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息の根を止める

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ふわふわとした足取りでセインに支えられながら会場に戻ったティーティア達の前にはゾルドフ侯爵とキャサリーナと長男がいた。

「(ティア、私に任せて大人しくしてて)」

血色の良くなった頬に潤みのある瞳、先程よりも赤い唇を見て侯爵はニヤリと下衆な表情を浮かべ、キャサリーナはセインの腕の中にいるティーティアを睨み付けた。

「セイン殿下も欲を持て余す歳頃ですから摘み食いをしたいのは分かります。まずは婚約者を定め、婚姻するまでは割り切った関係に止め、婚姻後に捌け口を囲う事を進言いたします」

「お父様!」

「キャサリーナ、男とはそういう生き物だ。正妻の座で我慢しなさい。次期国王なら必ず正妻との時間が義務となる。その時によく尽くせば殿下も可愛がってくださる」

「私はセイン様を心からお慕いして、」

「セイン殿下は第二妃や妾を迎えられるお立場だ。我儘を言うな。妃と違って妾や愛人は飽きれば入れ替えるものだ。いちいち目くじらを立てるな」

「残念ながら私はキャサリーナ嬢を娶る気は微塵もない」

「王女と破談になって後ろ盾になる高位貴族で歳頃の令嬢はキャサリーナだけです」

「まあ、他は婚姻しているからね。
キャサリーナ嬢は最早売れ残りでは?」

「なっ!王子だからといってゾルドフ家を貶めていいわけではないですぞ」

「今はゾルドフ家云々ではない。キャサリーナ嬢自身を評価した結果の発言だ。
彼女の傲慢さと悪行は知れ渡っている。
私もこの目で見てきたからな」

「多少下位貴族にをしたからといって咎められるほどではない」

「私の妻は次期王妃だ。些細なことで己より身分の低い者を虐げる者に誰が支持をするというのだ?大半はキャサリーナ嬢の機嫌次第で八つ当たりされた瑕疵の無い令嬢ばかりだった。

醜い女を娶るつもりは無いし、本日付けで除籍されるキャサリーナ嬢を娶るわけがない」

「夢でも見たのですか?キャサリーナは明日も侯爵令嬢です」

「そちらの長男も除籍の上、しばらく姿を消すことになる」

「随分とお疲れのようだ。思った以上にその娘は殿下を骨抜きにしたようですな。

ああ、そこの下賤の女がお二人の手解きでもなさったのですか」

「彼女は私の最愛だ。数年前に既に獅子の紋を与えている。無礼な物言いは許さないぞ」

「獅子の紋を!?」

「私からすれば侯爵の方が下衆だと思うがな」

「いくら王子でもそんな侮辱は、」

「侮辱ではない。事実だよ。

少女にレイプを繰り返す性犯罪者と、その教えを受け継いだ長男、ライバル令嬢を貶めた長女。とんだ一家だな。
唯一の救いはデビューしたての次男だけだ」

「誰に吹き込まれたのか知りませんが、根拠のない誹謗中傷は許されることではありませんぞ!」

「根拠が無いと何故思った?ちゃんと証拠を固めてから断罪しているんだ!」

その言葉に侯爵の取り巻きは一歩、二歩、三歩と距離を取った。

「下賤女の証言など何の証拠にもなりません!」

「心当たりがあると自白してるようなものなのが分からないようだな。

そもそも証言は、確定している被害者11名だけではない。領民24名、医師2名、侯爵家の私兵を含む使用人17名、二つの娼館の支配人と従業員39名だ」

会場の貴族達は何の罪だかは分からないが身内からも証言する者が17人に医師2名という部分に侯爵の有罪が確定したと悟り息を飲んだ。

「お前は娼館の支配人を脅して下働きの少女を手酷くレイプした。当時13歳と14歳の成熟していない生娘を殴り、抵抗できなくなったところを解しもせず貫き二時間凌辱した後、医師を派遣して治療させ、大金を払ってその後も専属娼婦にしてレイプし続けた。

領地では借金のある家、子供が多すぎて困窮した家、片親で困窮した家庭に話を持ちかけて、12歳から14歳の生娘を纏った金と交換した。

領地と王都にそれぞれ別宅を構えて少女を監禁し性奴隷にした。

その少女達も解さずに突き立て痛みに苦しむ姿で欲求を満たすというお前の性癖の犠牲になり続けた。

親との契約書に金銭受領書に誓約書、銀行の記録、カルテ、医師の日誌、領地と王都の別宅に監禁されていた少女が証拠だ。

二人は王宮で保護して治療を受けている」

「まさか、そんな…」

会場の令嬢や夫人達の一部は気分が悪くなり外に出始めた。

「こいつを拘束しろ。もう爵位は剥奪して成人した次男に引き継いだ」

「は!? 長男は私です!!」

「お前は父親に連れられて15歳の娼館の下働きの少女に手を付けたろう。

父親と同じで生娘に解しもせず突き立てた。成人祝いだったらしいな。
成人した者が未成年に手を出せば犯罪だ。

つまりお前の継承権は血筋の中で最下位だ。

それに加えてお前達の父親が除籍になるので後を継いでいない長男と長女は平民になる」

二人は蒼白になっていた。

「長男も拘束しろ。

長女には侯爵家が用意した領地行きの馬車が既に到着している。このまま乗って侯爵領のヒズラ子爵家に着いたら下働きで働かせてもらえるように話が付いている。

気持ちを入れ替えて平民として一生懸命働け。立場をわきまえなかったり使えないと判断されたら身一つで追い出されるぞ。

草や木の実、川に入って魚をとって食べる野外生活か、町でその身体を使い客を取るしかなくなるぞ」

「殿下…第二妃でもいいのでお情けを、」

!?まだ己の置かれた立場が分かっていないようだな。
例えお前が侯爵令嬢の身分のままだったとしても絶対に娶ることはない。

私はこの腕の中にいるティーティア・ヴェリテただ一人を愛している」


兵士に侯爵親子を拘束させて会場から出した。

会場は騒めいたがセインは我関せず大声で貴族達に促した。

「このまま帰ってもいいが少しでも食事に手を付けて帰ってくれ!
無駄にしては民が悲しむ!」

そして自身もティーティアを連れて行き、壁に並べられた椅子に座らせると皿に盛り付けティーティアと食べ始めた。

ティーティアの両親やウィルソン公爵家やその他ティーティアと親しい貴族達や顧客達が次々と皿を手に料理を取って食べ始めた。







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