【完結】転生先で婚約者の自爆を待つ

ユユ

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元の世界では

茉由奈編/幼い頃の新奈

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父、母、礼桜兄、私(茉由奈)、新奈(妹)の5人家族で、格闘一家だ。

その中で新奈だけは外部で習わせず、自宅で家族が教えている。

何故なら新奈は人懐っこく可愛い。
幼い頃から何度も拐われかけた。

3歳の時、幼児向けの遊戯場で他の父親が。
4歳の時、スーパーで見知らぬ男子小学生が。
5歳の時、公園で遊びに来ていた子の兄が。
別の日には通りがかりの青年が。
6歳の時、担任が。

それ以来、誰かが必ず送り迎えをする一方で、護身術を仕込んだ。

新奈は覚えていないからいつもどうして自分だけ習い事ができないのか、寄り道が許されないのか不満がっていた。

3歳の時は、遊技場から20メートルのところで新奈が泣いて犯人が逃げたが後日防犯カメラの映像で逮捕された。

4歳の時は、手を繋がれスーパーから出たところに出くわしことなきを得た。

それからはGPSを付けて通学路から逸れると警報が鳴るようにした。外出先でも家族と一定以上離れると警報が鳴るようにした。

6歳の時は、家族が焦った。警報器が捨てられていたからだ。
だが、目撃者がいて人相から担任だと母が気付き警察と突入。新奈がいた。
担任は鼻血を出していた。新奈の服を脱がそうとしたようだ。

新奈には教えてきた。家族以外で家族の立ち合い無く服を脱がせる人にはパンチかキックを入れろと。

新奈は知らない。

素質はあるけど習わせに外に出せない。
師範や他の修練生が新奈に目をつけたら新奈では捻じ伏せられる。

母は愛くるしく産んでごめんねと、新奈の寝顔を見て毎日言っている。
父は無言。兄は死に物狂いで強くなっていった。

新奈が中1の時に警報がなったがすぐ消えた。
母が駆けつけるとちょっとだけルートから逸れた雑貨屋にいた。

自分で警報をすぐ切ったらしい。
正座をさせられ鬼のような顔をした父に怒られていた。

理由は私の誕生日プレゼントを買いに行きたかったから。遠目にうつる雑貨屋に私の集めているキャラのフィギュアが入荷したと貼り紙があったらしい。

バカ新奈!

父に土下座して、これ以上新奈を怒らないでくれと頼んだら新奈が大泣きし始めた。
『お姉ちゃんを怒るくらいなら家出してやる~!!うわ~~~ん!!』

母はもらい泣き。私は泣くのを我慢。
礼桜兄は父に『怒るばかりじゃなくて対策をねろう』と言って新奈を抱っこした。




数年後、礼桜兄はプロになった。
新奈がカッコイイと言ったからとプロになった理由を言っていたが、本当は全国放送の試合の勝利インタビューで『俺の妹の新奈に手を出せば再起不能にしてやる』とカメラに向かって言った。

事務所からは怒られたが事情を話して新奈の動画を見せると黙ったらしい。

だから新奈には礼桜兄の試合は見てはいけないと禁止している。

禁止事項を破ると私や礼桜兄が怒られると思い込んでいる新奈は文句は言うが勝手に見ない。
中1の時のことが堪えたのだろう。


美少女とまでは言えないのに、異性をおかしくさせるようだ。

私の他校との交流戦の応援に来ていた新奈を見た対戦相手が“勝ったら妹を紹介してくれ”と言ったので試合前の手合わせでボコボコにしてやった。

やり過ぎだと怒られたが、妹を指差し、“あいつが妹を勝負の景品にしようとしたので家族を守りました”というと“もう少し手を抜け”と言われた。

妹は呑気に“お姉ちゃんカッコイイ!”と喜んでいた。はぁ。可愛いからいいけどね。

コラ!はしゃいで手を振るな!
男共がロックオンしたじゃないか!

しかたなく優勝し、新奈を抱きしめながら男共に“殺す”と合図を送っておいた。


嬉しそうにしがみつくこの子をいつまで守れるのか。
将来は礼桜兄のような男を旦那さんにしてくれたらなと思っていたのに。


翌年の大会を棄権した。
だって、もう新奈がいないから、強くなる必要がないんだもん。

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