【完結】ずっと好きだった

ユユ

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帝国 王太子レオン(烈火)

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【 レオンの視点 】


あの後、私もアクエリオンもメディもライアンに惨敗で5分ずつの攻守交代で0対10で完敗だった。

あれでも手を抜いているのだろう。


予想通り、ガブリエルは荒れて酒を飲んだようだ。酔って寝て、晩餐は部屋で取り、また飲みだしたらしい。

国王陛下には説明してエヴァン殿下に知らせないよう頼んでおいた。
サルト夫妻にはライアンが説明してくれた。
アーノルドという使用人が貸し出された。

「王太子殿下、サックス家から受け入れ可能と返事をいただいております」

「ご苦労」


後はガブリエルを待つだけだ。

外の警備は間隔を離し、一番近い者には居眠りのフリをさせた。

私はとライアンはバルコニー。
アクエリオンとメディは隣室、アーノルドは何処かにいるらしい。

『私は私の持ち場で待機する。ミーシェに触れたら斬っていいということで間違いないか』

無礼な口調だがそこに触れる気になれなかった。何でこんな目をした男がサルト家にいるんだ?

まるで闇に引き摺り込まれそうな……まさか。


バルコニーで待っている間、小声でライアンが謝ってきた。

「すみません。アーノルドは私達の子守兼母付きの使用人なんです」

「子守?」

「剣術、弓術、馬術、外国語、その他様々なことを教えてくれたのが彼なのです」

「元近衛と聞いたが」

「はい。エリートなんです」

暗殺者か……」

「多分室内か天井裏にいますよ。
あ、来ましたね」

そうか。アーノルドは暗殺者を育てたのか。


廊下側の扉が開き、誰かが入って来た。

少し開いた窓の隙間に耳を傾けた。

「へっ、所詮女だ」

寝たフリをするミーシェに跨り何かをしているようだ。

合図はミーシェが送るはずなのに反応がない。まさか本当に寝てしまったのか!?

「堪んねぇ。なんだこの吸い付くような柔らかな乳は」

そこからはもう体が勝手に動いていた。頭が沸騰して、ただあいつを殺すことだけ。

ザシュッ
ズブッ

「ゴボッ」

ドサッ

大きな物音にアクエリオン達が飛び入り、灯りをつける。

「王太子殿下、深呼吸をしてください」

我にかえると血の海だった。

ライアンはミーシェの顔に被せた枕を外した。
返り血を防いだようだ。

ガブリエルは膝を曲げ仰向けにミーシェの足元に倒れ事切れていた。

側でガブリエルの服で暗器を拭くアーノルドがいた。

アーノルドがガブリエルのノドを掻き切って、私が横から胸を刺したようだ。私の剣が刺さっている。
喉の傷が深すぎる。頸椎の際まで切り裂いたようだ。私の剣も心臓部に近い。

次にミーシェに視線を落とすと、胸元は大きくはだけていた。

「何故もっと早く合図を出さなかった!」

「ちょっとくらいじゃダメかと」

「直に触られたのか」

「はい 」

「アクエリオン!外の騎士にメイドを呼ばせて私の部屋とガブリエルとお前の部屋に湯浴みの準備をさせろ!」

「直ぐに」

「ライアン、アーノルド。貴賓室に移るから血が垂れない程度に体や服を拭け。向こうで血を洗い流す。

メディ、後始末を頼む。国王に知らせに行かせてくれ。

帝国の父上にも伝書を。誓約を破り、貴族を犯そうとして私に始末されたと報告して、死体をどうするか聞いて指示通りにしろ」

「お任せください」

「アクエリオン、棚から毛布を取ってくれ」

「レオン殿下、苦しいです」

「其方が見ていいものではない」

アクエリオンの毛布を受け取りぐるぐる巻きにしてミーシェを抱え、貴賓室に移動した。

ライアンをアクエリオンの部屋の風呂に、アーノルドをガブリエルの部屋の風呂に、ミーシェを私の部屋の風呂に入れることにした。

「まあ、まあ、ミーシェ様。怖かったですね。香り付きの泡風呂にしましたから、温まって気分を変えましょう」

毛布からひょっこり顔を出しキョロキョロと部屋を見回すミーシェに怒りの気持ちが一気に引いた。

「いつもありがとう、チェルシー」

「まあ、覚えていてくださったのですね!」

「エヴァンの10歳の誕生日に私の担当をしてくれたもの。覚えているわ。
ゴッドハンドの持ち主だもの」

「ミーシェ、ゴッドハンドとは?」

「チェルシーのマッサージ、凄いのよ!いつの間にか寝ちゃうの」

「お、お嬢様、お言葉が……」

「あ、スゴイノデス、殿下」

「ハハッ、いいんだ、チェルシー。ミーシェには許しているから。早く入っておいで」

「殿下が先に」

「早く入らねば私が湯浴みを手伝うぞ」

「お先です!」

「ククッ」

「兄上……」

「どうした」

「………いえ、一杯飲みますか」

「グラス半分にしてくれ」

「てっきりライアン殿が手を下しているかと思いました」

「アーノルドはライアンの師匠だ。距離的に彼の方が近かった」

浴室からミーシェ達の声が聞こえてくる。

《ミーシェ様、随分とお育ちになられて》

《あの時は11歳だもの》

《こんな芸術のようなお体をなさっておられたなんて。世の女性が羨ましがりますわ》

《大袈裟ね》

《お湯でお流ししますね》

ザーッ

《滑らかな肌をなさってますが秘訣はございますか?》

《特には。サルト領の蜂蜜石鹸を使ってる程度よ》

《上がった後は何を?》

《たまにマッサージの時に付けるけど、基本は湯に入れるのよ。その時々で違うけど、薬草だったり花のエキスだったり、フルーツの時もあるわ》

《まあ、素敵ですわ。

さあ、汚れは洗い流しましたので湯に浸かりましょう》

《いい香り》

《まあまあ、ミーシェ様。これは殿方が放っておきませんわ。素顔がまた可愛過ぎます》

《そんなにお化粧させていないのよ?》

《ちょっとでも映えてしまうのでしょう》

《チェルシー、くすぐったいわ》

《お嬢様のお手伝いができて幸せです》

《ありがとう》


「「………」」


湯浴みから戻ったミーシェを見て驚いた。
化粧を落とすと雰囲気が変わる。
年相応には見えぬほど幼顔でとても愛らしい。だからといって子供に見えるわけではない。睫毛や唇が動く度に何とも言えない気持ちにさせる。

濡れた髪、体から湯上がりの香りが立ち上り私を刺激する。鍛錬着の時も思ったがとても細い。ガウン姿は体の膨らみに柔らかい線が浮き出ていて雄を刺激する。

「洗い流してくるから、寝室で髪を乾かすといい」

「王太子殿下、直ぐに湯を入れ替えます」

「血を洗い流すだけだ。そのままでいい。一人で入る。アクエリオン、見張りを頼む」

「お任せください」



血を洗い流し、湯に浸かった。

ミーシェと同じ香りだ。目を瞑ると先程目に映ったミーシェが浮かんでくる。

はぁ、まずい。

(女を呼ぶか……)

だが、知られたら避けられるかも。


《兄上、ライアン殿を入室させました》

「分かった」
















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