【完結】同性恋愛をしていたのに 異性との婚姻を命じられましたが溺愛されています

ユユ

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苛立ち S

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何故だろうか。

「エリアス様、もう無理ですっ」

「もう1回」

「5分で終われますか」

「無理なのはもう分かってるだろう」

「だから無理なんですっ」

「妻を愛でるのは夫の甲斐性だからな」

「なにか違う」

「違わない」

何故かほぼ毎日 エリアス様は子作りをする。
確か、出来やすい日というものがあると書いてあったのに。しかも2回目は要らないのでは?
そう言うと1回目は外に吐精する。“しまった。うっかりしてた”と態とらしく言って2回目を始めるようになった。

おかげで午前中は使いものにならない。
彼は朝早く仕事に出るというのに見送りもできない。そう言うと嬉しそうに笑う。

そもそもエリアス様は男性を好きなのでは?
子ができるまでエリアス様は恋人と
だから女でもいいということなのか。


何とか8時に起きたが、エリアス様は出発していた。
食事を摂っているとお義母様が“エリアスの忘れ物を届けてくれない?”と仰るので、届けに向かった。

城門を通過し、騎士団の詰所に向かっていた。
エリアス様のせいで まだ少し足がしっかりしないので気を付けて歩いていた。

騎士達とすれ違うことが多くなってきたのでそろそろ目的地が近いと油断をしてしまった。

建物が目の前に迫ったとき、

「あっ」

「間に合った」

倒れそうになったところを誰かが受け止めてくれた。にっこり微笑む男性は…誰だか分からない。

「あ、ありがとうございます」

「何処に行くの?」

「騎士団の…詰所に」

「可愛いなぁ。お茶でも飲みに行かない?」

「夫の忘れ物を届に来ましたので」

「人妻かぁ。届け終わったらいいよね」

「え?嫌です」

「……」

「ありがとうございました。失礼します」

だけど腕を掴まれた。

「止めください!」

「詰所、そっちじゃない」

「!!」

「ハハッ!」

「ご、ごめんなさいっ」

「いいよ、いいよ。それだけ可愛ければ警戒しちゃうよね」

「……」

「よし、詰所までエスコートしよう」

「いえ、方角を教えていただければ」

「怪我でもしてるのかな?歩き難そうにしていたよね。これ以上無駄に歩き回りたくないなら腕を取って」

確かに。

エスコートを受けて歩き始めた。


「名前は何ていうの?」

「……バローです」

「中隊長の?」

「はい」

「じゃあ、王命婚姻の」

「はい」

「何で見かけたことがなかったんだろう」

「ほとんど女性のお茶会しか出席していませんでしたので」

「そうなんだ。子を産んだら別れるの?」

「そうなるとは思います」

「この間の殿下のパーティでの噂をちょっと聞いたんだけど、前の彼女とは別れてるんだよね」

「はい」

「やり直すなら私とどうかな」

「無いと思います」

「戻る恋人はいないし、もう男に抵抗ないよね」

「例えそうでも貴方に関係ありません」

「怒らせた?悪気は無いんだ。悪かった」

「……」

「でも回りくどく言ってる間に別の男に持っていかれたらと思うとね」

「向こうでお会いしたばかりじゃないですか」

「時間をかけたいなら時々会って話そうか」

「今日のことは全部忘れる予定です」

「シャルロット・ガルシア。いい響きだ」

「5分も経ってないじゃないですか」

「一目惚れに1分も要らないよ」

困ったなと思っていると、私を呼ぶ声が聞こえた。

「シャルロット!」

「エリアス様」

エリアス様は駆け寄ると、軽薄そうな男から引き離した。

「やあ、バロー中隊長」

「ガルシア補佐官」

「エリアス様、転びそうになったところを助けていただきました。それに迷ったみたいで案内をしてくださいました」

「妻がご迷惑をおかけしました。
シャルロット、おいで」

「ありがとうごさいました。失礼します」

「さっきの話、前向きに考えておいて」

「何の話ですか」

「彼女と私の内緒話だよ。じゃあ」


補佐官と呼ばれた人が立ち去ると、エリアス様が問い詰めてきた。

「何しに来た」

「お義母様にこちらを届けるようにと」

「シャルロットが届けなくてもよかったのに」

「……」

「今度から頼まれても引き受けなくていい」

「そうですね、そうします。ではお届けしましたので失礼します」

「送る」

「結構です」

「シャルロット」

「来た道を戻るだけですから、お仕事にお戻りください」

「送る」

エリアス様と静かに揉めていると救いの声が聞こえた。

「シャル!」

「マティアス殿下」

「来てるって聞いてさ。用事終わった?」

「はい、終わりました」

「じゃあ、行こうか。ケーキを用意させるよ。シャルの好きな茶葉で淹れさせるよ」

「入手できたんですね。
エリアス様、ここで失礼しますね」

「……」

腹が立ったので エリアス様の誘いに乗った。
あんな言い方ある?そんなに迷惑だった?
そもそも忘れ物をしたのも、私の脚が震えるのもエリアス様のせいなのに!!



マティアス殿下と昔話をしながら殿下の応接間に連れてきてもらった。

「初めて入りますが素敵ですね。何故か落ち着きます」

「そうだろう。僕専用の部屋はオッセンの領地の屋敷の内装を手掛けた業者に依頼したからね。オッセン邸と同じようにしてくれとお願いしたんだ」

「だからなのですね」

「僕も落ち着くんだよ」

久しぶりに昔話を咲かせて屋敷に戻ったのは夕方だった。



帰ってきたエリアス様と食事を済ませ、自室で寝ると言って部屋へ戻ったが、後からエリアス様が訪ねて来た。

「何で寝室で寝れないんだ」

「疲れましたのでこちらで休みます」

「シャルロット。言い方が悪かったのは自覚がある。すまなかった」

「次からはエリアス様に関する用事は引き受けませんのでご安心ください」

「そういうつもりじゃないんだ」

「今日は話したくありません。寝支度がありますので外していただいてもよろしいでしょうか」

「…すまなかった」

渋々退室してくれた。

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