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2度目
理屈じゃない
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国境を超えてから1週間が経ち、城内で普通の生活を送っていた。
バルコニーで朝食をとり、グリーンデサントの本を読み、昼食をお祖母様ととり、庭園を散策した後はガゼボでティータイム。その後はセリーナの希望の過ごし方をして王族の夕食。
そして湯浴みをして話をしながら就寝。
湯浴みと着替え以外はずっとジュストが付き添っていた。
普通食をしっかり食べることを条件に、ジュストの給餌は終了した。
「甲斐甲斐しいこと。
彼みたいな人がずっと一途に寄り添ってくれたら嬉しいわね」
「ジュスト様のことですか?
でも男の人は変わりますから あてにしたくないですね。
私はシモン兄様と結婚したいです。
お兄様ほど信用できる人はいませんから。
お母様、私が捨て子とか貰われっ子とかいう可能性はありませんか?」
「あるわけないでしょう。第一 シモンには婚約者がいるのよ?」
「妾でもいいです。仲良くします」
「困ったわねぇ」
「ジクトリクス伯爵家の納品は明日ですね。
他に行きたいところはありませんか?」
「招待状は届いているのだけど気乗りしなくて」
「そうなのですね。ではジクトリクス伯爵邸で少しゆっくり滞在するのもいいですね」
そんな話をしていた数十分後、息を切らせてジュスト様がやってきた。
「俺はシモン従兄上と同じで一途だし、他の女に気持ちを寄せることはないぞ!」
「どうしたのですか?急に」
「俺は浮気などしない!」
「…そうは思っても 出会ってしまえば気が変わるかもしれませんよ」
「絶対に無い!」
お母様は笑ってるし、メイド達はニコニコ微笑んでいるし。
「公務は終わったのですか?」
「未だだ。それとジクトリクス伯爵家に数日滞在するなら俺も行く」
「え~」
「セリーナ…酷くないか?」
「伯爵家ですよ?ジュスト様が訪問すれば緊張を強いてしまいます。
それに夫人は車椅子生活ですから」
「でも離れたくない。セリーナは夏休みが終わる前に帰るじゃないか」
「仕方ないわね。国王陛下がいいと言えばいいわ。ただし王子として行くのではなく私の甥として行くのよ?」
「はい、叔母上。直ぐに許可を取ってきます!」
子供のような笑顔で走っていってしまった。
「こういうところは歳が近いと感じますね」
「貴女に頼りにしてもらいたいと背伸びしたいのよ。
それに大国の次期国王の重圧は尋常じゃないわ」
確かに。しかも自国だけではなく、先祖が周辺諸国のいくつかを敗戦国にして従属させている。
奇襲をかける国があってもおかしくない。
そんなジュスト様を留学させてしまったのは私だ。
「お母様……もしかして、ジュスト様はものすごく私のことが好きだと思いますか?」
「そうね。セリーナのことだけを強く思っているわ。
守って大事にしてくれそうだけど、彼を選ぶということは 次期王妃となることを意味するの。だから片方の愛だけでは足りないわね」
レミ様も似たようなことを言っていたことを思い出した。
その日の夜、王妃様に話を聞きに行った。
「政略結婚だもの。嫌も何もなかったわ。
王家や当主や重鎮が決めたことに従うしか道が無いもの」
「妃教育はどんな感じですか」
「基本は一緒だけど代毎に求められる内容は少し変わるわ。
陛下や皇后が何が得意・不得意かよ。
私の場合は…言っていいのかしら。
(皇后が外国語が不得意だから優先させたわね。
従属には合わせてもらうけど友好国にはそうはいかないから。
そして陛下は方向音痴なの。だから城内は表も裏も熟知しているし、国外への脱出経路も複数頭に叩き込んでいるわ)」
「すごいです」
「ジュストは全て任せられるわよ。
剣も握るし 外国語も話せるし 迷子になんてならないし 他の令嬢なんて相手にしないし。
弱点があるとしたら貴女ね セリーナ様」
「弱点?…ですか」
「貴女のことになると冷静ではいられなくなるもの。
戦うことで貴女が手に入るのなら戦争を仕掛けるだろうし、貴女が望むなら次期国王の座も捨てるわ」
私が命を絶った後もジュスト様はいつも私を想い出しているようだったとレミ様が言っていた。
毎日 窓の外を見つめながら。
「ジュスト様がよく分かりません。
そんなに思ってもらえるようなことはしていませんし、側にもいませんでした。
なのに、あの手紙だけで留学してくださって…」
「恋は理屈じゃないこともあるのよ。
ジュストが普通の貴族で同胞なら求婚を受けてくれた?」
「……受けたと思います」
「うふふ。そう。ありがとう」
【 王妃マルスリーヌの視点 】
姫様が退室した後 ジュストを呼んだ。
「母上、あまりお時間をとれませんが」
「そんなことを言っていいの?貴方が喜ぶ話だったのに。忙しいならいいわ」
「明日 叔母上とセリーナの同行の準備がありまして。
話とは何ですか」
「知りたい?」
「はい」
「うふふっ」
「母上……」
「分かったわよ。
セリーナ様がね、私が妃になる前のことを尋ねてきたわ」
「セリーナが?」
「妃に選ばれてどう思ったかって」
「……それで何とお返事を?」
「そのままよ。命じられて嫁いだだけだもの。
妃教育がどんなものかも聞いてきたわ」
「本当ですか!?」
「ええ。
貴方が出来る子だから心配いらないと言っておいたわ」
「セリーナは何て?」
「彼女は貴方に愛される理由が分からないと言っていたわ。
それとね……」
ジュストは期待と不安を入り混じらせていた。
「母上!教えてください!」
「もしジュストが普通の貴族で同胞なら求婚を受けたか聞いたら“受けたと思います”って答えたわよ」
「!!」
歓喜の顔になったジュストに釘を刺した。
「駄目よ。セリーナ様を守るなら普通の貴族では駄目だし、カークファルドを守にはグリーンデサントの力は必要だわ」
「……」
「セリーナ様の不安を取り除く方法を考えなさい」
「はい」
ジュストが退室した後に陛下にも報告をした。
バルコニーで朝食をとり、グリーンデサントの本を読み、昼食をお祖母様ととり、庭園を散策した後はガゼボでティータイム。その後はセリーナの希望の過ごし方をして王族の夕食。
そして湯浴みをして話をしながら就寝。
湯浴みと着替え以外はずっとジュストが付き添っていた。
普通食をしっかり食べることを条件に、ジュストの給餌は終了した。
「甲斐甲斐しいこと。
彼みたいな人がずっと一途に寄り添ってくれたら嬉しいわね」
「ジュスト様のことですか?
でも男の人は変わりますから あてにしたくないですね。
私はシモン兄様と結婚したいです。
お兄様ほど信用できる人はいませんから。
お母様、私が捨て子とか貰われっ子とかいう可能性はありませんか?」
「あるわけないでしょう。第一 シモンには婚約者がいるのよ?」
「妾でもいいです。仲良くします」
「困ったわねぇ」
「ジクトリクス伯爵家の納品は明日ですね。
他に行きたいところはありませんか?」
「招待状は届いているのだけど気乗りしなくて」
「そうなのですね。ではジクトリクス伯爵邸で少しゆっくり滞在するのもいいですね」
そんな話をしていた数十分後、息を切らせてジュスト様がやってきた。
「俺はシモン従兄上と同じで一途だし、他の女に気持ちを寄せることはないぞ!」
「どうしたのですか?急に」
「俺は浮気などしない!」
「…そうは思っても 出会ってしまえば気が変わるかもしれませんよ」
「絶対に無い!」
お母様は笑ってるし、メイド達はニコニコ微笑んでいるし。
「公務は終わったのですか?」
「未だだ。それとジクトリクス伯爵家に数日滞在するなら俺も行く」
「え~」
「セリーナ…酷くないか?」
「伯爵家ですよ?ジュスト様が訪問すれば緊張を強いてしまいます。
それに夫人は車椅子生活ですから」
「でも離れたくない。セリーナは夏休みが終わる前に帰るじゃないか」
「仕方ないわね。国王陛下がいいと言えばいいわ。ただし王子として行くのではなく私の甥として行くのよ?」
「はい、叔母上。直ぐに許可を取ってきます!」
子供のような笑顔で走っていってしまった。
「こういうところは歳が近いと感じますね」
「貴女に頼りにしてもらいたいと背伸びしたいのよ。
それに大国の次期国王の重圧は尋常じゃないわ」
確かに。しかも自国だけではなく、先祖が周辺諸国のいくつかを敗戦国にして従属させている。
奇襲をかける国があってもおかしくない。
そんなジュスト様を留学させてしまったのは私だ。
「お母様……もしかして、ジュスト様はものすごく私のことが好きだと思いますか?」
「そうね。セリーナのことだけを強く思っているわ。
守って大事にしてくれそうだけど、彼を選ぶということは 次期王妃となることを意味するの。だから片方の愛だけでは足りないわね」
レミ様も似たようなことを言っていたことを思い出した。
その日の夜、王妃様に話を聞きに行った。
「政略結婚だもの。嫌も何もなかったわ。
王家や当主や重鎮が決めたことに従うしか道が無いもの」
「妃教育はどんな感じですか」
「基本は一緒だけど代毎に求められる内容は少し変わるわ。
陛下や皇后が何が得意・不得意かよ。
私の場合は…言っていいのかしら。
(皇后が外国語が不得意だから優先させたわね。
従属には合わせてもらうけど友好国にはそうはいかないから。
そして陛下は方向音痴なの。だから城内は表も裏も熟知しているし、国外への脱出経路も複数頭に叩き込んでいるわ)」
「すごいです」
「ジュストは全て任せられるわよ。
剣も握るし 外国語も話せるし 迷子になんてならないし 他の令嬢なんて相手にしないし。
弱点があるとしたら貴女ね セリーナ様」
「弱点?…ですか」
「貴女のことになると冷静ではいられなくなるもの。
戦うことで貴女が手に入るのなら戦争を仕掛けるだろうし、貴女が望むなら次期国王の座も捨てるわ」
私が命を絶った後もジュスト様はいつも私を想い出しているようだったとレミ様が言っていた。
毎日 窓の外を見つめながら。
「ジュスト様がよく分かりません。
そんなに思ってもらえるようなことはしていませんし、側にもいませんでした。
なのに、あの手紙だけで留学してくださって…」
「恋は理屈じゃないこともあるのよ。
ジュストが普通の貴族で同胞なら求婚を受けてくれた?」
「……受けたと思います」
「うふふ。そう。ありがとう」
【 王妃マルスリーヌの視点 】
姫様が退室した後 ジュストを呼んだ。
「母上、あまりお時間をとれませんが」
「そんなことを言っていいの?貴方が喜ぶ話だったのに。忙しいならいいわ」
「明日 叔母上とセリーナの同行の準備がありまして。
話とは何ですか」
「知りたい?」
「はい」
「うふふっ」
「母上……」
「分かったわよ。
セリーナ様がね、私が妃になる前のことを尋ねてきたわ」
「セリーナが?」
「妃に選ばれてどう思ったかって」
「……それで何とお返事を?」
「そのままよ。命じられて嫁いだだけだもの。
妃教育がどんなものかも聞いてきたわ」
「本当ですか!?」
「ええ。
貴方が出来る子だから心配いらないと言っておいたわ」
「セリーナは何て?」
「彼女は貴方に愛される理由が分からないと言っていたわ。
それとね……」
ジュストは期待と不安を入り混じらせていた。
「母上!教えてください!」
「もしジュストが普通の貴族で同胞なら求婚を受けたか聞いたら“受けたと思います”って答えたわよ」
「!!」
歓喜の顔になったジュストに釘を刺した。
「駄目よ。セリーナ様を守るなら普通の貴族では駄目だし、カークファルドを守にはグリーンデサントの力は必要だわ」
「……」
「セリーナ様の不安を取り除く方法を考えなさい」
「はい」
ジュストが退室した後に陛下にも報告をした。
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