6 / 30
一度目
6 許せない
しおりを挟む
これは罠だ。
「どうしてもアルシェに祝いの言葉を直接言いたくて、医師を同伴させてきたんだ。
2人が会場を出て戻らないというからもしやと思えば…」
「私は、」
「何も言わなくていい。何を言っても純潔を失えば結果は一緒だ。
アルベルト」
侍従のアルベルトが手に持っていたのは剣だった。それをローラン様に渡した。
そして直ぐ、
「ぐうっ!!」
ローラン様は受け取った剣で公子を刺した。
「公子!! うっ!!」
私も同じように刺された。
「マリレナ…」
公子は床に倒れていたが身体を這わせて私の元まで来て手を握った。
ローラン様はソファに座り、私達を眺めている。
公子は信じられないことを言った。
「事が済めば…マリレナを自由にすると…言ったじゃないか」
「するつもりだったけど、逢引きがバレた2人は無理心中をしてしまっていた。まあ ある意味自由を手に入れたろう?」
「あんたが…俺がやらないと人を雇って襲わせるというから、俺はマリレナを無理に」
「良いじゃなか。死ぬ前にずっと好きだった女を抱けたのだから」
「侯爵家が不審に…思うはずだ」
「侯爵は承知してるぞ」
え!?
「私がマルブール侯爵に毒を提供したし、侯爵は夫人に飲ませたし。今頃心臓を止める毒を服用させて始末し終わったはずだ。
愛人と再婚して愛人との子も一緒に暮らせると喜んでいたよ。
生かしてどん底に落ちたマリレナが見たかったけど 実の娘の命は要らないらしい」
「私は尽くしたのに…」
「は?おかげで私は女と比べられる日々だったよ。最初の頃はまだ良かった。だが入学前にはもうとっくに…出来ない事があると“マルブール嬢に教えてもらうのもいいですよ”とか“マルブール嬢が出来ていたのでてっきり…”とか。
挙句に執務まで始めやがって!
“お飾りの王子”だのと陰口を言われてきたんだぞ!!」
「そんな…」
「早く死ねよ」
ローラン様は私の腹から剣を引き抜いた。
ふと公子を見ると彼はもう息を引き取っているようだった。
「キャアアアアッ!誰か!誰か!」
メイドか誰かが叫んでいる。
「チッ。アルベルト、助けるフリをするぞ」
「は、はい」
1週間近く昏睡したけど、結局死んだ。
その間に聞こえてきたのは ずっとデスター公爵家で治療されていたこと、父が見舞いに来て“引き取る”と騒いだこと、公爵夫人が泣いていたこと…
“どうしてあの子は相談してくれなかったのかしら”
私も悔しい。悔しくて仕方ない。
真っ暗闇の中、優しい白い光が現れた。ふわふわと浮いて近寄って来る。
〔 穢れなき魂よ、生まれ変わりましょう 〕
手を伸ばしかけた瞬間、背筋が凍るような気配がした。よく見ると闇よりも濃い漆黒の塊が囁いた。
〔 穢れなき魂よ、復讐のために我と契約するか? 〕
復讐…そうよ。こんなの許されていいはずはない。ローランは罰を受けるべきだわ。
〔 …します 〕
〔 よし、生き返らせてやろう。その代わり魂の輪廻は絶たれ 我が僕となるのだぞ?〕
〔 耳を貸しては駄目よ! 〕
〔 私に僕が務まりますか? 〕
〔 自身の力で裏切り者を地獄へ堕としてこい 〕
〔 人殺しはちょっと 〕
〔 生き地獄という言葉があるだろう 〕
確かに。
〔 不束者ですがご指導のほど宜しくお願いいたします 〕
〔 よし、悪魔の愛し子として甦らせよう 〕
漆黒は人型になると手を伸ばし私の額に唇をつけた。
〔 悪魔の愛し子ですか? なんだか凄そうですね。ありがとうございます 〕
〔 我が感謝されるのか…。よし、寿命尽きたときは妻としてやろう 〕
悪魔にも夫婦という関係があるのね。
〔 ぜひ、妻にしてください 〕
〔 では、甦って復讐をしてこい 〕
漆黒の手が伸びたと思ったら、身体が落下しているような感覚に襲われた。
怖い!!
「お嬢様、 お嬢様」
目を開けると自分の部屋にいて、専属メイドのコリーナが覗き込んでいた。
「え?」
「うなされていらっしゃいましたよ」
「……今何時?」
「5時です」
「今日の日付は?」
メイドが答えた日付は卒業の半年ほど前だった。
「明日から6時半に起こして」
「…かしこまりました」
「コリーナ」
「はい」
「いつもありがとう」
「そ、そんなっ」
「心から感謝しているの」
「誠心誠意 お支えいたします!」
「休みを取って人生を楽しむことを忘れないで。結婚したくなったらいつでも自分の幸せを優先していいのよ」
「お嬢様…」
「弟2人と妹がいるのよね?
3人くらい私が成人まで支援するわ。入学できるのなら好きな学校に通わせてあげる」
「あの…どうして」
「どうせ弟妹のために求婚されても断るつもりなんでしょう?私はあなたに寂しそうな顔をして欲しくないの。
だから結婚までは私といてね。もちろん働きたければ結婚後も働いてかまわないわ」
コリーナは私が殺される前、求婚を断った。働いて弟妹を養うために。
だけど時折 悲しそうな顔をしていたのは知っていた。
コリーナはいつも私の身体の心配をしてあれこれ工夫をしてくれていた。
冬になればベッドを温めておいてくれたし、体調を察してハーブティーを用意したり食事のメニューを変えさせたりしてくれていた献身的な人だ。
「感謝します」
「泣かないで」
「っ……はい…」
「早起きしたから一緒にお茶をしましょう。
ご家族の話が聞きたいわ」
「すぐにご用意します」
味方と敵としっかり分けないとね。
「どうしてもアルシェに祝いの言葉を直接言いたくて、医師を同伴させてきたんだ。
2人が会場を出て戻らないというからもしやと思えば…」
「私は、」
「何も言わなくていい。何を言っても純潔を失えば結果は一緒だ。
アルベルト」
侍従のアルベルトが手に持っていたのは剣だった。それをローラン様に渡した。
そして直ぐ、
「ぐうっ!!」
ローラン様は受け取った剣で公子を刺した。
「公子!! うっ!!」
私も同じように刺された。
「マリレナ…」
公子は床に倒れていたが身体を這わせて私の元まで来て手を握った。
ローラン様はソファに座り、私達を眺めている。
公子は信じられないことを言った。
「事が済めば…マリレナを自由にすると…言ったじゃないか」
「するつもりだったけど、逢引きがバレた2人は無理心中をしてしまっていた。まあ ある意味自由を手に入れたろう?」
「あんたが…俺がやらないと人を雇って襲わせるというから、俺はマリレナを無理に」
「良いじゃなか。死ぬ前にずっと好きだった女を抱けたのだから」
「侯爵家が不審に…思うはずだ」
「侯爵は承知してるぞ」
え!?
「私がマルブール侯爵に毒を提供したし、侯爵は夫人に飲ませたし。今頃心臓を止める毒を服用させて始末し終わったはずだ。
愛人と再婚して愛人との子も一緒に暮らせると喜んでいたよ。
生かしてどん底に落ちたマリレナが見たかったけど 実の娘の命は要らないらしい」
「私は尽くしたのに…」
「は?おかげで私は女と比べられる日々だったよ。最初の頃はまだ良かった。だが入学前にはもうとっくに…出来ない事があると“マルブール嬢に教えてもらうのもいいですよ”とか“マルブール嬢が出来ていたのでてっきり…”とか。
挙句に執務まで始めやがって!
“お飾りの王子”だのと陰口を言われてきたんだぞ!!」
「そんな…」
「早く死ねよ」
ローラン様は私の腹から剣を引き抜いた。
ふと公子を見ると彼はもう息を引き取っているようだった。
「キャアアアアッ!誰か!誰か!」
メイドか誰かが叫んでいる。
「チッ。アルベルト、助けるフリをするぞ」
「は、はい」
1週間近く昏睡したけど、結局死んだ。
その間に聞こえてきたのは ずっとデスター公爵家で治療されていたこと、父が見舞いに来て“引き取る”と騒いだこと、公爵夫人が泣いていたこと…
“どうしてあの子は相談してくれなかったのかしら”
私も悔しい。悔しくて仕方ない。
真っ暗闇の中、優しい白い光が現れた。ふわふわと浮いて近寄って来る。
〔 穢れなき魂よ、生まれ変わりましょう 〕
手を伸ばしかけた瞬間、背筋が凍るような気配がした。よく見ると闇よりも濃い漆黒の塊が囁いた。
〔 穢れなき魂よ、復讐のために我と契約するか? 〕
復讐…そうよ。こんなの許されていいはずはない。ローランは罰を受けるべきだわ。
〔 …します 〕
〔 よし、生き返らせてやろう。その代わり魂の輪廻は絶たれ 我が僕となるのだぞ?〕
〔 耳を貸しては駄目よ! 〕
〔 私に僕が務まりますか? 〕
〔 自身の力で裏切り者を地獄へ堕としてこい 〕
〔 人殺しはちょっと 〕
〔 生き地獄という言葉があるだろう 〕
確かに。
〔 不束者ですがご指導のほど宜しくお願いいたします 〕
〔 よし、悪魔の愛し子として甦らせよう 〕
漆黒は人型になると手を伸ばし私の額に唇をつけた。
〔 悪魔の愛し子ですか? なんだか凄そうですね。ありがとうございます 〕
〔 我が感謝されるのか…。よし、寿命尽きたときは妻としてやろう 〕
悪魔にも夫婦という関係があるのね。
〔 ぜひ、妻にしてください 〕
〔 では、甦って復讐をしてこい 〕
漆黒の手が伸びたと思ったら、身体が落下しているような感覚に襲われた。
怖い!!
「お嬢様、 お嬢様」
目を開けると自分の部屋にいて、専属メイドのコリーナが覗き込んでいた。
「え?」
「うなされていらっしゃいましたよ」
「……今何時?」
「5時です」
「今日の日付は?」
メイドが答えた日付は卒業の半年ほど前だった。
「明日から6時半に起こして」
「…かしこまりました」
「コリーナ」
「はい」
「いつもありがとう」
「そ、そんなっ」
「心から感謝しているの」
「誠心誠意 お支えいたします!」
「休みを取って人生を楽しむことを忘れないで。結婚したくなったらいつでも自分の幸せを優先していいのよ」
「お嬢様…」
「弟2人と妹がいるのよね?
3人くらい私が成人まで支援するわ。入学できるのなら好きな学校に通わせてあげる」
「あの…どうして」
「どうせ弟妹のために求婚されても断るつもりなんでしょう?私はあなたに寂しそうな顔をして欲しくないの。
だから結婚までは私といてね。もちろん働きたければ結婚後も働いてかまわないわ」
コリーナは私が殺される前、求婚を断った。働いて弟妹を養うために。
だけど時折 悲しそうな顔をしていたのは知っていた。
コリーナはいつも私の身体の心配をしてあれこれ工夫をしてくれていた。
冬になればベッドを温めておいてくれたし、体調を察してハーブティーを用意したり食事のメニューを変えさせたりしてくれていた献身的な人だ。
「感謝します」
「泣かないで」
「っ……はい…」
「早起きしたから一緒にお茶をしましょう。
ご家族の話が聞きたいわ」
「すぐにご用意します」
味方と敵としっかり分けないとね。
2,581
あなたにおすすめの小説
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
《完結》氷の侯爵令息 あなたが子供はいらないと言ったから
ヴァンドール
恋愛
氷の侯爵令息と言われたアラン。彼は結婚相手の伯爵令嬢にとにかく冷たい態度で接する。
彼女は義姉イライザから夫が子供はいらないと言ったと聞き、衝撃を受けるが気持ちを切り替え生きていく。
夫のかつての婚約者が現れて、離縁を求めて来ました──。
Nao*
恋愛
結婚し一年が経った頃……私、エリザベスの元を一人の女性が訪ねて来る。
彼女は夫ダミアンの元婚約者で、ミラージュと名乗った。
そして彼女は戸惑う私に対し、夫と別れるよう要求する。
この事を夫に話せば、彼女とはもう終わって居る……俺の妻はこの先もお前だけだと言ってくれるが、私の心は大きく乱れたままだった。
その後、この件で自身の身を案じた私は護衛を付ける事にするが……これによって夫と彼女、それぞれの思いを知る事となり──?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる