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オレンジ色の蝋印 S
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「お嬢様!お待ちください!」
「嫌よ!ソレを持って来ないで!捨ててちょうだい!」
「シャルロットお嬢様!なりません!国からのお達しです!」
「見なかったことにすればいいじゃないの!追いかけてこないで!」
「配達記録というものがございます!」
「何で受け取るのよ!」
「拒否できる訳がございません!」
結局、ドレスで逃げ回っていた私はメイド長に捕まり、お父様とお母様のもとへ連行された。
「残念だが仕方ない。封を開けなさい」
「ドロテにはお別れのお手紙を出さないとね」
両親は政略結婚だが仲がいい。
私が伯爵家のドロテと交際することも許してくれている。
兄1人 姉2人。歳の離れた末娘の私は自由をもらえていた。
私はドロテと結婚して養子をとろうとしていた。
自由の国プリエでは、同性愛が認められている。
だが、子孫繁栄のため、出生率が下がると教会が選んだ婚姻を命じられることがある。
婚姻し子を産めという命令だ。
家のため領地のために好きでもない相手と政略結婚するのと同じで、国のための政略結婚だ。
国からオレンジ色の蝋で封をされ、模様はベゴニアの花。これが10組の男女の元に届く。
昨年も発行され、難を逃れたと安心していたのに。
同性婚は正式な婚約はできない。23歳を超えて意志が変わらなければ同性婚を認めるという決まりだ。だから19歳の私はその日を待ち侘びていた。
ガサっ
封を開け、中身を取り出した。
“シャルロット・オッセンに エリアス・バローとの婚姻を命じる。
婚姻は3ヶ月後、身綺麗にして備えよ”
「……」
お母様が通知を取り上げてお父様と読んだ。
「バロー子爵家か」
家令が大きな封筒を手渡した。
国からエリアス・バローの釣書と絵姿が同封してあった。
エリアス・バロー。嫡男23歳。
彼の恋人は男爵家の子息で22歳。
「おや、可哀想に。後数ヶ月で婚姻可能だったようだな」
「これはモテるわね」
黒髪に濃いめの青い瞳の令息は美男子だった。
少し冷たい感じがする。
「え~嫌だ~」
「拒否すると刑罰が待ってるのよ」
「ドロテを愛してるの」
「そのままドロテの結婚したら2人とも矯正施設に送られるわよ」
「……」
矯正施設とは有能な平民の子を宿す施設だ。
学者や発明家、医師や剣士など、優秀な子孫を残そうという目的で作られた。産む側の健康状態や能力も重視するめ、若い女なら誰でもいいわけではない。
許可証を所持した男が施設に訪れ、その日に孕みやすい女に種付けをする。
男側からすれば、娼館に行き無料でレベルの高い女を無責任に抱けるのだから拒否感を持つ者はそういない。
女側からすれば、突然指名されて受け入れなくてはならない。嫌がると縛ったり眠らされたりする。
どうするかは男が選ぶ。男が萎えたら終わりだから、男の望み通りにして事を成す。
但し、月に一度での行為で、月のモノが来てしまえば、また繰り返す。
産めなくなれば解放されるが、ほとんど行き場はない。国の施設に住み込みで働くか野垂れ死ぬ。
中には気に入られて下げ渡される場合もあるが稀らしい。
男の方は拒否すると兵役が科される。一番辛いと言われる場所に送り込まれる。兵役は20年。
酷い扱いだが、王命に叛いた罰ということになる。
そう。この婚姻を受けるしかない。
自由の国と言うが自由ではない。一部の犠牲の上で成り立たせようとしている自由だ。
「不公平だわ」
「何を言っても変わらない。
子を産めば離縁も可能だ」
「性別は問わないのだからさっさと産んで戻ってきなさい。ドロテも同じ気持ちだと思うわ」
「産んでドロテとやり直すわ」
婚姻費用は国持ち。合同で式を挙げ城で初夜を迎え、翌日から婚家で暮らす。
産めば出産祝いまで貰えるし離縁も可能。
この仕組みに不満はあってもそういう法律だと常識として根付いている。
それはなぜかというと、貴族籍にいる子は、令嬢は初潮 令息は精通を迎えると、異性に関することや子が産まれる仕組みを教わる。15歳では国の現状や国が選出した者達の王命婚や、受けた場合の恩恵と貢献、拒否した場合の罰則と影響を教わる。
具体的な手解きは各家門に任せていて婚姻前に受けることが多い。
それを何代も続けているのだ。
手紙を受け取った日から単独行動は許されない。
従者をどこへでも付き添わせる。問題を起こせば家門が制裁を受けることになる。
「ドロテ。今はお別れしなくてはならないの」
「どうしてシャルロットが」
ドロテには手紙は届いていなかった。
「さっさと産んで戻るわ。そうしたらまた一緒に過ごしましょう」
「そうね」
嫉妬深いドロテのことだから もっと騒ぐかと思っていたけどあっさりと了承してくれた。
屋敷に帰り婚姻に向けての準備を始めた。
不要な物の整理や、婚姻後に必要であろう物を揃える必要がある。
ドロテには3日に一度手紙を出した。返事はどこか文面が簡素な気がしたが、拗ねていると思っていた。
通知から2週間後、王城に呼ばれ懇親会に参加した。
「今お集まりの皆様は、未婚で適齢期の貴族です。教会と国の審査を経てお墨付きを得た皆様の将来は輝かしいものとなるでしょう」
名前が呼ばれ、婚姻予定の相手と同じテーブルに着いた。
い、威圧感がすごいんですけど。
「あの、睨まないでもらえませんか。
本意ではないのは皆同じですからね」
「……」
「え?まさかの無視ですか」
「……」
「はぁ」
最初からコレじゃ先が思いやられるわ。
よし。さっさと子を産んで離縁しよう。
「睨んでいない」
「え?」
「こういう顔だ」
「ふうん。そういうことにしておきます」
そんな訳ないじゃない!
ずっとそんな顔してたら恋人なんかできないでしょう!
「嫌よ!ソレを持って来ないで!捨ててちょうだい!」
「シャルロットお嬢様!なりません!国からのお達しです!」
「見なかったことにすればいいじゃないの!追いかけてこないで!」
「配達記録というものがございます!」
「何で受け取るのよ!」
「拒否できる訳がございません!」
結局、ドレスで逃げ回っていた私はメイド長に捕まり、お父様とお母様のもとへ連行された。
「残念だが仕方ない。封を開けなさい」
「ドロテにはお別れのお手紙を出さないとね」
両親は政略結婚だが仲がいい。
私が伯爵家のドロテと交際することも許してくれている。
兄1人 姉2人。歳の離れた末娘の私は自由をもらえていた。
私はドロテと結婚して養子をとろうとしていた。
自由の国プリエでは、同性愛が認められている。
だが、子孫繁栄のため、出生率が下がると教会が選んだ婚姻を命じられることがある。
婚姻し子を産めという命令だ。
家のため領地のために好きでもない相手と政略結婚するのと同じで、国のための政略結婚だ。
国からオレンジ色の蝋で封をされ、模様はベゴニアの花。これが10組の男女の元に届く。
昨年も発行され、難を逃れたと安心していたのに。
同性婚は正式な婚約はできない。23歳を超えて意志が変わらなければ同性婚を認めるという決まりだ。だから19歳の私はその日を待ち侘びていた。
ガサっ
封を開け、中身を取り出した。
“シャルロット・オッセンに エリアス・バローとの婚姻を命じる。
婚姻は3ヶ月後、身綺麗にして備えよ”
「……」
お母様が通知を取り上げてお父様と読んだ。
「バロー子爵家か」
家令が大きな封筒を手渡した。
国からエリアス・バローの釣書と絵姿が同封してあった。
エリアス・バロー。嫡男23歳。
彼の恋人は男爵家の子息で22歳。
「おや、可哀想に。後数ヶ月で婚姻可能だったようだな」
「これはモテるわね」
黒髪に濃いめの青い瞳の令息は美男子だった。
少し冷たい感じがする。
「え~嫌だ~」
「拒否すると刑罰が待ってるのよ」
「ドロテを愛してるの」
「そのままドロテの結婚したら2人とも矯正施設に送られるわよ」
「……」
矯正施設とは有能な平民の子を宿す施設だ。
学者や発明家、医師や剣士など、優秀な子孫を残そうという目的で作られた。産む側の健康状態や能力も重視するめ、若い女なら誰でもいいわけではない。
許可証を所持した男が施設に訪れ、その日に孕みやすい女に種付けをする。
男側からすれば、娼館に行き無料でレベルの高い女を無責任に抱けるのだから拒否感を持つ者はそういない。
女側からすれば、突然指名されて受け入れなくてはならない。嫌がると縛ったり眠らされたりする。
どうするかは男が選ぶ。男が萎えたら終わりだから、男の望み通りにして事を成す。
但し、月に一度での行為で、月のモノが来てしまえば、また繰り返す。
産めなくなれば解放されるが、ほとんど行き場はない。国の施設に住み込みで働くか野垂れ死ぬ。
中には気に入られて下げ渡される場合もあるが稀らしい。
男の方は拒否すると兵役が科される。一番辛いと言われる場所に送り込まれる。兵役は20年。
酷い扱いだが、王命に叛いた罰ということになる。
そう。この婚姻を受けるしかない。
自由の国と言うが自由ではない。一部の犠牲の上で成り立たせようとしている自由だ。
「不公平だわ」
「何を言っても変わらない。
子を産めば離縁も可能だ」
「性別は問わないのだからさっさと産んで戻ってきなさい。ドロテも同じ気持ちだと思うわ」
「産んでドロテとやり直すわ」
婚姻費用は国持ち。合同で式を挙げ城で初夜を迎え、翌日から婚家で暮らす。
産めば出産祝いまで貰えるし離縁も可能。
この仕組みに不満はあってもそういう法律だと常識として根付いている。
それはなぜかというと、貴族籍にいる子は、令嬢は初潮 令息は精通を迎えると、異性に関することや子が産まれる仕組みを教わる。15歳では国の現状や国が選出した者達の王命婚や、受けた場合の恩恵と貢献、拒否した場合の罰則と影響を教わる。
具体的な手解きは各家門に任せていて婚姻前に受けることが多い。
それを何代も続けているのだ。
手紙を受け取った日から単独行動は許されない。
従者をどこへでも付き添わせる。問題を起こせば家門が制裁を受けることになる。
「ドロテ。今はお別れしなくてはならないの」
「どうしてシャルロットが」
ドロテには手紙は届いていなかった。
「さっさと産んで戻るわ。そうしたらまた一緒に過ごしましょう」
「そうね」
嫉妬深いドロテのことだから もっと騒ぐかと思っていたけどあっさりと了承してくれた。
屋敷に帰り婚姻に向けての準備を始めた。
不要な物の整理や、婚姻後に必要であろう物を揃える必要がある。
ドロテには3日に一度手紙を出した。返事はどこか文面が簡素な気がしたが、拗ねていると思っていた。
通知から2週間後、王城に呼ばれ懇親会に参加した。
「今お集まりの皆様は、未婚で適齢期の貴族です。教会と国の審査を経てお墨付きを得た皆様の将来は輝かしいものとなるでしょう」
名前が呼ばれ、婚姻予定の相手と同じテーブルに着いた。
い、威圧感がすごいんですけど。
「あの、睨まないでもらえませんか。
本意ではないのは皆同じですからね」
「……」
「え?まさかの無視ですか」
「……」
「はぁ」
最初からコレじゃ先が思いやられるわ。
よし。さっさと子を産んで離縁しよう。
「睨んでいない」
「え?」
「こういう顔だ」
「ふうん。そういうことにしておきます」
そんな訳ないじゃない!
ずっとそんな顔してたら恋人なんかできないでしょう!
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