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リハーサルと女子会

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王女を迎える前日、


「ティーティア様、楽しかったですわ!」

「私も楽しかったです」

「あのドレス、素敵なデザインでしたわ。
10歳なのが惜しいところですわね」

「ふふっ。あっという間です。今は子供を楽しみます」

「私も今度真似したいですわ」

「お姉様方が着たら殿方は鼻血の出過ぎて倒れてしまいますわ」

「あら!楽でいいじゃない」

「ウフフフフッ」

「ティーティア様の髪の毛はとても柔らかいですのね。顔を埋めたくなりますわ」

「私はお姉様方のお胸に埋もれたいです」

「早く言ってくださればよろしいですのに」

「でも愛がないとダメなのです」

「あら、愛なら有りますわよ。私達はティーティア教に入信していますから」

「止めて止めて!魔女とか言われかねませんから」

「こんな可愛い魔女なら大歓迎ですわ!」

「私は何故女に産まれてきてしまったのかしら。男でしたらティーティア様を口説きましたのに」

「ベレニス様が殿方でしたら私など相手にされませんわ」

「あら、どうして?」

「その美しさ。殿方なら令嬢達にモテて私どころではありませんわ」

「私はティーティア様に男に産まれて欲しかったですわ。そうすれば私は囲われ愛でて貰えますから。ティーティア様を満足させますわ」

「あ~どちらも夢のようです~!」

「ティーティア様は本当に愛らしすぎて心配ですわ。ミスラ様、ティーティア様をお願いしますわね」

「フンッ」

「あ、返事した」

「鼻息で返事をなさるの?」

「嫌だと唸ります。
ミスラ、散歩行く?」

「グルッ」

「まあ!本当!」

「散歩を嫌がる犬は珍しいですわね」

「ですがいざという時はとても俊敏で獰猛なのです」

「あら、既にティーティア様には素敵なナイトが側にいらっしゃるのね」

ムクッ

ミスラは立ち上がるとジョルジーヌの側に行き手の甲を舐めた。

「見ました?ミスラ様が……嬉しい!」

「ミスラ様は人間の言葉がわかるのですね」

「そうかもしれません。

ベレニス様、ジョルジーヌ様。今日から王宮に泊まるのですが、私の泊まる部屋で女子会しませんか?」

「「女子会?」」

「女の子だけで部屋に集まってお喋りしたりするのです。夜ですけど。どうするかは自由ですわ」

「是非お邪魔します」

「私も」





その後城全体でリハーサルをやった。

「ティーティア……これ臭すぎる」

歯に臭い木の実を擦り付け、服は汗を大量にかいた騎士の肌着を洗わずに二日熟成。

服も普段とは違う安いけどゴテゴテした趣味の悪い服を作った。
やたらレースやギャザーを付けて、ズボンは膝上にガラスのキラキラビーズでデコったサスペンダー。

顔には化粧でデキモノを作り出してもらい髪型はワカメちゃんカットを施したズラを被せた。腹回りには詰め物をした。

三つ嫌がった。

眉毛を抜いてマロにするのと、レギンスのようなものを履かせようとしたら、嫌がられた。

爪を汚して臭いをつけようと一石二鳥のために、

「セイン殿下、厩舎に行って馬糞を掘っ、」

「嫌だ!!」


ここぞとばかりに周囲はセインを見て楽しんでいた。

だが、役者の使用人や騎士達はそれでは困る。誰か一人でも王女の前で笑ってしまったら折角の作戦は赤字で終わってしまう。

「いいですかみなさん。見慣れてください、嗅ぎ慣れてください。
笑ってしまったり、臭いと顔に出してしまったらお終いです。
みなさんはプロです。本番までに心を鍛えましょう!」


そして、

「だからこそ効果があるのです!
ほら、品など忘れて!」

「くっ!自分のすることがトラウマになって魘されそうだ」

「王女に魘されるよりはマシですよ!

さあ!王妃様に何て言うんですか!」

「マ…」

「セイン殿下、貴方は役者!
国の運命を背負った役者です!
一言一句、恥はありません!」

「ママ!今日のおっぱいまだ?」

「顔!恥ずかしがっていたらバレます!
顔色を変えず、誇らしげに、もっと変態王子っぽく!」

「そんなの知らないよ。誇らしげな変態ってどうやるんだ」

「その辺にエロジジイがいるでしょう。参考にすればいいのです!」

「ティーティア、エロジジイだなんて言葉は何処で習ったんだ」

「気にしている余裕などありませんよ!ほらほら」

「ママ!今日のおっぱいまだ?」

「王妃様、笑ってはいけません。
王妃様は慈愛の女神様のように広~い心で迎え入れるのです。
頭の中には“慈悲・無償の愛・受け入れ”です」

「いらっしゃい。今からおっぱいの時間にしましょうね」

「素晴らしい! 最高!!……ブフッ」

「「ティーティア?」」

「んん゛ 失礼しました」





夜、

「ティーティア」

「どうしたのですか?」

作戦のために王宮に泊まり込んでいるティーティアの客室に、セインが訪ねてきた。

「賤業婦達と仲良くなり過ぎではないか?」

「だから?」

「ティーティアは貴族令嬢で釣り合わな、」

セインの言葉を遮ってティーティアは怒りを込めて反論した。

「それ以上は聞きたくない。彼女達は素敵な人です。最低限のマナーも身に付いているし、品もあり性格も良い。
職業だけで差別するのはおかしいです。

男達は平民から王族まで彼女達の体を求めるくせに」

「それとこれとは、」

「違うなんて言ったら、この作戦が終わったら絶交します。

彼女達は税金を払っているのです。市民権もあります。他の職業の方と同じように自由に友人を作る権利があります。

お忘れのようですが彼女達の大半が被害者です。騙されたり、親や夫に売られたり。本来は保護されるべき弱者なのです。

中には元貴族もいますし、こっそり12、13歳で売られた子もいます。
私が2年後に娼館に売られるとしたら王子殿下はどう思いますか?」

その時、ノックが聞こえてティーティアは扉を開けた。

「ベレニス様とジョルジーヌ様がいらっしゃいました」

「お待ちしていましたわ!

王子殿下、お引き取りください」

「すまなかった」

バタン



「さあ、お茶を淹れますね」

「よろしいのですか」

「私達のためにティーティア様が…」

「聞こえていたのですね。

別に構わないのです。理解できない王子であれば私には縁の無い方。遠くで視界に入らないようにするだけです。

まだ時間がありますから、もっと女性を大事にする国を探して見つかれば移住することだってできます。

私と王子殿下は友人でも恋人でもありません。幼馴染でも婚約者でもありません。

単に親同士の縁から王宮に最近通っていて、今回の件の助言をしているだけです」

「殿下と恋仲ではないのですか!?」

「ないです。王子殿下の性格は悪くはありませんけど。

私のことは中身は20歳近い女の子だと思ってください」

「つまり子供には興味がないということですのね?」

「10歳の少女と二十代半ばでは絵面は悪いですけど、25歳以上の体躯のしっかりとした男性がいいのです。

さあ!楽しみましょう!
役者騎士の中に、いい感じの殿方がいたんですよ!眼福です!」

「ウソ!誰!誰ですか!!」

「教えてください!」

「エミール卿です」

「「あ~」」

「なんですか!彼は魅力的ですよ!」

「そうなんですけど、ティーティア様はセイン王子殿下のような中性的な方が好みかと」

「そんな素振り見せました?」

「エミール卿のどの辺がいいのですか」

「目に色気があります」

「「………」」

「8年後なら迫ります」

「「………」」

「婚約するっていう手もありますわね」

「「 !! 」」

「あの指にも色気を感じます」

「「 !! 」」

「声も心地いいですし、あの体!
飛びついても受け止めてくださいますわ」

「「………」」

「食べ方も素敵!」

「「………」」
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