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スタンサー侯爵
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【 スタンサー侯爵の視点 】
国王陛下から領地の屋敷に手紙が届いた。
アルメット第一王子の失脚による側近候補の白紙。
助かったと思った。
フレデリックは断るつもりなのが分かったから、角が立たないように出来るのか心配だった。王子有責の白紙なら問題無いし貸もできた。
それに今 スタンサー家が直面している問題についてフレデリックという選択肢があることが救いだ。
長男モーガンの跡継教育が暗雲に包まれていた。
勉強は出来たのに 領地のことや次期侯爵としての役目のこととなると使いものにならないのだ。
モーガンの妻シーラは騎士と浮気をして去年末に追い出し離縁が成立した。子はまだだった。
それ以来モーガンは心ここに在らずといった感じで、何をしても身に入らない。
さすがにこの状態のモーガンを執務室に置くのは士気が下がるので、当面休ませることにした。
そして気分転換に領地を回ってこいと言ったら全く帰ってこない。護衛騎士が時折報告の手紙を送ってくるので、ゆっくり巡っているのは分かっているが、既に二ヶ月も経っていた。
今度はモーガン本人から手紙が届いた。
“運命の出会いがありました。
当面クリークモンドの町に滞在します。
神のお導きに感謝を。
モーガン”
は?神のお導き??何を言っているんだ あいつは。
そこからさらに一ヶ月半が経っても帰ってこない。
クリークモンドに様子を見に行かせると、戻ってきた兵士達が口籠った。
「いいから見たままを報告してくれ」
「信仰に目覚めたようです」
聞き間違いだろう。
「……もう一度頼む」
「モーガン様は信仰に目覚めたようです」
「信仰って あの信仰か? 神に祈るやつか?」
「はい。教会に通い詰め、神父を困らせています。
モーガン様は領主様のご子息ですから」
「信仰というのは神職という意味か」
「はい」
「はぁ~っ」
「神に仕えることが運命だと 生き生きとなさっていますが、一方でクリークモンドの教会に所属するシスターに想いを寄せているのではないかという意見もありました」
…というのがスタンサー家が直面している問題だ。
モーガンの問題が判明した矢先に陛下から手紙が届いて王都へ来たわけだが。
まだ モーガンに会っていないから判断が付かない。
今の時点でフレデリックに何か言って悩ますのは良くないと思い内緒にしている。
夜、フレデリックにそれとなく、将来についてどう考えているのか聞いてみた。
「側近の話が無くなったが、何か考えているか?」
「さあ。兄の手伝いをするのか、婿に行くのか、事務官でも狙うか、何処かの補佐官にでもなるのか、全く分かりません。もしかしたらアルメット王子の側近の話は王命になるかもしれないと思っていましたので」
「特に希望は無いんだな?」
「はい」
「なら少し待ってくれないだろうか」
「わかりました」
とにかく早くクリークモンドに行かなくては。
翌日、フレデリックが学園に行ったのでこちらで処理する案件に手をつけつつ、休憩を挟みフレデリックに届いた釣書を見ていた。婿に望んでいるものが三件、嫁入りを希望しているものが…多いな。
コンコンコンコン
「入れ」
「旦那様、シュノー公爵家から遣いが来ております」
「シュノー公爵家?」
元婚約者候補の家門だな。王子絡みで何かあったのか?
手紙を渡されたので確認すると、子供達が学園に行っている間に面会したいと書いてあった。
今日明日ならいつでもいいが、直ぐに領地に戻らなくてはならないから、明後日は出発して居ないといった内容の返事を渡した。
すると直ぐに公爵が訪問してきた。
「シュノー公爵、ようこそお越しくださいました」
「いきなり申し訳ありません。内密にお話をしたいのですが」
「では、こちらへどうぞ」
応接間に通してお茶を用意させると人払いをした。
「王子殿下に何かありましたか?」
「違います。殿下は関係ありません。
ご子息のことなのですが、フレデリック殿は側近の話が無くなったわけですが、どうするか決まっていたりするのでしょうか」
「まだしばらくは決めないつもりです。
先ずは卒業させたあと 少し遊ばせてやろうかと」
「そ、それはいけませんっ!」
「え?」
「これ以上遊ばせるのはいけません!」
「フレデリックは真面目に学園に通っていますから、卒業したら少しくらい構わないじゃないですか」
これ以上ってなんだ?
「……夜は駄目です」
「夜…ですか?」
「夜遊びはいけませんよ」
「夜遊びなんてさせませんよ」
「……」
なんだ、その目は。
「ご令嬢は落ち着かれましたか?」
「心を乱しまくっておりますよ」
「ええ!?」
そうか、アルメット王子をお慕いしていたんだな。
「フレデリック殿のところには縁談は来ていますか?」
「婿入りが三件と、嫁入りは多数来ております」
「チッ」
「……」
何故舌打ち?
「まだ申し込みではなく、相談ということにして聞いてもらえますか」
「はい、どうぞ」
「エレノアをフレデリック殿の元へ嫁がせたいと言ったら侯爵はどう思いますか」
「フレデリックは次男ですよ?」
「分かっています」
「シュノー公爵令嬢が次男のフレデリックに嫁ぐのは、ちょっと想像がつかないと言いますか…ご令嬢のご希望ですか?」
「多分そうなります」
「多分?」
「まだエレノアが無自覚でして」
「同じ長男以外ならボルスト公爵家のジェイク公子もおりますが、本当にフレデリックなのですか?」
「立場ではなく、フレデリック殿に限ったことなのです」
「つまり恋愛結婚をさせたいと?」
「結論から言うとそういうことになります」
「でも正式な申し込みではないのですね?」
「はい」
「話は分かりました。ですが正式な申し入れでないと、検討しようがありません。息子に聞いてみます」
「まだフレデリック殿には内密にお願いします」
「特に何もお答えが出来ませんでしたが、お話は分かりました。子供達には内緒にしておきたいということでしたら そのようにします」
「ありがとうございます」
「公爵夫人も同じ考えですか?」
「はい、エレノアがフレデリック殿を好きなら叶えてあげたいと申しています」
「なるほど」
「お仕事中に失礼しました。エレノアが落ち着いたら話を聞いてみます」
「分かりました」
ん?
“心を乱しまくっております”って、フレデリックのせいということか?
ああ…悩みが増えたじゃないか。
国王陛下から領地の屋敷に手紙が届いた。
アルメット第一王子の失脚による側近候補の白紙。
助かったと思った。
フレデリックは断るつもりなのが分かったから、角が立たないように出来るのか心配だった。王子有責の白紙なら問題無いし貸もできた。
それに今 スタンサー家が直面している問題についてフレデリックという選択肢があることが救いだ。
長男モーガンの跡継教育が暗雲に包まれていた。
勉強は出来たのに 領地のことや次期侯爵としての役目のこととなると使いものにならないのだ。
モーガンの妻シーラは騎士と浮気をして去年末に追い出し離縁が成立した。子はまだだった。
それ以来モーガンは心ここに在らずといった感じで、何をしても身に入らない。
さすがにこの状態のモーガンを執務室に置くのは士気が下がるので、当面休ませることにした。
そして気分転換に領地を回ってこいと言ったら全く帰ってこない。護衛騎士が時折報告の手紙を送ってくるので、ゆっくり巡っているのは分かっているが、既に二ヶ月も経っていた。
今度はモーガン本人から手紙が届いた。
“運命の出会いがありました。
当面クリークモンドの町に滞在します。
神のお導きに感謝を。
モーガン”
は?神のお導き??何を言っているんだ あいつは。
そこからさらに一ヶ月半が経っても帰ってこない。
クリークモンドに様子を見に行かせると、戻ってきた兵士達が口籠った。
「いいから見たままを報告してくれ」
「信仰に目覚めたようです」
聞き間違いだろう。
「……もう一度頼む」
「モーガン様は信仰に目覚めたようです」
「信仰って あの信仰か? 神に祈るやつか?」
「はい。教会に通い詰め、神父を困らせています。
モーガン様は領主様のご子息ですから」
「信仰というのは神職という意味か」
「はい」
「はぁ~っ」
「神に仕えることが運命だと 生き生きとなさっていますが、一方でクリークモンドの教会に所属するシスターに想いを寄せているのではないかという意見もありました」
…というのがスタンサー家が直面している問題だ。
モーガンの問題が判明した矢先に陛下から手紙が届いて王都へ来たわけだが。
まだ モーガンに会っていないから判断が付かない。
今の時点でフレデリックに何か言って悩ますのは良くないと思い内緒にしている。
夜、フレデリックにそれとなく、将来についてどう考えているのか聞いてみた。
「側近の話が無くなったが、何か考えているか?」
「さあ。兄の手伝いをするのか、婿に行くのか、事務官でも狙うか、何処かの補佐官にでもなるのか、全く分かりません。もしかしたらアルメット王子の側近の話は王命になるかもしれないと思っていましたので」
「特に希望は無いんだな?」
「はい」
「なら少し待ってくれないだろうか」
「わかりました」
とにかく早くクリークモンドに行かなくては。
翌日、フレデリックが学園に行ったのでこちらで処理する案件に手をつけつつ、休憩を挟みフレデリックに届いた釣書を見ていた。婿に望んでいるものが三件、嫁入りを希望しているものが…多いな。
コンコンコンコン
「入れ」
「旦那様、シュノー公爵家から遣いが来ております」
「シュノー公爵家?」
元婚約者候補の家門だな。王子絡みで何かあったのか?
手紙を渡されたので確認すると、子供達が学園に行っている間に面会したいと書いてあった。
今日明日ならいつでもいいが、直ぐに領地に戻らなくてはならないから、明後日は出発して居ないといった内容の返事を渡した。
すると直ぐに公爵が訪問してきた。
「シュノー公爵、ようこそお越しくださいました」
「いきなり申し訳ありません。内密にお話をしたいのですが」
「では、こちらへどうぞ」
応接間に通してお茶を用意させると人払いをした。
「王子殿下に何かありましたか?」
「違います。殿下は関係ありません。
ご子息のことなのですが、フレデリック殿は側近の話が無くなったわけですが、どうするか決まっていたりするのでしょうか」
「まだしばらくは決めないつもりです。
先ずは卒業させたあと 少し遊ばせてやろうかと」
「そ、それはいけませんっ!」
「え?」
「これ以上遊ばせるのはいけません!」
「フレデリックは真面目に学園に通っていますから、卒業したら少しくらい構わないじゃないですか」
これ以上ってなんだ?
「……夜は駄目です」
「夜…ですか?」
「夜遊びはいけませんよ」
「夜遊びなんてさせませんよ」
「……」
なんだ、その目は。
「ご令嬢は落ち着かれましたか?」
「心を乱しまくっておりますよ」
「ええ!?」
そうか、アルメット王子をお慕いしていたんだな。
「フレデリック殿のところには縁談は来ていますか?」
「婿入りが三件と、嫁入りは多数来ております」
「チッ」
「……」
何故舌打ち?
「まだ申し込みではなく、相談ということにして聞いてもらえますか」
「はい、どうぞ」
「エレノアをフレデリック殿の元へ嫁がせたいと言ったら侯爵はどう思いますか」
「フレデリックは次男ですよ?」
「分かっています」
「シュノー公爵令嬢が次男のフレデリックに嫁ぐのは、ちょっと想像がつかないと言いますか…ご令嬢のご希望ですか?」
「多分そうなります」
「多分?」
「まだエレノアが無自覚でして」
「同じ長男以外ならボルスト公爵家のジェイク公子もおりますが、本当にフレデリックなのですか?」
「立場ではなく、フレデリック殿に限ったことなのです」
「つまり恋愛結婚をさせたいと?」
「結論から言うとそういうことになります」
「でも正式な申し込みではないのですね?」
「はい」
「話は分かりました。ですが正式な申し入れでないと、検討しようがありません。息子に聞いてみます」
「まだフレデリック殿には内密にお願いします」
「特に何もお答えが出来ませんでしたが、お話は分かりました。子供達には内緒にしておきたいということでしたら そのようにします」
「ありがとうございます」
「公爵夫人も同じ考えですか?」
「はい、エレノアがフレデリック殿を好きなら叶えてあげたいと申しています」
「なるほど」
「お仕事中に失礼しました。エレノアが落ち着いたら話を聞いてみます」
「分かりました」
ん?
“心を乱しまくっております”って、フレデリックのせいということか?
ああ…悩みが増えたじゃないか。
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