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夜会の過ち
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今夜で最後、本当に今夜で最後だから…
そう心の中で言い聞かせながら淡いグリーンのドレスに身を包む。縁はグリーンで 中心に向かって黄緑色に輝くロジェの瞳の色。
多分 こうやって私に自分の色を纏わせるのは 令嬢避けだ。ロジェの赤みを帯びた茶色の髪に似せて赤やワイン色のドレスの時もある。
令嬢避けは成功していてロジェに恋人も婚約者もいない。令嬢達に囲まれて煩わしくなることもない。
全くいい迷惑だ。お陰で隣国に行かなくてはならなくなったのだから。大いに感謝して欲しいくらいだ。
支度が終わり部屋から出るとロジェが待っていた。
ここはエンヴェル侯爵邸。夜会も此処だ。
「よく似合っているよ」
これでもかというほどの微笑みを浮かべて 頬にキスをしたロジェは、私の手を取ると自身の腕に絡ませた。
「行こうか」
パーティ会場に入ると、既にエンヴェル侯爵家の長男夫妻が入り口で招待客に挨拶をしていて、中では侯爵夫妻が高貴なお客様のお相手をしていた。
「あの、私 裏方へまわります」
「ユリナちゃんは ロジェに甘えていればいいのよ」
「その通り。中で好きなだけ食べなさい」
子供扱いをする長男夫婦は いつも私に優しい。
「行くぞ」
ロジェと中に入るとやっぱり注目される。特に令嬢からは殺意さえ感じるのだ。
「おお、ロジェ殿」
「ハングベル伯爵、お久しぶりです」
「相変わらず男前ですな。娘のビアンカです。デビューしたばかりで緊張しているようですので、ロジェ殿が1曲踊ってくださればきっと、」
「でしたら兄に頼むといいですよ。兄の方が上手いですから。
ん?ユリナは腹が減ったか?向こうへ行こうか。
では伯爵、令嬢、失礼します」
ロジェは私の腰に手を回し、伯爵父娘から離れた。
「可愛くて良いじゃない。ダンスでも誘ってお話ししてみたら?」
「好みじゃない」
「どんな子ならいいのよ」
「……はぁ」
「な、何?」
「俺は親友から、見た目に飛び付く男だと思われているのだな」
「そういう意味じゃなくて」
「なら、俺に女を充てがおうとするな」
「ごめん」
少しきつい口調だったから怒っているのかと思って顔を見上げたけど、ロジェは微笑んでいた。
「え?揶揄われた?」
「揶揄っていない。ちょっと来い」
手を引かれてテラスへ出た。
私の手に触れながらロジェは真剣な顔をした。
「なあ、ユリナ。お前にとって俺は無しなのか?」
「はい?」
「俺もユリナも相手がいないし、親友になれるほど気を許しているのに 俺はお前にとって無しなのは何故だ」
「有り無しとかじゃなくて…格差が有り過ぎるじゃない。私は子爵家の娘で、権力も無ければ裕福でもない。貧しくはないけど持参金は多くない。容姿も平凡だもの。成績が良かったからといって貴族の嫁にそんなものは必要無いでしょう?
ロジェは全部持っている人じゃない。成績も良く 顔も体格も良く 家は豊かで権力有りだなんて。私じゃ釣り合わないじゃない」
「侯爵家が金と権力があるなら子爵家はそのままでいいだろう。双方同じである必要は無いし子爵家が困窮してなければいい。容姿も平凡ならいいじゃないか。男のような顔をしているわけでも岩のような顔をしているわけでもないだろう」
「だから私達は親友じゃない。
私とそういう気にはならないから親友でいられたわけでしょう?」
少し前にエンヴェル家から縁談があったけど、私を女として好きだから申し込んでいるのではないのが分かっているから断った。
「そういう気になったら婚約するか?」
「そんなに切羽詰まっているの!?」
「答えろよ」
「私なんかに欲情するわけがないじゃない」
「そうか。自信があるのだな?
俺がユリナに欲情したときは覚悟を決めろよ」
「はいはい。分かりました」
どう考えたって私はロジェに相応しくないばかりか惚れられる要素さえ皆無。唯一気を遣わなくていい相手というだけ。きっとあの件があるから話を持ってきたのだろう。
まあ、男の人は女性と違って婚期は厳しくないからまだまだ遊んでいられるのかな?
その後は そんなバカな会話をしたことを忘れ、ダンスをしてロジェが勧めるまま飲み物を飲んだ。
口当たりの良い甘いお酒を何杯か飲み、途中から視界も身体も思考もフラフラして。
覚えているのは…
“駄目…ロジェっ”
“大人しく力を抜いていろ”
“痛いっ”
“愛してるよ、ユリナ”
そう心の中で言い聞かせながら淡いグリーンのドレスに身を包む。縁はグリーンで 中心に向かって黄緑色に輝くロジェの瞳の色。
多分 こうやって私に自分の色を纏わせるのは 令嬢避けだ。ロジェの赤みを帯びた茶色の髪に似せて赤やワイン色のドレスの時もある。
令嬢避けは成功していてロジェに恋人も婚約者もいない。令嬢達に囲まれて煩わしくなることもない。
全くいい迷惑だ。お陰で隣国に行かなくてはならなくなったのだから。大いに感謝して欲しいくらいだ。
支度が終わり部屋から出るとロジェが待っていた。
ここはエンヴェル侯爵邸。夜会も此処だ。
「よく似合っているよ」
これでもかというほどの微笑みを浮かべて 頬にキスをしたロジェは、私の手を取ると自身の腕に絡ませた。
「行こうか」
パーティ会場に入ると、既にエンヴェル侯爵家の長男夫妻が入り口で招待客に挨拶をしていて、中では侯爵夫妻が高貴なお客様のお相手をしていた。
「あの、私 裏方へまわります」
「ユリナちゃんは ロジェに甘えていればいいのよ」
「その通り。中で好きなだけ食べなさい」
子供扱いをする長男夫婦は いつも私に優しい。
「行くぞ」
ロジェと中に入るとやっぱり注目される。特に令嬢からは殺意さえ感じるのだ。
「おお、ロジェ殿」
「ハングベル伯爵、お久しぶりです」
「相変わらず男前ですな。娘のビアンカです。デビューしたばかりで緊張しているようですので、ロジェ殿が1曲踊ってくださればきっと、」
「でしたら兄に頼むといいですよ。兄の方が上手いですから。
ん?ユリナは腹が減ったか?向こうへ行こうか。
では伯爵、令嬢、失礼します」
ロジェは私の腰に手を回し、伯爵父娘から離れた。
「可愛くて良いじゃない。ダンスでも誘ってお話ししてみたら?」
「好みじゃない」
「どんな子ならいいのよ」
「……はぁ」
「な、何?」
「俺は親友から、見た目に飛び付く男だと思われているのだな」
「そういう意味じゃなくて」
「なら、俺に女を充てがおうとするな」
「ごめん」
少しきつい口調だったから怒っているのかと思って顔を見上げたけど、ロジェは微笑んでいた。
「え?揶揄われた?」
「揶揄っていない。ちょっと来い」
手を引かれてテラスへ出た。
私の手に触れながらロジェは真剣な顔をした。
「なあ、ユリナ。お前にとって俺は無しなのか?」
「はい?」
「俺もユリナも相手がいないし、親友になれるほど気を許しているのに 俺はお前にとって無しなのは何故だ」
「有り無しとかじゃなくて…格差が有り過ぎるじゃない。私は子爵家の娘で、権力も無ければ裕福でもない。貧しくはないけど持参金は多くない。容姿も平凡だもの。成績が良かったからといって貴族の嫁にそんなものは必要無いでしょう?
ロジェは全部持っている人じゃない。成績も良く 顔も体格も良く 家は豊かで権力有りだなんて。私じゃ釣り合わないじゃない」
「侯爵家が金と権力があるなら子爵家はそのままでいいだろう。双方同じである必要は無いし子爵家が困窮してなければいい。容姿も平凡ならいいじゃないか。男のような顔をしているわけでも岩のような顔をしているわけでもないだろう」
「だから私達は親友じゃない。
私とそういう気にはならないから親友でいられたわけでしょう?」
少し前にエンヴェル家から縁談があったけど、私を女として好きだから申し込んでいるのではないのが分かっているから断った。
「そういう気になったら婚約するか?」
「そんなに切羽詰まっているの!?」
「答えろよ」
「私なんかに欲情するわけがないじゃない」
「そうか。自信があるのだな?
俺がユリナに欲情したときは覚悟を決めろよ」
「はいはい。分かりました」
どう考えたって私はロジェに相応しくないばかりか惚れられる要素さえ皆無。唯一気を遣わなくていい相手というだけ。きっとあの件があるから話を持ってきたのだろう。
まあ、男の人は女性と違って婚期は厳しくないからまだまだ遊んでいられるのかな?
その後は そんなバカな会話をしたことを忘れ、ダンスをしてロジェが勧めるまま飲み物を飲んだ。
口当たりの良い甘いお酒を何杯か飲み、途中から視界も身体も思考もフラフラして。
覚えているのは…
“駄目…ロジェっ”
“大人しく力を抜いていろ”
“痛いっ”
“愛してるよ、ユリナ”
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