【完結】同性恋愛をしていたのに 異性との婚姻を命じられましたが溺愛されています

ユユ

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花と招待状 S

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メイドが花束と封筒を持ってきた。

「バロー子爵家?」

「はい」

封を開けると招待状だった。

「昼食の招待だって。好きな日で返事していいって。じゃあ明日にしようかな」

「そんな意地悪は駄目です」

「だって明日でもいいって書いてあるもの」

メイドは覗き込んだ。

「本当ですね。それでも直ぐは」

「いいじゃない。気になるし行ってくるわ。
直ぐに返事を出してちょうだい」

「かしこまりました」



翌日の昼前、子爵家から迎えの馬車が到着した。
聞いてない。

しかも子息が降りてきた。
何で?

「シャルロット」

「あ、はい」

差し伸べられた手を取ると馬車の中に促された。

「初めまして、オッセン侯爵夫人。
エリアス・バローと申します。
シャルロット嬢をお預かりいたします」

「ちょっと変わった子ですけど、お願いしますね」

「帰りも送りますのでご安心ください。
では、失礼いたします」

ドアを閉めてノックすると馬車は走り出した。

「お花、ありがとうございます」

「嫌いな花じゃなかったか」

「キツイ匂いの花は苦手ですが、それ以外は好きです」

「そうか」

この人、もしかして優しい?

「あの、恋人は男性ですよね」

「そうだ」

「いい天気ですね」

「全く話を逸せていないぞ。何が聞きたい」

「同性を好きになる人の多くは異性に幻滅した方だと聞きました。だとしたら私に無理をなさってるのかなと思いまして」

「確かに異性に幻滅したところから始まった。
だがお互い命じられた婚姻だ。君に当たっても仕方ない。同じ屋根の下で暮らすことになるんだ。険悪にはなりたくない」

「バロー卿はいい人そうですね。怖いですけど何とかなりそうです」

「怖い?…そんなつもりはないのだが」

「男性とのお付き合いの経験が無くて。それに…」

「それに?」

「何でもありません」

「それに何だ」

「私は…」

「思い切って言え」

「純潔なんです!」

「……そ、そうか」

「教育は受けましたが、とても恐ろしそうです」

「決死の覚悟は要らないと思うぞ」

「バロー卿の経験談ですか」

「男と女は違うし女との経験は無いが、経験談は幾度と聞いたことはある」

「私も聞いて回ろうかしら」

「そんなことはしなくていい」

「え?」

「エリアスだ」

「はい。存じ上げております」

「呼び方」

「もしかして、エリアス様と呼んで欲しいのですか?」

「……婚約者だからな」

まあ、そうかも。

「分かりました」



到着した子爵邸は凄かった。建物もうちより大きいし敷地が広い。

「迷子になりそう」

「それは困るな。侯爵家からメイドを連れて移ってくるのか」

「今のところは考えておりませんが馴染めなかったら呼ぼうかなとは考えていました」

「最初から呼んでもいいし、2人でも構わない。専属メイドの名前は?」

「リーズとカロルです」

「若い方は?」

「リーズです」

「若い方が順応が早いかもしれないぞ。本人が希望するなら連れてくるといい」

「考えてみます」

「令嬢は最初から連れてくるものだと思ったが」

「リーズは私に雇われたわけではなくて、オッセンに雇用されたのです。出来れば私の我儘で変えたくありませんから」

「うちが新興貴族だからか」

「はい?」

「名門オッセンの雇用とは釣り合わないと?」

「軽視しているのはエリアス様の方ではありませんか?」

「俺が?」

「リーズは何がきっかけでオッセンを選んだのか分からないじゃないですか。彼女にも選ぶ権利があるのを軽視していませんか?

それにバロー子爵家が新興貴族ですか。そうかもしれませんが、だから何ですか。何が悪いのですか」

「さぁな。差別される側だからな」

「どういう気持ちでお相手の方がそう仰っているのか分かりませんが、そう言う他に対抗手段を持っていない可哀想な家門という場合もあるんじゃないですか?性格が悪いだけかもしれませんけど。

爵位を買うよりも、平民が努力し功績を上げて貴族の仲間入りをする方が何万倍も困難なことなのです。今いる貴族全家門が平民になったとして、どれだけ這い上がれるでしょう。
そう思えば劣等感も含んでいるかもしれませんよ。

そもそも、神が人間をお造りになった時から平民と貴族と王族で分かれていたわけではありません。
起源は皆平民ですよ。神からすれば、人間が気にしている古い貴族も新しい貴族も大差ありません。

そんなにバロー家を受け入れたくないなら商会の扱う商品は買わなければいいのです。
いくつかの薬はバロー家の商会が他国から仕入れてる独占輸入品のはずです。白粉の原材料の一つもそうですし、他にも沢山あります。
それを買って使いつつも悪口をいう滑稽な輩を相手にすることはありません。そうは思えませんか」

「フハハハハハッ」

「ちょっと何!?」

「君は俺なんかより芯が強いんだな」

「まあでも、集団で言われ続けたら心から荒みますよね」

「荒んでみえるか?」

「さあ、どうでしょう。自ら卑下するくらいにはそうでしょうね」

「そうだな。降りようか」


馬車を降りると子爵夫妻が出迎えてくれていた。

「初めまして。バロー子爵家当主のアルバートと申します」

「妻のファビエンヌと申します」

「お招きいただき感謝申し上げます。シャルロット・オッセンと申します。どうぞ宜しくお願いいたします」

「まあまあ、何て可愛らしいのでしょう」

「確かにあの絵描きに仕事を頼んでは駄目だな」

「はい?」


屋敷の中に入り食事をいただいたあと、お茶を飲んでいた。すっかり夫妻と打ち解けて気楽に話せるまでになってしまった。

ア「これだよ。似てないだろう」

私「これが私の絵姿なら、確かに描いた人に肖像画の依頼は出してはいけませんが、この方は優秀ですが違う間違いをおかしています。
コレ、姉です」

フ「姉!?」

私「はい。城の職員から絵師に私の絵姿を送るよう言われたのに、間違えて次女の絵姿を送ってきたのでしょう……あれ?」

裏を見るとシャルロット・オッセンと書いてあった。

私「というより、絵師が私と次女の名前を取り違えていますね」

フ「まあ。では絵はそっくりなのかしら」

私「はい」

エ「これ、成人の時の?」

私「はい」

沢山質問をされて、その後は採寸されてお庭を散歩してティータイムにも誘われて帰って来た。





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