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距離の置き方
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父上から王都へ来るという連絡があった。これが距離を置くきっかけとなるだろう。そう思った。
今夜は隠匿夜会で赤いハーフマスクを付けた。女性達と話しているとエレノアが入場したのが見えた。
彼女はキョロキョロと俺を探している。
俺を見つけると、赤いハーフマスクに驚いていた。
「ちょっと失礼。こちらのレディとダンスをしてきます」
そう言って、エレノアの手を引いて輪の中から外れた。本当に踊るわけではない。
「ノア、話がある」
テラスへ連れ出した。
「リック…仮面が赤いわ」
「ノア、そろそろ頃合いだと思う」
「え?」
「今夜から別の男を探してくれ」
「どうして…」
「元々この夜会は不特定と楽しむためのもので恋人探しの夜会ではないだろう?」
「でも、ずっと私と過ごしてくれたじゃない」
「それは良くないと思い知ったんだ。無闇に情を湧かせている場合ではない。俺達の年頃はあの発表を受けて動き出さなければならない」
「私は……貴方のことを、」
「どんなに身分が低くても次男や三男でも、君の両親は許してくださるのか?」
「説得するわ」
「俺が無理なんだ。身に付けているものからして、君は下位貴族ではない、そうだろう?」
「リックと私は、」
「他の男に目を向けてみた方がいい。俺しか知らないから視野が狭くなっているんだ」
「嫌よ!」
「俺は別の女を選ぶよ。不特定に戻る」
「リック!」
エレノアが俺に抱き付いた。
このまま抱きしめて、部屋に連れて行き交わりたい。だが不毛な関係は辛くなるだけだ。軌道修正は早い方がいい。
「どのみち、逢瀬は最後になるだろう。父が縁談を用意するはずだ。此処に再び来ることが叶うかは分からない」
「リック!」
「ノア、良い夜を」
「リック!」
エレノアを振り解き、会場へ戻ると先程誘ってきた女性に声を掛けて部屋へ向かった。
エレノアがどうしたのかは知らない。
「いいの?さっきの子は」
「彼女は黒ですよ」
「そうだったわね」
今夜は吹っ切れるために別の女を抱いた。エレノアも今頃他の男にこんな風に股を開いて受け入れているかもしれないと思うと胸が苦しくて怒りで気が狂いそうだった。
「あーっ!! いいっ!すごいわ!」
押さえ付けて背後から激しく突き続け、最後は背中に吐精した。
彼女がぐったりしているので、サッと拭いて服を着て屋敷に帰った。
翌日の昼に父上が到着した。
「お帰りなさい、父上」
「お帰りなさいませ、旦那様」
「フレデリック、話は後にしよう。先ずは休みたい。ロバート、部屋で休む」
「かしこまりました」
その間 俺は街に出た。
家にいるとエレノアのことばかり考えてしまうからだ。
宝飾品店の前で飾ってあるネックレスとピアスを見ていた。結局 エレノアに似合いそうだなどと考えていた。
「エレノアに似合いそう」
突然俺の隣に並んでそんなことを言うのはビクトリア・ローズベル侯爵令嬢だった。
「ビクトリア」
「すごく喜ぶわよ」
「どうして俺が」
「ふふん とぼけるなら上手くやりなさいよ。噴水のようにエレノアへの気持ちを溢れさせておいて」
「例えそうだとしても何になる」
「暇なんでしょう?付き合って」
ビクトリアは俺の腕に自身の腕を絡ませると街を歩き始めた。護衛が後ろからついてくる。
「どこに行くんだ」
「いいから」
到着したのはカフェだった。
奥の席を選ぶとオーダーをした。
「ここはねエレノアが好きな店よ。落ち着いた感じが良いんだって」
「…それで?」
「ほんっとにエレノア以外にはそんな態度よね」
「エレノアもビクトリアもデボラも扱いは同じだ」
「全く…。
両想いなんだからくっついちゃいなさいよ」
「別にエレノアのことは特別ではない。エレノアも俺なんかな興味はない」
「何にも始まっていないのに何でそんな拗れてるのよ」
「…だから拗れもなにも そんな関係ではない」
「ダメね。一瞬目が泳いだわよ。
エレノアを他所の男の元へ嫁がせるつもりなの?」
「シュノー公爵家の令嬢だぞ。当然跡継ぎの令息の元へ嫁ぐ方が幸せになれる」
「エレノアは権力欲もないし過度な贅沢は望んでいないわ。スタンサー侯爵家の次男ならエレノアを養えるはずよ」
「公爵はシュノー公爵家の娘に相応しい嫁ぎ先を探し始めているじゃないか」
「じゃあシュノー公爵が打診したら受けるのね?」
「絶対にそんなことはあり得ない」
「他の男の元へ嫁がされたらエレノアは泣くわよ」
「貴族として生まれたのだから覚悟しているだろう。泣いたりしないさ。そもそもエレノアにだって選ぶ権利はある。クズを黙認してあの部屋で愚行を見続けてきた俺なんか嫌なはずだ」
「何かあなた達ってよく分からないのよね。あれだけ熱い目線を送るのに近寄ろうとしないなんて。
それに2人ともなんか色気があるのよね。目で舐め回している感じがするしエレノアは…もしかしてフレデリックとエレノアって体の関係がある?」
「…あるわけない」
「うっわぁ~ そうなんだぁ。意外。いつから?続いてるの?ねぇ、むぐっ」
ビクトリアを引き寄せて口を塞いだ。
「俺とエレノアは何もない」
手を離すとビクトリアに睨まれた。
「エレノアを抱くだけ抱いて妻にはしたくないって?信じられない」
「そうじゃない!」
「エレノアが可哀想」
「エレノアは知らない」
「え?」
「相手が俺だとは知らないんだ」
「はあ!?」
仕方なく貴族の屋敷の夜会で仮面を付けていた…ということにした。
「そんな夜会が本当にあるのね。
2人は仮面を付けたまま何度か会っているのね」
「だからお互いに体だけの関係なんだ。俺は偶然顔を見てしまったがエレノアは知らない」
「そうかしら。知らないなら名乗れば?」
「何度も寝ていた男はクズの女遊びを黙認してきた側近候補だったなんて嫌に決まってるだろう」
「フレデリックもジェイクもアレとは違うって分かってるし、大丈夫よ」
「公爵令嬢のエレノアにはしっかりとした男の元へ嫁いで幸せになって欲しいんだ」
「分かった。フレデリックは臆病なのね。もう言わないわ」
「……」
「エレノアにいい男がいたら紹介しよう」
「ビクトリア!」
「怒るくらいなら腹を括りなさい」
「とにかく、エレノアの相手は公爵が決めることだ」
「はいはい」
この後ビクトリアと別れて屋敷に戻った。
今夜は隠匿夜会で赤いハーフマスクを付けた。女性達と話しているとエレノアが入場したのが見えた。
彼女はキョロキョロと俺を探している。
俺を見つけると、赤いハーフマスクに驚いていた。
「ちょっと失礼。こちらのレディとダンスをしてきます」
そう言って、エレノアの手を引いて輪の中から外れた。本当に踊るわけではない。
「ノア、話がある」
テラスへ連れ出した。
「リック…仮面が赤いわ」
「ノア、そろそろ頃合いだと思う」
「え?」
「今夜から別の男を探してくれ」
「どうして…」
「元々この夜会は不特定と楽しむためのもので恋人探しの夜会ではないだろう?」
「でも、ずっと私と過ごしてくれたじゃない」
「それは良くないと思い知ったんだ。無闇に情を湧かせている場合ではない。俺達の年頃はあの発表を受けて動き出さなければならない」
「私は……貴方のことを、」
「どんなに身分が低くても次男や三男でも、君の両親は許してくださるのか?」
「説得するわ」
「俺が無理なんだ。身に付けているものからして、君は下位貴族ではない、そうだろう?」
「リックと私は、」
「他の男に目を向けてみた方がいい。俺しか知らないから視野が狭くなっているんだ」
「嫌よ!」
「俺は別の女を選ぶよ。不特定に戻る」
「リック!」
エレノアが俺に抱き付いた。
このまま抱きしめて、部屋に連れて行き交わりたい。だが不毛な関係は辛くなるだけだ。軌道修正は早い方がいい。
「どのみち、逢瀬は最後になるだろう。父が縁談を用意するはずだ。此処に再び来ることが叶うかは分からない」
「リック!」
「ノア、良い夜を」
「リック!」
エレノアを振り解き、会場へ戻ると先程誘ってきた女性に声を掛けて部屋へ向かった。
エレノアがどうしたのかは知らない。
「いいの?さっきの子は」
「彼女は黒ですよ」
「そうだったわね」
今夜は吹っ切れるために別の女を抱いた。エレノアも今頃他の男にこんな風に股を開いて受け入れているかもしれないと思うと胸が苦しくて怒りで気が狂いそうだった。
「あーっ!! いいっ!すごいわ!」
押さえ付けて背後から激しく突き続け、最後は背中に吐精した。
彼女がぐったりしているので、サッと拭いて服を着て屋敷に帰った。
翌日の昼に父上が到着した。
「お帰りなさい、父上」
「お帰りなさいませ、旦那様」
「フレデリック、話は後にしよう。先ずは休みたい。ロバート、部屋で休む」
「かしこまりました」
その間 俺は街に出た。
家にいるとエレノアのことばかり考えてしまうからだ。
宝飾品店の前で飾ってあるネックレスとピアスを見ていた。結局 エレノアに似合いそうだなどと考えていた。
「エレノアに似合いそう」
突然俺の隣に並んでそんなことを言うのはビクトリア・ローズベル侯爵令嬢だった。
「ビクトリア」
「すごく喜ぶわよ」
「どうして俺が」
「ふふん とぼけるなら上手くやりなさいよ。噴水のようにエレノアへの気持ちを溢れさせておいて」
「例えそうだとしても何になる」
「暇なんでしょう?付き合って」
ビクトリアは俺の腕に自身の腕を絡ませると街を歩き始めた。護衛が後ろからついてくる。
「どこに行くんだ」
「いいから」
到着したのはカフェだった。
奥の席を選ぶとオーダーをした。
「ここはねエレノアが好きな店よ。落ち着いた感じが良いんだって」
「…それで?」
「ほんっとにエレノア以外にはそんな態度よね」
「エレノアもビクトリアもデボラも扱いは同じだ」
「全く…。
両想いなんだからくっついちゃいなさいよ」
「別にエレノアのことは特別ではない。エレノアも俺なんかな興味はない」
「何にも始まっていないのに何でそんな拗れてるのよ」
「…だから拗れもなにも そんな関係ではない」
「ダメね。一瞬目が泳いだわよ。
エレノアを他所の男の元へ嫁がせるつもりなの?」
「シュノー公爵家の令嬢だぞ。当然跡継ぎの令息の元へ嫁ぐ方が幸せになれる」
「エレノアは権力欲もないし過度な贅沢は望んでいないわ。スタンサー侯爵家の次男ならエレノアを養えるはずよ」
「公爵はシュノー公爵家の娘に相応しい嫁ぎ先を探し始めているじゃないか」
「じゃあシュノー公爵が打診したら受けるのね?」
「絶対にそんなことはあり得ない」
「他の男の元へ嫁がされたらエレノアは泣くわよ」
「貴族として生まれたのだから覚悟しているだろう。泣いたりしないさ。そもそもエレノアにだって選ぶ権利はある。クズを黙認してあの部屋で愚行を見続けてきた俺なんか嫌なはずだ」
「何かあなた達ってよく分からないのよね。あれだけ熱い目線を送るのに近寄ろうとしないなんて。
それに2人ともなんか色気があるのよね。目で舐め回している感じがするしエレノアは…もしかしてフレデリックとエレノアって体の関係がある?」
「…あるわけない」
「うっわぁ~ そうなんだぁ。意外。いつから?続いてるの?ねぇ、むぐっ」
ビクトリアを引き寄せて口を塞いだ。
「俺とエレノアは何もない」
手を離すとビクトリアに睨まれた。
「エレノアを抱くだけ抱いて妻にはしたくないって?信じられない」
「そうじゃない!」
「エレノアが可哀想」
「エレノアは知らない」
「え?」
「相手が俺だとは知らないんだ」
「はあ!?」
仕方なく貴族の屋敷の夜会で仮面を付けていた…ということにした。
「そんな夜会が本当にあるのね。
2人は仮面を付けたまま何度か会っているのね」
「だからお互いに体だけの関係なんだ。俺は偶然顔を見てしまったがエレノアは知らない」
「そうかしら。知らないなら名乗れば?」
「何度も寝ていた男はクズの女遊びを黙認してきた側近候補だったなんて嫌に決まってるだろう」
「フレデリックもジェイクもアレとは違うって分かってるし、大丈夫よ」
「公爵令嬢のエレノアにはしっかりとした男の元へ嫁いで幸せになって欲しいんだ」
「分かった。フレデリックは臆病なのね。もう言わないわ」
「……」
「エレノアにいい男がいたら紹介しよう」
「ビクトリア!」
「怒るくらいなら腹を括りなさい」
「とにかく、エレノアの相手は公爵が決めることだ」
「はいはい」
この後ビクトリアと別れて屋敷に戻った。
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