【完結】転生令嬢は遠慮いたしません!

ユユ

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対価の披露

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【第一王子 セインの視点】

余計なことを言ってしまった。
王女との政略結婚の話から少し元気がない。



ティーティアに拒絶されたあの日、夜にサリオンとペイジェルと一緒に私に十数年前の事件の話を母上が話してくれた。

『母のお腹にはセインがいて、まだ安定していなかったの。走って逃るのは危険だと言ってヴェリテ伯爵夫人と夫人の妹が母のフリをして囮になってくれたの。

夫人の妹はお腹を刺され、腑が出て、倒れ苦しんでいたところに剣を振り下ろされ斬首されたわ。

夫人も背中を斬られて押さえ込まれていて斬首されるところだったの。

夫人も妊娠中だと誰も知らず、結果的に流産してしまった。

母を守るためにヴェリテ家の初子と夫人の妹は命を落としたのよ。

お腹の子は待望の子だったそうよ。夫妻になかなか授からなくて、やっと。

なのに……。

知っていたら囮など同意しなかった。

その後も妊娠の兆しがなく、諦めかけた時にティーティアが授かったの。
ティーティアは母にとっても希望の光なのよ』

『細かく教えてもらっていませんでした』

だけど王族として自ら詳しく聞くべきだったのだ。

『ティーティアの言葉に母は命の恩人に仇で返すことになっていると気が付いたの。
ティーティアが話したことは大事なことよ』

『私達は変わらねばなりませんね』

『母上、ごめんなさい』

『私もしっかり勉強しますわ』





「セイン殿下? 何考えているんですか」

背負ったティーティアが足をブラブラさせている。きっと話しかけられていたのに気が付かなかったのだろう。

「少し思い出していただけだ。次は何処に行くか?」

「外でセイン殿下の好きな場所」

そう言われて奥まった場所に連れてきた。
草木しかない場所だ。

「降ろしてください」

降ろすと少し辺りを見回して上を見て、その後少し歩くと草の上に仰向けになった。

「ティーティア?」

「セイン殿下もどうぞ」

よくわからないが、ティーティアの真似をしてみた。

「風で木漏れ陽が時々眩しいですがそれがいいのです。葉の擦れる音や鳥の鳴き声、陽のあたたかさ、自然の匂いに集中して心を無にしましょう。

あ、あっちの雲、リスみたいに見えますよ」

「どれだ?」

ティーティアが私にぴたっと頭を付けて指をさす。

「ほらアレです」

「ああ、リスだ」

「あっちはゴジラですね」

「ゴジラ?」

「別の国にそんな空想の生き物がいるんです」

「絵本か」

「そんなところです」

「あ、カップケーキ」

「もう腹が減ったのか」

「減ってないです!」

「不思議な子だ」

「褒め言葉ですよね?」

「褒め言葉だ」





「殿下~! セイン殿下~!」

遠くから自分の名を呼ぶ声にハッとした。
草の上で寝てしまっていた。
手の痺れを感じて横を見るといつの間にか腕枕をしていた。ティーティアの手が私の腹の上にのっていた。

あったかい。

「ティア、  ティーティア」

「ん…」

頭に口付けながら髪の匂いを嗅いだ。

愛おしい……こんな気持ちになるのか。

侍従の呼び声が近くなってきたのでティーティアを揺り起こした。

「寝ちゃった! 何時!?」

「多分お茶の時間かな」

「あ~おんぶが減った~」

「お茶を飲んでから続ければいいだろう」

「お茶の時間の後はダリウス兄様と合流します」

「呼んだのか」

「はい。どの道ユリウス兄様と一緒に公爵様に着いて来ているはずです」




ティーティアからダリウスの名が出て胸がムカムカしてきた。一体なんだ……

ティータイムの後に団長とダリウスとユリウスが現れた。

「お~あの時と同じだな!」

「はい。ダリウス兄様、頼りにしてます」

頼りにしてる!?

「ティーティア、ちょっと体が冷たいよ」

「大丈夫。外でお散歩してただけです」

ユリウスは何故気軽にティーティアに触れるんだ!

「ティア、何処でやるんだ」

「公爵様、人気のない場所は無いですか」

「全部準備しているよ。ティーティア、お願いがあるんだが副団長に見せては駄目か」

「駄目です。今日一日セイン王子殿下が頑張って対価を払ったのにその方だけ特別にするわけには参りません」

「では、副団長にも丸一日背負って歩かせよう」

「駄目だ!」

そんなの駄目に決まってるだろう!!

「絶対に駄目だ!ティーティアは女の子だぞ!!」

「殿下も背負ったじゃないですか」

「私はいいんだ!」

「(セイン、俺のティアだからな)」

「(お前のじゃない)」

「何コソコソやってるんですか。

団長、副団長は見たいから頼むと言ったのですか?」

「いや、」

「では話は無かったことに。さあ、行きましょう」



空き塔の裏に小さな庭があった。
ティーティアは枝で二つ線を引く。

「殿下、この線と線の間で私とダリウス兄様は対戦します。線からはみ出しても負けです。

この胸にある的を目掛けて先に突いた方の勝ちです」

「ティーティア、危ないから」

「見たがったのはセイン殿下では?」

「そうだが…」

もうあの時とは気持ちが違うんだよ ティア。

「ティア、始めようぜ」

「ふふっ」

「ティア、弟子にしてくれよ」

「これは競技の剣です。騎士の剣ではありません。

ユリウス兄様、笛を短くお願い」

「分かった」

サーベルより細い剣だ。レイピア?
随分と撓るな。

「両者位置につけ!かまえ!」

ピッ

「うわっ」

は? 

「やっぱ全然ティアのスピードについていけないや」

「へへっ」

得意なんてもんじゃない!
瞬殺だ…この速さに付いていける者がいるだろうか。

「ティーティア、独特のフォームだな」

「早く突くためです」

「教えるということはできないのか」

「しません」

「何故だ」

「これは人を傷つける為のものではないからです。

騎士達に教えろというのですよね?

こんなのを教えたら騎士達は死ぬかもしれませんよ。運良く目を突ければいいかもしれませんが」

「あれだけ早いのに?」

「私がやったような動きをするのはすぐには難しいですし、私がやっているのは触る程度の突きなのです。

これを剣に変えても刺し貫くみたいにはなりません」

「ティーティアは目を確実に狙えるのだな?」

「狙うことはできますが成功するかは別です。相手が一歩後ろに引けば駄目ですし、背が高ければ難易度が上がります」

「そうか!一歩退がれば良かったのか!」

「ダリウス兄様、すぐ踏み込みますよ?」

「なんでもない」

「とにかく、教えません」

「分かった。ありがとう」

「セイン殿下も試してみますか」

「頼む」

その後 五戦したがいずれも瞬殺だった。

一度目はそのまま対峙した。
次は一歩退がったので一撃目は届かなかったがすぐニ撃目が襲ってきて負けた。2、3秒だった。

三撃目からは先に攻撃していいと言われた。ただし突きだけだと。
避けられ突かれた。弾かれ突かれた。絡み取られ突かれた。

一戦につき5秒も保たないなんて……。
別に騎士を目指しているわけじゃなかったがショックだった。

ダリウスは二回負けているはずなのになんで平気なんだ?




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