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ミスラの獲物 2
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マリエッタを成敗できてティーティアは喜んだ。
「これで、セイン王子殿下やダリウス兄様達は勘当されずに済みます!」
王「これで話は本当だと分かった。
今後、重要人物に接触しそうな外国人には飲ませようと思う」
「グルルルル…」
「ミスラ?」
ミスラが立ち上がり天井に向けて唸り出した。
王「ミスラを放て」
「ミスラ、行って」
ミスラが疾走してすぐに天井がバタバタと音を立てた。
公爵は笛を吹いている。
王「さあ、逃げ切れるかな?」
「楽しそうですね」
王「私の犬だったら最高に楽しかっただろう」
廊下から悲鳴が聞こえてきた。
そして笛で厳戒態勢の敷かれた部屋に現れたのは獲物を咥えたミスラだった。
「あ~また汚れちゃった」
王「第一声はソレか」
「ミスラ、放して」
「た、助けて…」
そこに更に別の人物が。
「ティーティア!!」
「セイン王子殿下」
すんごい息切れしてる。
「怪我は!」
「ない」
「何で一日に二度も狙われるんだ!」
そう言いながらギュウギュウと抱きしめられるが苦しい。
バチバチバチバチ!
ティーティアがセインの脇腹を叩くと解放された。
「ミスラ、良くやった。お前は最高だ!」
「フンッ」
「珍しい、ミスラが私以外の人に返事した」
「ミスラ~好きなものは何だ?買ってやるからな」
王「セイン」
「失礼しました」
公「血塗れで分かり難いですが多分、上級書記のベスラーじゃないでしょうか」
騎士「ナイフ、自害用の丸薬、偽の身分証明書、ワルスベルトの身分証、我が国の身分証、あと手紙?
……これは殿下からヴェリテ伯爵令嬢宛の手紙です」
「返してくれ!」
王「手紙と身分証を持ってきてくれ」
騎士「はっ!」
「父上!」
王「煩い」
国王が身分証を確認し、手紙を読むとセインを見て溜息をついた。
王「団長、その男を尋問室に連れて行き、洗いざらい話させたら教えてくれ」
公「かしこまりました」
王「ティーティア、其方はもう一種類剣術があったな?」
父伯爵め~!
伯「すまん」
「剣舞ですか」
王「それにも王命が必要か」
「でしたら、陛下も何かひとつ見せてください」
王「私がか」
「はい!」
王「そんなに期待された顔をされても困る」
公「ティーティア、私も何かやるから剣舞見せてくれないか」
「いいですよ」
「ティーティア、また一日背負うから、」
王「駄目だ。何か披露しなさい」
「分かりました」
「公爵様、短いサーベルみたいなのありますか、湾曲があまり無いといいのですが。
子供用の模造刀もあればお願いします」
「分かった」
「セイン王子殿下の準備の間にミスラを洗います」
ミスラを洗い終えて戻ると、まずはセインが披露した。
ヴァイオリンだった。よくは分からないがマスオさんとは雲泥の差だった。
「すごい!」
「ティーティアみたいに剣じゃなくて…」
「優劣はありません。それに普通に剣術は習っているんですよね」
「そうだが」
伯「ティーティア、荷物が届いたらしい」
「着替え部屋をご用意願えますか」
王「案内させる」
お下がりではなくて綺麗な布で仕立てたガウチョパンツにひらひらリボンがついたブラウス、胸にはピンで的を付けた。
髪を一纏めにして謁見の間に戻った。
王「これはこれは。ドレスでなくても品がある。なかなかいいものだな」
「ありがとうございます。
ベストは誰が着てくださいますか」
王「私が着よう」
公「陛下!?」
王「体感してみたい」
「後ろに紐を置きました。出てしまったら失格です。突くのは的だけ。防具がありませんので無理をすると怪我をさせてしまいます」
王「鎧を、」
「私が動けませんし、こんな小さな鎧は無いですよね?
では公爵様、短く笛を吹いてください」
「用意! 始め!」
ピッ
シュッ
「うおっ!」
陛下が唖然としている間に、私は胸の的を取り外して靴を脱いだ。
そして短めのサーベルを受け取り剣舞を舞った。
王「これは凄いな」
レ「美しい」
公「流れるようだな」
伯「衣装次第では芸術ですね」
終えると四人が喜んでいた。
王「剣舞は攻撃に転用できるのか」
「はい、習いはしませんでしたが」
王「やってみることは可能か」
「臨機応変な剣捌きの方がおられましたら。
息が合わないと怪我をするかもしれません。
あと、あまり身長差があると……」
公爵が騎士に指示をした。
公「今しばらくお待ちください」
模造剣などを持った甲冑を着た小柄の若い男の子が現れた。
公爵が模造剣を渡したのが小さな少女だったのを見て“本気ですか?”と目で訴えている。
「私はティーティア・ヴェリテ、10歳です。よろしくお願いします」
「フェランと申します。17歳です。ご指示願います」
「独特な攻撃をします。私は剣に当てるだけです。最後は急所に寸止めします。防具は念のためです。
できるだけ受けてください。絶対に攻撃はしないでください」
「分かりました」
「手を伸ばして剣を向けてください」
「はい」
「始めます」
軽く剣を合わせると少し離れ、すぐに接近して下から剣を打ち払った。
フェランは後ろに体制を崩したが踏み止まる。そこに振り抜いたまま回転していたティーティアは左斜め下から剣を打ち、剣が傾いたところに大きく踏み込んで喉元に剣先を付けた。
王「あの剣舞がこんな風になるのか」
公「これは……」
「フェラン様、ありがとうございました」
「貴女は何者ですか」
「伯爵家の子供です」
王「ティーティア、充分戦力じゃないか」
「これが真剣同士なら通用しないかもしれません。私は充分に振れませんし、打ち弾いてもびくともしない可能性が高いと思います」
公「騎士団で講義を、」
「しません」
公「ティーティア」
「絶対しません!
さあ、陛下と公爵様の番ですよ」
その後、陛下は弓で的当てを。公爵様は意外にも花冠を作ってくれた。しかもティアラっぽい。
「これすごいですね!輪になっただけのは見たことも作ったこともありますがティアラ風は初めて見ました!」
公「喜んでもらえて良かったよ」
王「意外だな」
公「野宿の時にちょっと」
そして私たちは屋敷に戻った。
一方、夜、セインの私室に国王がいた。
「あの手紙は恋文のように感じたが」
「そうお感じになられても不思議ではありません」
「第二妃か側妃にするつもりか」
「それは叶わないと思います」
「ならどうしようと思って書いたんだ」
「仲良くなりたくて」
「結婚までの恋人にするつもりか?
10歳の子供だぞ?」
「そこまで望んだわけではありません。
ただ私のことを考えたり思い出したりして欲しいのです。他の男ではなくて」
「ヴェリテ家に侵入した殺し屋と謁見の間の天井から盗み聞きしていた男はワルスベルトが送った者達だ」
「まさか」
「メイドなどではなく上級書記官が間者となると寄越したのは王族だろう。国王か王女か。
明らかに殺意はティーティアだけに向けられていたし、あの手紙を持っていた」
「だとしたら、娶ればとんでもないことになります」
「その通りだ。
どうやって破談に持っていくかが問題だ」
「これで、セイン王子殿下やダリウス兄様達は勘当されずに済みます!」
王「これで話は本当だと分かった。
今後、重要人物に接触しそうな外国人には飲ませようと思う」
「グルルルル…」
「ミスラ?」
ミスラが立ち上がり天井に向けて唸り出した。
王「ミスラを放て」
「ミスラ、行って」
ミスラが疾走してすぐに天井がバタバタと音を立てた。
公爵は笛を吹いている。
王「さあ、逃げ切れるかな?」
「楽しそうですね」
王「私の犬だったら最高に楽しかっただろう」
廊下から悲鳴が聞こえてきた。
そして笛で厳戒態勢の敷かれた部屋に現れたのは獲物を咥えたミスラだった。
「あ~また汚れちゃった」
王「第一声はソレか」
「ミスラ、放して」
「た、助けて…」
そこに更に別の人物が。
「ティーティア!!」
「セイン王子殿下」
すんごい息切れしてる。
「怪我は!」
「ない」
「何で一日に二度も狙われるんだ!」
そう言いながらギュウギュウと抱きしめられるが苦しい。
バチバチバチバチ!
ティーティアがセインの脇腹を叩くと解放された。
「ミスラ、良くやった。お前は最高だ!」
「フンッ」
「珍しい、ミスラが私以外の人に返事した」
「ミスラ~好きなものは何だ?買ってやるからな」
王「セイン」
「失礼しました」
公「血塗れで分かり難いですが多分、上級書記のベスラーじゃないでしょうか」
騎士「ナイフ、自害用の丸薬、偽の身分証明書、ワルスベルトの身分証、我が国の身分証、あと手紙?
……これは殿下からヴェリテ伯爵令嬢宛の手紙です」
「返してくれ!」
王「手紙と身分証を持ってきてくれ」
騎士「はっ!」
「父上!」
王「煩い」
国王が身分証を確認し、手紙を読むとセインを見て溜息をついた。
王「団長、その男を尋問室に連れて行き、洗いざらい話させたら教えてくれ」
公「かしこまりました」
王「ティーティア、其方はもう一種類剣術があったな?」
父伯爵め~!
伯「すまん」
「剣舞ですか」
王「それにも王命が必要か」
「でしたら、陛下も何かひとつ見せてください」
王「私がか」
「はい!」
王「そんなに期待された顔をされても困る」
公「ティーティア、私も何かやるから剣舞見せてくれないか」
「いいですよ」
「ティーティア、また一日背負うから、」
王「駄目だ。何か披露しなさい」
「分かりました」
「公爵様、短いサーベルみたいなのありますか、湾曲があまり無いといいのですが。
子供用の模造刀もあればお願いします」
「分かった」
「セイン王子殿下の準備の間にミスラを洗います」
ミスラを洗い終えて戻ると、まずはセインが披露した。
ヴァイオリンだった。よくは分からないがマスオさんとは雲泥の差だった。
「すごい!」
「ティーティアみたいに剣じゃなくて…」
「優劣はありません。それに普通に剣術は習っているんですよね」
「そうだが」
伯「ティーティア、荷物が届いたらしい」
「着替え部屋をご用意願えますか」
王「案内させる」
お下がりではなくて綺麗な布で仕立てたガウチョパンツにひらひらリボンがついたブラウス、胸にはピンで的を付けた。
髪を一纏めにして謁見の間に戻った。
王「これはこれは。ドレスでなくても品がある。なかなかいいものだな」
「ありがとうございます。
ベストは誰が着てくださいますか」
王「私が着よう」
公「陛下!?」
王「体感してみたい」
「後ろに紐を置きました。出てしまったら失格です。突くのは的だけ。防具がありませんので無理をすると怪我をさせてしまいます」
王「鎧を、」
「私が動けませんし、こんな小さな鎧は無いですよね?
では公爵様、短く笛を吹いてください」
「用意! 始め!」
ピッ
シュッ
「うおっ!」
陛下が唖然としている間に、私は胸の的を取り外して靴を脱いだ。
そして短めのサーベルを受け取り剣舞を舞った。
王「これは凄いな」
レ「美しい」
公「流れるようだな」
伯「衣装次第では芸術ですね」
終えると四人が喜んでいた。
王「剣舞は攻撃に転用できるのか」
「はい、習いはしませんでしたが」
王「やってみることは可能か」
「臨機応変な剣捌きの方がおられましたら。
息が合わないと怪我をするかもしれません。
あと、あまり身長差があると……」
公爵が騎士に指示をした。
公「今しばらくお待ちください」
模造剣などを持った甲冑を着た小柄の若い男の子が現れた。
公爵が模造剣を渡したのが小さな少女だったのを見て“本気ですか?”と目で訴えている。
「私はティーティア・ヴェリテ、10歳です。よろしくお願いします」
「フェランと申します。17歳です。ご指示願います」
「独特な攻撃をします。私は剣に当てるだけです。最後は急所に寸止めします。防具は念のためです。
できるだけ受けてください。絶対に攻撃はしないでください」
「分かりました」
「手を伸ばして剣を向けてください」
「はい」
「始めます」
軽く剣を合わせると少し離れ、すぐに接近して下から剣を打ち払った。
フェランは後ろに体制を崩したが踏み止まる。そこに振り抜いたまま回転していたティーティアは左斜め下から剣を打ち、剣が傾いたところに大きく踏み込んで喉元に剣先を付けた。
王「あの剣舞がこんな風になるのか」
公「これは……」
「フェラン様、ありがとうございました」
「貴女は何者ですか」
「伯爵家の子供です」
王「ティーティア、充分戦力じゃないか」
「これが真剣同士なら通用しないかもしれません。私は充分に振れませんし、打ち弾いてもびくともしない可能性が高いと思います」
公「騎士団で講義を、」
「しません」
公「ティーティア」
「絶対しません!
さあ、陛下と公爵様の番ですよ」
その後、陛下は弓で的当てを。公爵様は意外にも花冠を作ってくれた。しかもティアラっぽい。
「これすごいですね!輪になっただけのは見たことも作ったこともありますがティアラ風は初めて見ました!」
公「喜んでもらえて良かったよ」
王「意外だな」
公「野宿の時にちょっと」
そして私たちは屋敷に戻った。
一方、夜、セインの私室に国王がいた。
「あの手紙は恋文のように感じたが」
「そうお感じになられても不思議ではありません」
「第二妃か側妃にするつもりか」
「それは叶わないと思います」
「ならどうしようと思って書いたんだ」
「仲良くなりたくて」
「結婚までの恋人にするつもりか?
10歳の子供だぞ?」
「そこまで望んだわけではありません。
ただ私のことを考えたり思い出したりして欲しいのです。他の男ではなくて」
「ヴェリテ家に侵入した殺し屋と謁見の間の天井から盗み聞きしていた男はワルスベルトが送った者達だ」
「まさか」
「メイドなどではなく上級書記官が間者となると寄越したのは王族だろう。国王か王女か。
明らかに殺意はティーティアだけに向けられていたし、あの手紙を持っていた」
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