【完結】冷遇された翡翠の令嬢は二度と貴方と婚約致しません!

ユユ

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吐露

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ジクトリクス伯爵家に向けて馬車を3台走らせている。

母と馬車 ジュスト様の馬車 納品する馬車。

私は母の勧めでジュスト様の馬車に乗った。
出発日の早朝からニコニコとご機嫌なジュスト様にずっと見つめられている。

「今度母上の誕生パーティをやるんだ。パートナーを務めてくれるよね?」

「私は母と、」

「叔母上はジクトリクス伯爵夫人と一緒にいたいからセリーナを預けると仰ってくださったよ」

「母が?」

「だからいいよね?
可愛いセリーナをエスコートできると知って興奮して眠れなかったよ」

「エスコートなんて初めてじゃないですよね」

「分かってないな。
婚約者でもない愛しい女性をエスコート出来る機会を得られたんだ。しかも国を隔てていれば機会は少ない。浮かれるのは当然だろう?

本当は全てを自分のものにしたいけど 僅かな時間しかない。
一生の中の一つのパーティの時間など一瞬だ」

「……」

「ずっと一緒にいたい。
その為なら何でもするよ。

ほら、こっちの馬車は疲れるだろう?
もっとこっちに来て寄りかかって」

「……」

本当にしそうで怖い。
私を見つめる瞳は甘いけど強い。
私より薄い翡翠の瞳を従兄と捉えていたのに、親近感が無くなってきた。

「そんなに見つめられると…」

「え?」

私の頬に手を添えると口の端に唇を寄せた。

「愛してるよ」

「ジュス…」

今度は唇の上に唇を重ねた。
少し離しては熱い眼差しで探るように私を見つめ、
何度も何度もキスを繰り返した。





ジクトリクス伯爵家に到着すると夫妻が出迎えた。

「伯爵、夫人、突然申し訳ない。愛しいセリーナと離れたくなくて我儘を言ってついて来てしまった」

「え!?」

「早速馬車を試乗してくれ。セリーナ説明を」

「伯爵、夫人。こちらの馬車が特注馬車です。

後ろを開けてロックを外します。
スロープを出して座席式車椅子を出します」

「マリア、あちらの車椅子に移ろう」

伯爵が抱き上げて夫人を移した。

「これは?」

「組立式スロープは安全装置が付いています。
この突起は一方方向にしか倒れません。
あまり勢いを付けられると乗り越えてしまいますが、夫人の体重でゆっくりなら、馬車に乗せる時にうっかり下がって落ちてしまわないようにできます」

「乗せてみよう」

伯爵が車椅子を押してスロープを登って途中で下がってもストッパーで落ちなかった。

「降ろす時はスロープを逆に組み立ててください。
この別部品を中央に付けて、降りる勢いを殺すことが出来ます」

車椅子の車輪に抵抗が加わるような形をした木の部品を取り付けてみて説明した。

「すごいな」 

馬車に乗せ固定すると後ろの扉を閉め、隣に伯爵が乗り込み試乗した。

敷地内を一周して戻り、車椅子を降ろした。

付属の日傘を車椅子に装着した。

「これなら陽射しが熱くありませんし メイドの手も疲れませんわ」

「お出掛けが楽しみになる日が来るだなんて…」

夫人が涙を浮かべた。

「どうお返しをすればよいか」

伯爵は申し訳なさそうに馬車に触れた。

「乗り心地や気になった点や こうだったらいいのになということが浮かびましたら教えてくださると有難いです。今後の開発に反映できますから。

特殊な馬車として販売していきます」

「本当にいただいてよろしいのでしょうか」

「はい。但し、修理が必要になった場合はお時間が必要になります」

他にも説明をして納品完了とした。


やっとお屋敷に入り客室で腰を伸ばして休憩していた。
普通の馬車の長い移動は久しぶりだったので身体が痛かった。 

夕食をご馳走になり お母様達は昔話に花を咲かせ、私はジュスト様のお誘いで夜の庭園鑑賞に出た。

「6年待ち?7年待ちか分からないけど受注を一旦休まないか?
その頃にはもうカークファルドを含む西側の天災は落ち着いているだろう。

このまま過密な生活を送ることは間違いだ。
今は熱だけで済んでいても いずれ病を招く。過労で大病を患ったり命を落とす者もいる。
残された叔母上達や シモン兄上はどんな気持ちだろうか。領地や自分達の犠牲になったと間違いなく悔やむだろう。

セリーナ。どの職場も、その人無しには成り立たないということは危険なことなんだ。
今受けた受注を通して教えられるものは教えるなり、事業の在り方を見直すべきだと思う。

もしセリーナ次第の事業なら、天災後は手を引いて本来のカークファルドに任せることも考えて欲しい。

もしセリーナが過労で死ぬようなことがあれば、私は正気ではいられないよ」

確かに一理ある。
私の体は過労に強くない。
シモン兄様のような心の優しい人は、気に病むだろう。

「兄に相談しながら考えてみます」

「ありがとう セリーナ」

「こちらこそ 心配してくださりありがとうございます」

ジュスト様がギュッと抱きしめてきた。

「巻き戻り前の俺はセリーナを失って死ぬほど後悔したはずだ。
ちょっと拒否されたからって引き下がるなんて情けない。その弱さのまま帰国してして最愛のセリーナを助けられなかった。セリーナを攫わずにグリーンデサントに帰国した自分を呪ったはずだ。

巻き戻り前の記憶がないから、俺は同じことを繰り返しただろう。
今回はセリーナの努力で回避したんだよな。
大国の次期国王などと言われているくせに 唯一愛する女すら守れない。

セリーナ…次は全土を血に染めてでも守りたい。
だから絶対に頼ってくれ、俺に守らせてくれ」

「はい」




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