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エリオット第二王子
しおりを挟む【 エリオット視点 】
私には3人の姉兄妹がいる。
私の母は、王妃様との間に5年子ができなかったから迎えられた妾だ。
妾。つまり子を成すだけの役目の女。
妾はすぐに懐妊した。
そして妾が産んだのは第一王女だった。
すぐに他国の王子と婚約させた。
第一王女が生まれて数ヶ月後、王妃様の懐妊が分かった。王妃様が生んだのは第一王子。国中が祭りのように祝った。
王妃様の体を休ませる為、しばらく避妊をしたようだ。その間、妾は二度妊娠し、流産していた。
第一王子を出産して数年後、避妊を止め身籠ったのが第二王女だ。
この間にも妾はまた妊娠し、流産した。
計三度の流産の後、やっと第二王子を出産した。それがエリオットだ。
母は産後1か月経たずに死んだ。
成長して、母のこと、王族のことを教えられ納得した。
何故陛下がレオナルドやクロエと同じように私を愛してくれないのか。
2人は身分も高く後ろ盾のしっかりした王妃の生んだ後継ぎ。
第一王女と私は、身分が低く後ろ盾の頼りない、子を産むだけの道具が生んだスペア。
陛下にとって同じ子ではなかったのだ。
同腹の姉は、すぐ他国の王子と婚約が決まり、母国語より嫁ぎ先の言葉を優先させて厳しい教育を施したらしい。
王女教育まで終わると婚約者の国へ送り出した。
向こうで王子妃教育を受ける為だ。
その後は向こうの学園へ通ったらしい。
クロエ姉様はこの国の伯爵家に嫁ぐ。
私は用済みになったらどうなるのかな。
こっそり平民の勉強もしてきた。
ある日、兄上が重篤だと知らされるが、クロエ姉様の婚約者の妹が病気の正体を言い当て死の淵から蘇った。
療養を経て復帰した兄上はどこか違ってみえた。
以前の兄上は真の強い穏やかな方だった。
気のせいかと思ったが、呼び出された兄上の部屋で私は驚くこととなる。
恩人ニーナ嬢を紹介され、学校で守れと言う。
僅かな時間しか居なかったが、兄上はニーナ嬢に特別な感情を持っていると明確に分かった。
確かに可愛い子だった。
正妃とはまだ子を成していない。
兄上はあと2年経たずに他の令嬢を娶ることができる。それがニーナ嬢になるのか…。
非情な権力者が寵愛する女を見つけてしまったというのが今の兄上の状況だろうか。
公爵令息を殺すと言い、ニーナ嬢の望むがままにさせると言う。困惑していると、兄上は女性の現状を変えたいと言い出した。
兄上は私が否定すると思っているようだが違う。
兄上のような考え方を陛下が持ってくれていたら、母はあんな目には合わなかった筈だ。
王妃様は第二子を孕むまで、腹を休める期間を設けてもらえたが、母は使い捨てのように妊娠させられた。3度も流産しても止めなかった。
子を成すだけではない。
王妃様が相手をできない日に母は閨へ上がったようだ。
こっそり閨の記録を見たが、王妃様が体調不良や月のモノが来ている時、公務や里帰りで不在の時だけ母との閨の記録があった。
それ以外は孕みやすい日だけ。
母に付いていた元専属メイドに話を聞いた。
娶る数ヶ月前から医師の診察をさせて、孕みやすい日に娶って初夜を迎えた。
解すのは医師と助手に任せ、準備が整うと陛下が専用のメイドに勃たせてもらいコトを成した。
3ヶ月目以降に懐妊が分かり、閨は止まった。
産後数ヶ月で閨が再開した。王妃様が懐妊して閨の相手がいないからだ。
流石に早いので、専属メイドがこっそり避妊薬を飲ませたようだ。
子作りの為の閨ではない為か、解すのを下僕にさせようとしたが、さすがに専属メイドが名乗り出て代わりに解したようだが、陛下が挿入するとすぐ引き抜き、下僕にやり直させた。
せめて、解す者をひとりに決めて欲しいと専属メイドが平伏し懇願すると、その下僕に決まった。
閨は前触れもなく突然で、早朝、日中、深夜と構うことなく訪れて発散していった。
王妃様が閨事に復活すると、以前の通り、月に一度2日間だけになった。
あまり長く避妊薬を飲ませるとバレるので、数ヶ月が限度だった。
こんなことを繰り返して私が生まれた。
私と元専属メイドは互いに他言しない約束をした。彼女に金貨を数枚渡して感謝を述べた。
元専属メイドは泣きながら
『助けてあげられずに申し訳ございません。
陛下も妾を娶ることに抵抗をなさっておられました。しかし、正妃様がご懐妊なさらない以上仕方なく娶ったのです。
“陛下が望まぬ妾”として公募が始まりました。
当然、高位貴族や力のある貴族や富豪は名乗り上げませんでした。
名乗り上げたのは下位貴族と、正妃を引きずり下ろして寵愛を奪おうとする勢力と、借金に苦しむ貴族でした。
その時、どんな扱いでも文句を言わないと娘を差し出したのは妾のお父上の伯爵様でした。
生娘で発育のいい令嬢でした。
王家は多額の支援金を払う代わりに伯爵令嬢を買ったのです。
ですから、陛下は妾をお金で買った女と見ておられます。
もし、城から逃げたい時はお手伝いいたします』
小さな疑問も繋がった。そういうことか。
そう思った時のことを、これまでの辛い気持ちを思い出していた。
今は少し気が立っておられるようだから改めて兄上の考えに共感していると伝えに行こう。
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