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シュノー公爵
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【 シュノー公爵の視点 】
さて…どうしたものか。
「あなた…」
「はぁ~」
末娘エレノアは幼い頃から聞き分けが良く、勉強もできて賢かった。性格も悪くない。
第一王子の婚約者候補に残り、学園へ入学した。
領地と王都の往復をして、タウンハウスにいるときは声を掛けた。
『アルメット王子殿下とは上手くいっているのか』
『殿下は婚約者候補になど興味を持っておりません』
『おまえの方から歩み寄ればいいではないか』
『殿下が望んでおりません』
『……』
二年生の時には
『アルメット王子殿下とは上手くいっているのか』
『殿下は恋人を作って遊んでおります』
『は?』
『長続きはしません。1年間で何人変わるでしょう』
『……』
三年になると
『アルメット王子殿下は少しは落ち着いたか?』
『悪化しております』
『……』
だが三年生も半分というところで、エレノアが夜遊びを始めたと報告をもらい、領地からタウンハウスへ戻ってきた。
「エレノア、何処に出かけているんだ」
「……」
「御者に聞くか?」
「夜会に出ています」
「……まさか純潔は守っているのだろうな」
「守っておりません」
「エレノア!」
「なんてことなの…」
妻は血の気が引いてしまった。
「もう行くのは止めなさい」
「嫌です」
「エレノア!」
「外出禁止になさるのなら学園も行きません」
「エレノア!」
「もしかして…好きな人でもできたの?」
「……」
「おまえは婚約者候補だろう」
「勝手に候補にされただけで何の効力もありません」
「相手は誰だ」
「……」
「誰なんだ!」
「……」
「エレノア、契約を交わしていなくても、あなた達3人の中から妃は選ばれるのよ」
「殿下は学園内の王族専用休憩室に女生徒を引っ張り込んでは関係を持っています。一人や二人ではありません。不誠実過ぎるクズに嫁ぎたくなんてありません」
「だからといって、」
「お父様、殿下が勧めたのですよ?
“他の男と寝てきたらマシになる”って。
私は魅力も取り柄も無いと言われたのです。その解決案として他の男と寝ることを推奨されたので実行しただけです」
「私達の大事な娘に何て仕打ちを!許せませんわ!」
「だがな、結局はおまえは夜会で会ったその男に遊ばれているだけだ。殿下の婚約者候補に普通はそんなことはしない」
「夜会はずっと仮面をつけたままです。彼は私の正体を知りません。
それに彼を誘ったのは私です。彼は私の誘いを断りました。だけど私が懇願したのです。
彼は何度も“止めますか?”と確認をしました。いつでも引き返せるようにしてくれたのです。それでもして欲しいと私が頼んだのです」
「ちょっと考えさせてくれ」
仕方なく情報屋を雇った。
金はかかるが秘密を探ってくる組織に任せたが時間がかかった。その間もエレノアは夜会に出かけた。
行動を制限すると調査ができないと言われていたので黙認するしかなかった。
そして
「調査結果を報告します。
エレノア様が通っているのは秘匿性の会員クラブで、夜会を開いて一夜限りの相手に出会う場を提供しております。
厳しい審査を経て、仮面を被り夜会に出ます。
行為中も仮面を取ることは許されません。
会則を破ると契約に則り厳しい制裁を受けます。故に口を割る者がおりませんでした。
警備も厳重でエレノア様がどのような契約を結んでいるのか分からないため、会則を破ることだけはさせない方がよろしいです」
「では相手は分からないのだな?」
「分かりました。お相手はスタンサー侯爵家の次男フレデリックです。第一王子の側近候補でエレノア様と同じ学年です」
よりによって殿下の側近候補とだなんて…
「彼が入り口で提示しているのはVIPの会員証です。2ヶ月以上張り込んで、あの会員証を提示したのは彼ともう一人しかおりません。
従業員が外で休憩する際に話を盗み聞きすることができました。あれは品位や理性などが認められた人格証のようなものです」
「相手を知らないのだよな?」
「2人は示し合わせて同じ日に予約を入れているようですね。それ以外での接触は学園くらいです。秘匿夜会以外で二人で会うこともありませんので、互いに正体を知らないというのは嘘ではないかもしれませんが、知っていても黙っている可能性もゼロではありません」
「ありがとう。
次はフレデリック・スタンサーの素行調査をお願いしたい」
「あの夜会の開かれている館の内部以外の素行になりますがよろしいですか」
「構わない」
「かしこまりました」
だが間もなく、陛下に呼び出された。エレノアの夜遊びや男の存在がバレたのかと思ったが…
「申し訳ない」
アルメット第一王子の失脚だった。側近候補も婚約者候補も白紙。
パトリック第二王子は歳が離れているからエレノアが再び選出されることはないだろう。
「ではエレノアは凍結解除でよろしいでしょうか」
「もちろんだ。三家には慰謝料を支払おう」
「妃教育は始まっておりませんので慰謝料は望みません」
「これからパーティや見合いで物いりだろう。ドレスや宝石を買い与えてあげて欲しい」
「では有り難くちょうだいいたします」
屋敷に戻り 妻にアルメット王子の失脚の話をした。
「エレノアの言う通り、余程酷い有り様だったのでしょうね。
あなた。エレノアの嫁ぎ先はどうなさるのですか」
「選定は始めるがスタンサー家の息子の調査も入れている」
「では、」
「希望はそれほど高くない。先方が断る可能性もある。エレノアにはフレデリック・スタンサーのことは言わないようにしてくれ」
「もしエレノアが 仮面の男がスタンサー家の次男だと知っていたら、彼と婚約出来たらエレノアはとても喜ぶのではないかしら」
「だがな、次男だからな。あんな夜会に通うくらいだし。エレノアが通い出すより前から会員のようだから、エレノア以外の女と関係を持っているだろう。とにかく素行調査の結果を待とう。だが先に良い縁談が申し込まれたらそちらを優先する。それは覚えておいてくれ」
直ぐにアルメット第一王子の失脚は公表された。
次々と釣書が届く中、エレノアは夜会に行かなくなった。
部屋で泣いているらしい。
妻に様子を見に行かせたが、口を割らないようだ。
この頑固さは誰に似たんだ?
さて…どうしたものか。
「あなた…」
「はぁ~」
末娘エレノアは幼い頃から聞き分けが良く、勉強もできて賢かった。性格も悪くない。
第一王子の婚約者候補に残り、学園へ入学した。
領地と王都の往復をして、タウンハウスにいるときは声を掛けた。
『アルメット王子殿下とは上手くいっているのか』
『殿下は婚約者候補になど興味を持っておりません』
『おまえの方から歩み寄ればいいではないか』
『殿下が望んでおりません』
『……』
二年生の時には
『アルメット王子殿下とは上手くいっているのか』
『殿下は恋人を作って遊んでおります』
『は?』
『長続きはしません。1年間で何人変わるでしょう』
『……』
三年になると
『アルメット王子殿下は少しは落ち着いたか?』
『悪化しております』
『……』
だが三年生も半分というところで、エレノアが夜遊びを始めたと報告をもらい、領地からタウンハウスへ戻ってきた。
「エレノア、何処に出かけているんだ」
「……」
「御者に聞くか?」
「夜会に出ています」
「……まさか純潔は守っているのだろうな」
「守っておりません」
「エレノア!」
「なんてことなの…」
妻は血の気が引いてしまった。
「もう行くのは止めなさい」
「嫌です」
「エレノア!」
「外出禁止になさるのなら学園も行きません」
「エレノア!」
「もしかして…好きな人でもできたの?」
「……」
「おまえは婚約者候補だろう」
「勝手に候補にされただけで何の効力もありません」
「相手は誰だ」
「……」
「誰なんだ!」
「……」
「エレノア、契約を交わしていなくても、あなた達3人の中から妃は選ばれるのよ」
「殿下は学園内の王族専用休憩室に女生徒を引っ張り込んでは関係を持っています。一人や二人ではありません。不誠実過ぎるクズに嫁ぎたくなんてありません」
「だからといって、」
「お父様、殿下が勧めたのですよ?
“他の男と寝てきたらマシになる”って。
私は魅力も取り柄も無いと言われたのです。その解決案として他の男と寝ることを推奨されたので実行しただけです」
「私達の大事な娘に何て仕打ちを!許せませんわ!」
「だがな、結局はおまえは夜会で会ったその男に遊ばれているだけだ。殿下の婚約者候補に普通はそんなことはしない」
「夜会はずっと仮面をつけたままです。彼は私の正体を知りません。
それに彼を誘ったのは私です。彼は私の誘いを断りました。だけど私が懇願したのです。
彼は何度も“止めますか?”と確認をしました。いつでも引き返せるようにしてくれたのです。それでもして欲しいと私が頼んだのです」
「ちょっと考えさせてくれ」
仕方なく情報屋を雇った。
金はかかるが秘密を探ってくる組織に任せたが時間がかかった。その間もエレノアは夜会に出かけた。
行動を制限すると調査ができないと言われていたので黙認するしかなかった。
そして
「調査結果を報告します。
エレノア様が通っているのは秘匿性の会員クラブで、夜会を開いて一夜限りの相手に出会う場を提供しております。
厳しい審査を経て、仮面を被り夜会に出ます。
行為中も仮面を取ることは許されません。
会則を破ると契約に則り厳しい制裁を受けます。故に口を割る者がおりませんでした。
警備も厳重でエレノア様がどのような契約を結んでいるのか分からないため、会則を破ることだけはさせない方がよろしいです」
「では相手は分からないのだな?」
「分かりました。お相手はスタンサー侯爵家の次男フレデリックです。第一王子の側近候補でエレノア様と同じ学年です」
よりによって殿下の側近候補とだなんて…
「彼が入り口で提示しているのはVIPの会員証です。2ヶ月以上張り込んで、あの会員証を提示したのは彼ともう一人しかおりません。
従業員が外で休憩する際に話を盗み聞きすることができました。あれは品位や理性などが認められた人格証のようなものです」
「相手を知らないのだよな?」
「2人は示し合わせて同じ日に予約を入れているようですね。それ以外での接触は学園くらいです。秘匿夜会以外で二人で会うこともありませんので、互いに正体を知らないというのは嘘ではないかもしれませんが、知っていても黙っている可能性もゼロではありません」
「ありがとう。
次はフレデリック・スタンサーの素行調査をお願いしたい」
「あの夜会の開かれている館の内部以外の素行になりますがよろしいですか」
「構わない」
「かしこまりました」
だが間もなく、陛下に呼び出された。エレノアの夜遊びや男の存在がバレたのかと思ったが…
「申し訳ない」
アルメット第一王子の失脚だった。側近候補も婚約者候補も白紙。
パトリック第二王子は歳が離れているからエレノアが再び選出されることはないだろう。
「ではエレノアは凍結解除でよろしいでしょうか」
「もちろんだ。三家には慰謝料を支払おう」
「妃教育は始まっておりませんので慰謝料は望みません」
「これからパーティや見合いで物いりだろう。ドレスや宝石を買い与えてあげて欲しい」
「では有り難くちょうだいいたします」
屋敷に戻り 妻にアルメット王子の失脚の話をした。
「エレノアの言う通り、余程酷い有り様だったのでしょうね。
あなた。エレノアの嫁ぎ先はどうなさるのですか」
「選定は始めるがスタンサー家の息子の調査も入れている」
「では、」
「希望はそれほど高くない。先方が断る可能性もある。エレノアにはフレデリック・スタンサーのことは言わないようにしてくれ」
「もしエレノアが 仮面の男がスタンサー家の次男だと知っていたら、彼と婚約出来たらエレノアはとても喜ぶのではないかしら」
「だがな、次男だからな。あんな夜会に通うくらいだし。エレノアが通い出すより前から会員のようだから、エレノア以外の女と関係を持っているだろう。とにかく素行調査の結果を待とう。だが先に良い縁談が申し込まれたらそちらを優先する。それは覚えておいてくれ」
直ぐにアルメット第一王子の失脚は公表された。
次々と釣書が届く中、エレノアは夜会に行かなくなった。
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この頑固さは誰に似たんだ?
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