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謁見

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10分後、

「即自白しましたね」

「よっぽど怖かったんだろう」

「連れが噛み殺されていますからね」

殺し屋はミスラを見た瞬間取り乱し、泣いていた。

『その化け物を連れて行ってくれ!何でも話す!!』

失礼ね。こんなに可愛いのに。

公「しかしミスラの能力はもの凄いですね」

「何でセイン殿下には攻撃しなかったのかしら」

セ「 !! 」

ジョ「業者などの出入りにも反応しません」

「もしかして殺意に反応するのかしら」

全員「………」

公「軍用犬に欲しい」

「危険ですよ?王宮内にどれだけ殺意のある人がいると思っているんですか。

あ~この上司、また無理難題ふっかけてるよ、自分は居眠りして定時で上がるくせにさ!この給料泥棒が!……などと殺気立ってる人がどのくらいいると思っているんですか?」

公「ティーティア、怖いこと言うな」

父「それに全部の殺意に反応するのか、ミスラが守るべき者と定めた者に対しての殺意に反応するのかも分からない」

母「試すわけにはいかないものね」

「誰を狙ったのでしょうね。ウチで合ってます?間違えたとか。こんな平凡な貴族の家に来るはずないですもんね」

全員「………」

「この相応しくない豪邸のせい?
ヴェリテは平凡で無害なのに。ねーミスラ」

「グルッ」

「え?有害なの!?」

チラッと父伯爵を見ても首を大きく振り、母夫人を見ても首を振る。じゃあ、何が有害なのよ。

「そういえば、パパの用事は済んだのですか?」

父「その件だが、ティーティアに登城命令が出た」

「有害は私!?」

父「そうじゃない。アレがひっかかった」

アレ?

父「ミライ」

「!! 分かりました。すぐですか?」

「そうした方がいい。この件も報告しなきゃならない」

「でも、」

チラッと見るとミスラが私と公爵の間に入った。

「ミスラが離れないのです。連れて行ってもいいですか?」

公「許可が必要だな」

「落ち着けば大丈夫だと思いますが、侵入があったばかりですのでミスラも不安なのだと思います」

公爵は部下を呼ぶと指示を出した。

「許可を求めに行ったから少しまってくれ。
それより、セイン殿下をそろそろ許してやってくれないか」

チラッ

なんですか、その捨て犬みたいな顔は。

「ソファに座ってください」

足が痺れたようで四つん這いになってソファに向かって行った。顔は悶絶してる。

「プッ」

父「ティーティア」

「失礼しました。そうだ、ちょっと席を外しますね」

やっぱりミスラはついてきた。

私室から包みを取り、応接間に戻るとセインに渡した。

「セイン殿下、入学記念です。上手くはありませんが精一杯気持ちを込めました。受け取ってください」

「私に? 開けていい?」

「え、今開けるんですか?」

「今だよ」

「ど、どうぞ」

「ハンカチ……刺繍してくれたんだ」

「上手くなくてすみません」

「リス…これはミスラ…この黒い岩のお化けは?」

「これがゴジラです」

「そうか、これか」

「ブルーの布地のハンカチは珍しいな」

「瞳の色がブルーだったので」

「これはカップケーキ…」

「王子様が持つには微妙な図案なので記念ということで」

「とても嬉しいよ。あの時の空に浮かんでいた雲だな。とても幸せな時間だった」

「お昼寝最高ですよね」

「ティーティア、私には無いのか?」

「パパは入学するの?」

「ティーティアのハンカチが貰えるなら入学しようかな」

「学校の後はお仕事ですか…ティア寂しいです」

「行かない、行かないぞ!そうだ、仕事も辞めてこよう」

「程々にお仕事をしているパパもカッコイイです」

「そうかそうか。じゃあ仕事は続けるか」

「伯爵、親バカ過ぎますよ」

「私には褒め言葉ですよ」

「パパ素敵!」

「よしよし、パパのお膝においで」

「は~い」





そしてすぐに騎士が戻ってきた。

「団長、犬を連れて登城せよと陛下からの伝言です」

「分かった。ティーティア、支度をしてくれないか」

「? このままじゃダメですか?」

「謁見なのよ」

「ママ、こんな非常時に飾り立てる方が間抜けに見えます」

「ティーティアはこのままでいい。何か言われたら私が命じたと言うから」

「分かりましたわ」





と、セインが言ったのに。

謁見は父伯爵と公爵様と私とミスラだけで人払いが成された。

王「面を上げなさい。
中身は成人年齢だったな」

父「はい、陛下。体は10歳のティーティア、魂は19歳のミライです」

王「異世界からの魂か」

公「善良な少女です」

王「一部の未来を知っていて剣の天才だというのにか?」

公「殺す剣術ではございません」

王「見せてくれ」

「対価をお願いします」

王「ほう……何故だ」

「私は罪人ではありません。部下でもありません。よって頼み事になります。王子殿下には対価を払っていただいたので、陛下にも対価を求めなくては不公平です。

あと道具を取りに戻らねばなりません」

王「肝の座った娘だな」

伯「申し訳ございません」

王「ではティーティアだけに私の趣味のようなものを見せよう。持って来させる。

あと、模造剣を用意しよう」

「専用の道具でないと出来ません。
殺傷させるためのものではありませんので、安全仕様になっております。

それに私を見てください。騎士達が使うような模造剣を持って振回せると思いますか?」

伯「ティーティア…」

王「ハハッ、確かに無理だな。よし、誰か取りに行かせよう。その間に別の話をしよう。 

その犬は其方の言うことしか聞かないのだな」

「全てではありませんが」

王「試してみよう」

「グルルルル…」

ミスラがスッと立ち上がった。

「ミスラ、ダメ。私の側にいて!」

そう言うとお座りはしたが国王へ牙を剥き唸っている。

王「成程、すまなかった」

国王がそう言うと唸るのをやめた。

王「………」

少しの沈黙の後、国王が話を再開した。

王「その犬は其方への殺気にだけ反応するな。団長や伯爵に殺気を向けても我関せずだ」

「ミスラ……大好き!」

「フンッ」

王「これは取り上げても使い物にならんな」

ちょっと!何言ってんのよ!
10歳の少女から愛犬を取り上げようとしていたわけ!?


王「息子達や公爵家の子息達とだいぶ仲がいいのだな」

「最近はそうかもしれませんが出会いは決闘だったり口論ですから微妙です」

王「そうか、王子妃か公爵夫人の座を狙っているのかと思ったが」

「何で狙わなくちゃならないのですか?
王子妃や公爵夫人よりヴェリテ伯爵家で大事にされていた方が遥かに幸せです。
ずっと子供のままでいたいくらいです」

王「これはまた、異世界の魂のせいかだいぶ価値観が違うようだな」

「実家の環境が最高で、出ていかなくていいなら出たくないと思う令嬢はいるはずです。

恋でもしたら別かもしれませんが」

王「そ、そうか。
恋はしそうにないのか?」

「王子殿下達とですか?歳下じゃないですか。25~32歳くらいがいいです」

父「ティーティア!?」

「よっぽどじゃないと歳下に手はだしません」

王「よっぽどとは?」

「例えば、愛情を感じたり、誇らしく思う部分があったり。つまり歳の差が気にならないほど愛情深いか立派でないと無理そうです。

立派って、身分じゃないです。

あと、がっしりした感じがいいです。
線の細いひとは好みじゃないです」

王「伯爵、これは大変だぞ」

父「そのようです」

国王陛下に命じられて何かをとりに行っていた侍従が戻ってきた。

王「お、ティーティア。側に来て箱の中を覗いてくれ」

「はい。失礼します」

箱を覗くとレース編みだった。

王「無心になれるのだよ」

「凄いですね」

王「内緒だぞ。

さて、本題に入ろう。

実は伯爵から言われた通り、留学希望の外国人が二人いて、入学1週間前なので入国しようとした。その中にマリエッタという令嬢もいた。

入国前審査ということで国境の町で待機させ、国境を越える前に果実水と言って聖水を飲ませたらマリエッタの方は死んでしまった。

口から出た黒い液体は消えたそうだ」








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