの婚約があるから、手紙で報告させるようにした。
あと週に一度の登城も。礼桜にとってたったひとりの肉親だ。私からは気軽に会いに行けないからな」

「では、ニーナ様が人生において結婚というものを望まない時は第二妃として迎えるということは伝えていないのですね」

「そうだ。最終手段でしかない」

「…もう少しお気をつけてくださいませ。
城内はレオナルド様とニーナ様の話で持ちきりですわ」

「どうだっていい。大事だと知らしめられたらそれでいい」

「……」

「ジャンヌ。今から言う話は二度と口に出さない話だ。聞いたら忘れてくれていい」

「はい」

「別の世界でニナが死んだのは私のせいだ。
私が殺した」

「!!」

「こちらの世界で言えば、私がニナを乗せて馬車を操縦中に居眠りをして崖に落ちた」

「っ!」

「ニナは即死だ。なのに俺は生き残った」

「えっ?」

「父も母も泣きくれて、長女で妹の茉由奈は拳を握りしめて耐えていた。

大怪我を負った俺は病室で動けるようになるのを待った。
事故から1か月と数日後、首を吊った」

「!!」

「遺書にはこう書いた。

“新奈は自分が死んだことに気付いていないかもしれない。新奈の魂を迎えにいって一生面倒をみることにした。

もしかしたら天国へ行っているのかもしれない。
俺は天国へは行けないから、数十年後に2人が新奈に会ったら、謝っていたと伝えて欲しい。

茉由奈、ごめんな。

礼桜”

だから、ここでの俺の目的はニナの幸せだけだ。俺の命よりも大事だ。邪魔する者や危害を加える者には容赦はしない。

ニナに救ってもらったこのレオナルドの命はニナに使う」

「レオナルド様…」

「ジャンヌには申し訳ないが」

「分かりましたわ。

ですが、私とレオナルド様は婚姻をして世継ぎを残さねばなりません」

「私は無理強いしたくない。血は大事かもしれないが、ジャンヌに辛い思いをさせてまで残すものではない。ジャンヌが心から望むのであればそうしよう。

私のせいで子ができないと発表すればいいだけだ」

「……かしこまりました」


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