89 / 173
前侯爵との密会
しおりを挟む
ミーシェは様々な感情が襲い混乱していた。
「嫌!聞きたくない!」
そう言って席を立った。
「ミーシェ、聞くべきよ。貴女を心配して集まっているの。聞く前から勝手に思い込んで拒絶をするのは愚かだわ。
どうしても嫌なら、今後降りかかる難題を自分で解決する覚悟をして部屋を出なさい」
アネットが厳しく突き放すようなことを言うのは初めてだった。
「っ!」
「ミーシェ、座れ」
ライアンが座るよう促した。
ハヴィエルは話を続けた。
「ミーシェは最終学年だ。
つまり結婚を真剣に考える時期に入る。
婚約者のいない者達は大急ぎで動き出すんだ。
真剣に考えないと良い縁談はどんどん消えて無くなっていく。
就職といってもその容姿は敵を多く作りやすい。アネットは王城で近衛騎士団所属で働いていたにも関わらず何度か襲われた。
ミーシェの場合は反撃が可能だろうが、ほとんどが格上だ。怪我をさせれば逆に咎められる。
平民のように個人で商売をしても必ず関わりというものがあるものだ。悪い噂を流されて客足がなくなったり仕入れを邪魔されたり、商品にケチをつけられることもある。
やはり、嫁ぐというのが最大の防御になると思う。
そこで、ミーシェが選んだ相手が身分の高い者だった場合、相手によっては今の身分のままでは嫁げない。その時は伯爵家以上、もしくは侯爵家以上の家門に養女にしていただくしかない。
たが、相手も余程の旨みがあるかお人好しでなければ男爵家からの養女を受け入れない。
しかも養女と認められるには一年以上の同居実績が必要だ。
ミーシェのような容姿の若い娘を屋敷に住まわす場合、当主や令息がミーシェを自分のものにしたくなるかもしれないという懸念が出てくるから夫人が嫌がるだろう。
となるとゲラン家かサックス家が候補となる。
サックス家の場合は婚家に確認が必要だ。
昔、王宮でシーナに怪我をさせたことがあるからだ」
「ならお母様の実家でも、」
「もしミーシェがエヴァンを選んだ時は侯爵家以上でないとならないんだよ」
「………」
「エヴァンの気持ちは知っているね。
彼は卒業したら妃を選び順調なら一年後には婚姻だ。エヴァンが選ばなかったら勝手に選出され政略結婚となる。
まあ、好きな相手に結婚を申し込まない可能性もある。その場合は相手を思ってのことだ。辛い思いをさせるとか、嫌がるだろうとか。
だが、彼は一途だったと思う。学園でもミーシェのために我慢して距離をとった。
表向きには妹を助けるライアンの後ろ盾になってミーシェを守る手助けをしてくれた。
もしエヴァンが他の令嬢と結婚したら、ミーシェとは王族と男爵令嬢の関係だ。友人でも幼馴染だとしても、他の男爵令嬢と同じ位置に立ち、声を掛けられるまで顔を上げてはならないし言葉も直さなくてはならない。
そうしないと妃が不快に思うし夫婦仲が悪くなるからだ。
ミーシェはこの休暇から卒業までしっかり将来について考えて欲しい。
エヴァンの気持ちとも向き合って、もし可能性がゼロならエスコートを断りなさい」
「お父様…」
「エヴァンにとっても大事な時間に入っているんだ。
その気もないのにズルズルと曖昧にするのは誠実とは程遠い行為だと思わないか?」
「もう私達は周囲人達の立場を考えて動けなくてはならない。
エヴァンは本来、とっくに婚約者をおく立場なんだよ。まあ、それをしなかったのはエヴァンの勝手といえばそれまでだ。だからといって彼の気持ちに目を背けるのは違うと思う。
サルト家の一員として胸を張れる対応をしなくては駄目だ」
ハヴィエルに続いてライアンからも指摘されてショックを受けていた。
「友人や幼馴染ではいられないなんて」
「遅くとも卒業後は切り替えなくては駄目だろうな。休暇が明けたらエヴァンをよく見て後悔のない選択ができるようにしなさい」
「分かりました」
「あの、サックス侯爵のことですがだいぶ参っているようでした。私が自分達を守る為とはいえ脅すようなことを言ってしまいました。
私達はもう子供としてお付き合いをという歳ではありません。
私達はサルト家の実子として届けが受理されています。
他家の貴族同士として上手くやっていけるようになってもらえたらと思います。
母に関して終止符を打ってほしいと思っています。
もう母を愛する前提で伴侶を探すのではなく、愛情を育む前提でいて欲しいのです。家族愛でも人間愛でも友情でもいいと思います。
私もミーシェも母も侯爵に不幸になってほしくはないのです。
気がかりなのは養子のご子息です。私達のせいで追い出されたり後継から外されたりしたらと思うと」
「それは私がしっかりと対処しよう。
テオドールにもアネットにとってのサルト男爵のような人が現れてくれたらいいのだが」
「嫌!聞きたくない!」
そう言って席を立った。
「ミーシェ、聞くべきよ。貴女を心配して集まっているの。聞く前から勝手に思い込んで拒絶をするのは愚かだわ。
どうしても嫌なら、今後降りかかる難題を自分で解決する覚悟をして部屋を出なさい」
アネットが厳しく突き放すようなことを言うのは初めてだった。
「っ!」
「ミーシェ、座れ」
ライアンが座るよう促した。
ハヴィエルは話を続けた。
「ミーシェは最終学年だ。
つまり結婚を真剣に考える時期に入る。
婚約者のいない者達は大急ぎで動き出すんだ。
真剣に考えないと良い縁談はどんどん消えて無くなっていく。
就職といってもその容姿は敵を多く作りやすい。アネットは王城で近衛騎士団所属で働いていたにも関わらず何度か襲われた。
ミーシェの場合は反撃が可能だろうが、ほとんどが格上だ。怪我をさせれば逆に咎められる。
平民のように個人で商売をしても必ず関わりというものがあるものだ。悪い噂を流されて客足がなくなったり仕入れを邪魔されたり、商品にケチをつけられることもある。
やはり、嫁ぐというのが最大の防御になると思う。
そこで、ミーシェが選んだ相手が身分の高い者だった場合、相手によっては今の身分のままでは嫁げない。その時は伯爵家以上、もしくは侯爵家以上の家門に養女にしていただくしかない。
たが、相手も余程の旨みがあるかお人好しでなければ男爵家からの養女を受け入れない。
しかも養女と認められるには一年以上の同居実績が必要だ。
ミーシェのような容姿の若い娘を屋敷に住まわす場合、当主や令息がミーシェを自分のものにしたくなるかもしれないという懸念が出てくるから夫人が嫌がるだろう。
となるとゲラン家かサックス家が候補となる。
サックス家の場合は婚家に確認が必要だ。
昔、王宮でシーナに怪我をさせたことがあるからだ」
「ならお母様の実家でも、」
「もしミーシェがエヴァンを選んだ時は侯爵家以上でないとならないんだよ」
「………」
「エヴァンの気持ちは知っているね。
彼は卒業したら妃を選び順調なら一年後には婚姻だ。エヴァンが選ばなかったら勝手に選出され政略結婚となる。
まあ、好きな相手に結婚を申し込まない可能性もある。その場合は相手を思ってのことだ。辛い思いをさせるとか、嫌がるだろうとか。
だが、彼は一途だったと思う。学園でもミーシェのために我慢して距離をとった。
表向きには妹を助けるライアンの後ろ盾になってミーシェを守る手助けをしてくれた。
もしエヴァンが他の令嬢と結婚したら、ミーシェとは王族と男爵令嬢の関係だ。友人でも幼馴染だとしても、他の男爵令嬢と同じ位置に立ち、声を掛けられるまで顔を上げてはならないし言葉も直さなくてはならない。
そうしないと妃が不快に思うし夫婦仲が悪くなるからだ。
ミーシェはこの休暇から卒業までしっかり将来について考えて欲しい。
エヴァンの気持ちとも向き合って、もし可能性がゼロならエスコートを断りなさい」
「お父様…」
「エヴァンにとっても大事な時間に入っているんだ。
その気もないのにズルズルと曖昧にするのは誠実とは程遠い行為だと思わないか?」
「もう私達は周囲人達の立場を考えて動けなくてはならない。
エヴァンは本来、とっくに婚約者をおく立場なんだよ。まあ、それをしなかったのはエヴァンの勝手といえばそれまでだ。だからといって彼の気持ちに目を背けるのは違うと思う。
サルト家の一員として胸を張れる対応をしなくては駄目だ」
ハヴィエルに続いてライアンからも指摘されてショックを受けていた。
「友人や幼馴染ではいられないなんて」
「遅くとも卒業後は切り替えなくては駄目だろうな。休暇が明けたらエヴァンをよく見て後悔のない選択ができるようにしなさい」
「分かりました」
「あの、サックス侯爵のことですがだいぶ参っているようでした。私が自分達を守る為とはいえ脅すようなことを言ってしまいました。
私達はもう子供としてお付き合いをという歳ではありません。
私達はサルト家の実子として届けが受理されています。
他家の貴族同士として上手くやっていけるようになってもらえたらと思います。
母に関して終止符を打ってほしいと思っています。
もう母を愛する前提で伴侶を探すのではなく、愛情を育む前提でいて欲しいのです。家族愛でも人間愛でも友情でもいいと思います。
私もミーシェも母も侯爵に不幸になってほしくはないのです。
気がかりなのは養子のご子息です。私達のせいで追い出されたり後継から外されたりしたらと思うと」
「それは私がしっかりと対処しよう。
テオドールにもアネットにとってのサルト男爵のような人が現れてくれたらいいのだが」
228
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
婚約破棄をしておけば
あんど もあ
ファンタジー
王太子アントワーヌの婚約者のレアリゼは、アントワーヌに嫌われていた。男を立てぬ女らしくないレアリゼが悪い、と皆に思われて孤立無援なレアリゼ。彼女は報われぬままひたすら国のために働いた……と思われていたが実は……。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)
松丹子
恋愛
スパダリな父、優しい長兄、愛想のいい次兄、チャラい従兄に囲まれて、男に抱く理想が高くなってしまった女子高生、橘礼奈。
平凡な自分に見合うフツーな高校生活をエンジョイしようと…思っているはずなのに、幼い頃から抱いていた淡い想いを自覚せざるを得なくなり……
恋愛、家族愛、友情、部活に進路……
緩やかでほんのり甘い青春模様。
*関連作品は下記の通りです。単体でお読みいただけるようにしているつもりです(が、ひたすらキャラクターが多いのであまりオススメできません…)
★展開の都合上、礼奈の誕生日は親世代の作品と齟齬があります。一種のパラレルワールドとしてご了承いただければ幸いです。
*関連作品
『神崎くんは残念なイケメン』(香子視点)
『モテ男とデキ女の奥手な恋』(政人視点)
上記二作を読めばキャラクターは押さえられると思います。
(以降、時系列順『物狂ほしや色と情』、『期待ハズレな吉田さん、自由人な前田くん』、『さくやこの』、『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい』、『色ハくれなゐ 情ハ愛』、『初恋旅行に出かけます』)
砕けた愛
篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。
あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる