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追い込まれる女 D
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友人に会いたいと手紙を出しても予定が詰まってると皆から断られる。
絶対におかしい。
お父様に呼ばれて居間へ行くと、お父様とお母様、弟と義妹が座っていた。
「座りなさい」
「はい」
物凄く空気が重いしピリピリしている。
「ドロテ。お前は一体誰を敵に回したんだ」
「え?」
「知人も友人も皆 セクレス家に起きていることに心当たりが無いと言う。
だが、姉上が“恨みを買った”と言ったんだ。
それ以上は教えて貰えなかった」
「恨み?」
「どう考えても私達ではない」
は? 何なの!? 何で私だと決めつけるのよ!
「私は影響力のある大物に接触などしておりません。買い被りですわ」
「まあ、確かにな」
それはそれで失礼ね。
「もう一つ、何故か1週間後の第二王子殿下の誕生日のパーティーに追加で呼ばれた。ジュスタンとイヴェットに招待状が届いていただけなのに、私とミレーヌ、ドロテにまで急遽参加して欲しいと招待状が届いた。王都にいる以上、行かねばならない」
「第二王子殿下の方ですか」
「そうだ」
マティアス殿下とは年が合わないため呼ばれたことはない。第一王子の場合は当主夫妻と跡継ぎ、第二王子の場合は跡継ぎを招く傾向にあった。
「ドレスが間に合いませんわ」
「ある物を着ていきなさい」
「そんなっ、王宮主催ですのに!」
「王宮主催に着て行ったことのないドレスを着ればいいだけだ。ドレスのせいで欠席しますとでも言うつもりか?」
「いいえ」
「部屋に戻って準備をしなさい」
「失礼します」
ドレスを選び飾りも選び、髪型も決めた後、鏡台を見るといくつか無いものがあった。
「足りない気がするのだけど」
「美容液と頭髪用のオイルは使い切ってしまい、もう奥様と若奥様の分しかございません」
「またなの!?」
「使用期限が短く、買い置きが困難な商品ですので」
「だったら買い占めみたいなことはないはずじゃない。一度に何本も注文したら無駄だもの」
「これも原材料の関係で生産本数が…」
「殿下にお招きいただいているのよ!義妹から借りてきて!」
だけど、
「ドロテ様の使用本数の方が奥様や若奥様より多いため、駄目だと旦那様が…」
「何でお父様に聞くのよ!」
「そうしろと旦那様に命じられておりますので」
「薬は?」
「其方も入荷がございません」
「両方!?」
「はい」
「どこかに売ってるでしょう!」
「“月の欠片”は店頭から消えました。事前に通達があった様ですが高価なお薬のため、セクレス家では確保をしないと旦那様がお決めになりました」
「は!?」
「……」
「理由は? 薬よ!? そんな簡単に…国が関与するでしょう!」
「“月の欠片”はお薬といっても国に届の必要な正薬品ではなく、美容品寄りの準薬品となっており報告の義務がございません。つまり国の関与はございません。
改良版が開発されたようで、生産ラインの関係上 今までの品は作らないそうです。改良版は1年後、それまでは他のご利用者はいくつも買って発売再開までしのぐそうです」
「ギリギリまで古い物を作ればいいじゃないの!」
「改良版は同価のため、改良版が出れば其方に手を伸ばし これまでの物は余ってそのうち期限が切れてしまいます。ひとつの店舗で売る場合には調整が可能ですが国内外の店に委託販売をさせていては調整は困難です。
この様な調整は珍しいことではございません。
平民用の類似品は流通しておりますが、副作用が起こりがちで貴族で使う方はいないと言われております」
薬なのだから大丈夫でしょう。
「それを1年分買ってきて」
「旦那様に、」
「これを売って買ってきて!」
「かしこまりました」
「で、太陽の雫は?」
「こちらは価格が跳ね上がり、生産数が激減しました。旦那様が購入をお許しにならず、飲んでいらっしゃるのはドロテ様だけでした」
「それも買って来て」
メイドに宝石を渡した。
肌の調子がいつもと違う。髪の艶もいまいちだ。
翌日から再開できたのは月の欠片の類似品だ。太陽の雫はどこも売っていなかったらしい。
類似品の副作用を懸念したが、全く異変は感じない。
だが、3日後 身体が怠かった。
それが副作用だと気が付かなかった。
そしてパーティー当日。
「何これ!!」
鏡を見ると別人の様な肌になっていた。
吐き気もあって今日まで安静にしていて鏡を見ていなかった。
シワが目立ち、シミも目立ち、弛んでいる。
「ドロテ様、髪が!」
メイドが指差す方を見ると枕に大量の抜け毛が落ちていた。
「嘘!嘘よ!」
メイドが櫛を入れた。
「ヒッ!!」
鏡越しに櫛を見ると大量の毛が纏わり付いていた。
「何!?何したの!」
「まだ一度しか櫛を通しておりませんっ」
「私も見ておりました」
「駄目よ、梳かしては駄目!」
「整えないという選択肢はございません。この状態であれば何もしなくても落ちて人目に付きます」
目を瞑っている間に梳かさせた。
終わったと言うので目を開けると髪の毛はほとんど残っていなかった。
「ギャアアアアッ!!」
「ドロテ様!」
「落ち着いてくださいませ」
「パーティーは出られないわ!」
だけど
「カツラを被ってでも出なさい。今のセクレス家は隙を見せられないのよ」
お母様がそう言い、カツラを持って来させたが、
「屋敷にあるものは、すべて地毛にピン留めするタイプで、ドロテ様の状態では…」
「急いで頭髪の無い人向けのカツラを買って来てちょうだい」
「かしこまりました」
メイド2人が買いに走った。
絶対におかしい。
お父様に呼ばれて居間へ行くと、お父様とお母様、弟と義妹が座っていた。
「座りなさい」
「はい」
物凄く空気が重いしピリピリしている。
「ドロテ。お前は一体誰を敵に回したんだ」
「え?」
「知人も友人も皆 セクレス家に起きていることに心当たりが無いと言う。
だが、姉上が“恨みを買った”と言ったんだ。
それ以上は教えて貰えなかった」
「恨み?」
「どう考えても私達ではない」
は? 何なの!? 何で私だと決めつけるのよ!
「私は影響力のある大物に接触などしておりません。買い被りですわ」
「まあ、確かにな」
それはそれで失礼ね。
「もう一つ、何故か1週間後の第二王子殿下の誕生日のパーティーに追加で呼ばれた。ジュスタンとイヴェットに招待状が届いていただけなのに、私とミレーヌ、ドロテにまで急遽参加して欲しいと招待状が届いた。王都にいる以上、行かねばならない」
「第二王子殿下の方ですか」
「そうだ」
マティアス殿下とは年が合わないため呼ばれたことはない。第一王子の場合は当主夫妻と跡継ぎ、第二王子の場合は跡継ぎを招く傾向にあった。
「ドレスが間に合いませんわ」
「ある物を着ていきなさい」
「そんなっ、王宮主催ですのに!」
「王宮主催に着て行ったことのないドレスを着ればいいだけだ。ドレスのせいで欠席しますとでも言うつもりか?」
「いいえ」
「部屋に戻って準備をしなさい」
「失礼します」
ドレスを選び飾りも選び、髪型も決めた後、鏡台を見るといくつか無いものがあった。
「足りない気がするのだけど」
「美容液と頭髪用のオイルは使い切ってしまい、もう奥様と若奥様の分しかございません」
「またなの!?」
「使用期限が短く、買い置きが困難な商品ですので」
「だったら買い占めみたいなことはないはずじゃない。一度に何本も注文したら無駄だもの」
「これも原材料の関係で生産本数が…」
「殿下にお招きいただいているのよ!義妹から借りてきて!」
だけど、
「ドロテ様の使用本数の方が奥様や若奥様より多いため、駄目だと旦那様が…」
「何でお父様に聞くのよ!」
「そうしろと旦那様に命じられておりますので」
「薬は?」
「其方も入荷がございません」
「両方!?」
「はい」
「どこかに売ってるでしょう!」
「“月の欠片”は店頭から消えました。事前に通達があった様ですが高価なお薬のため、セクレス家では確保をしないと旦那様がお決めになりました」
「は!?」
「……」
「理由は? 薬よ!? そんな簡単に…国が関与するでしょう!」
「“月の欠片”はお薬といっても国に届の必要な正薬品ではなく、美容品寄りの準薬品となっており報告の義務がございません。つまり国の関与はございません。
改良版が開発されたようで、生産ラインの関係上 今までの品は作らないそうです。改良版は1年後、それまでは他のご利用者はいくつも買って発売再開までしのぐそうです」
「ギリギリまで古い物を作ればいいじゃないの!」
「改良版は同価のため、改良版が出れば其方に手を伸ばし これまでの物は余ってそのうち期限が切れてしまいます。ひとつの店舗で売る場合には調整が可能ですが国内外の店に委託販売をさせていては調整は困難です。
この様な調整は珍しいことではございません。
平民用の類似品は流通しておりますが、副作用が起こりがちで貴族で使う方はいないと言われております」
薬なのだから大丈夫でしょう。
「それを1年分買ってきて」
「旦那様に、」
「これを売って買ってきて!」
「かしこまりました」
「で、太陽の雫は?」
「こちらは価格が跳ね上がり、生産数が激減しました。旦那様が購入をお許しにならず、飲んでいらっしゃるのはドロテ様だけでした」
「それも買って来て」
メイドに宝石を渡した。
肌の調子がいつもと違う。髪の艶もいまいちだ。
翌日から再開できたのは月の欠片の類似品だ。太陽の雫はどこも売っていなかったらしい。
類似品の副作用を懸念したが、全く異変は感じない。
だが、3日後 身体が怠かった。
それが副作用だと気が付かなかった。
そしてパーティー当日。
「何これ!!」
鏡を見ると別人の様な肌になっていた。
吐き気もあって今日まで安静にしていて鏡を見ていなかった。
シワが目立ち、シミも目立ち、弛んでいる。
「ドロテ様、髪が!」
メイドが指差す方を見ると枕に大量の抜け毛が落ちていた。
「嘘!嘘よ!」
メイドが櫛を入れた。
「ヒッ!!」
鏡越しに櫛を見ると大量の毛が纏わり付いていた。
「何!?何したの!」
「まだ一度しか櫛を通しておりませんっ」
「私も見ておりました」
「駄目よ、梳かしては駄目!」
「整えないという選択肢はございません。この状態であれば何もしなくても落ちて人目に付きます」
目を瞑っている間に梳かさせた。
終わったと言うので目を開けると髪の毛はほとんど残っていなかった。
「ギャアアアアッ!!」
「ドロテ様!」
「落ち着いてくださいませ」
「パーティーは出られないわ!」
だけど
「カツラを被ってでも出なさい。今のセクレス家は隙を見せられないのよ」
お母様がそう言い、カツラを持って来させたが、
「屋敷にあるものは、すべて地毛にピン留めするタイプで、ドロテ様の状態では…」
「急いで頭髪の無い人向けのカツラを買って来てちょうだい」
「かしこまりました」
メイド2人が買いに走った。
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