【完結】冷遇された翡翠の令嬢は二度と貴方と婚約致しません!

ユユ

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ジュストの献身

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誰かが手を握っている。
お母様の手じゃない。

「おに…い…さま」

「セリーナ、水を飲もうか」

「イヤ…」

「飲まないと駄目なんだ」

唇に柔らかい何かが触れて液体が流れ込んできた。

「ゴクッ」

「いい子だね」




額が時々冷たい。

《タオルが直ぐ温かくなってしまう。氷にしよう》

小さく聞こえてきた言葉に拒否感が出た。

「こおり…イヤ」

「セリーナ、熱が高いんだ。ごめんね
間をとって氷水のタオルにするからね」




熱くなったり寒くなったり

「寒い…」

ギシッ

息苦しいけど温かい。




それを何度か繰り返し

「セリーナ」

「ジュスト様?」

「薬湯を持ってきてくれ」

「かしこまりました」

「ここは?」

「国境の町でグリーンデサント側だよ。
セリーナは高熱を出して意識を失ったんだ」

「ごめんなさい」

「謝らなくていい。叔母上は宿で待機してもらってるよ。さっきまでいたけど、2人で倒れられたら困るからね」

「どのくらい経ったのですか」

「2日半かな」

「そんなに……」

「薬湯をお持ちしました」

「セリーナ。ちょっと苦いけど熱冷ましだよ」

「ありがとうございます」

苦いけど飲み慣れた薬湯を一気に飲んだ。

「いい子だね」

「……」

「熱がだいぶ下がってきたみたいだね」

「明日移動しましょう」

「まだ早いな。食事がとれないと。
何が食べたい?」

「食べたくないです」

「食べないと移動できないよ」

「出発します」

「困ったな」

ジュスト様はそう言いながら握っている手の甲を指で撫でていた。

  


翌日には熱が下がりスープを飲んだ。

「お風呂に入りたいです」

「早い」

「おふろ……」

「殿下、助手が湯浴みを手伝います」

「よろしく頼む」




お母様が私の髪を解かしながら微笑む。

「甘えん坊に戻っちゃって」

「熱が出たら甘えていいってお兄様が言っていました」

「貴女は熱が出なくてもシモンにベッタリ甘えてるじゃないの」

「普通の時と熱の時では違います。
お母様こそお父様に甘えてるじゃないですか」

「なっ!セリーナ!」

「いいじゃないですか。叔父上と叔母上の仲の良さがあるから優しい兄妹が育ったのです。
歪み合う兄妹でなくていいじゃないですか」

「そうですよ お母様」

「セリーナ、思いっきり甘えていいんだぞ」

「ありがとうございます」




国境の町で休むこと4日。やっと王城に向けて出発した。

「今回は馬車三台で来たのだな」

「母用と私用と納品用です。
母と別行動ができます」

「その時は私が連れて行くよ」

「ジュスト様はお仕事があるじゃないですか」

「いいよ、誰かにやらせれば」

「それ国王陛下おじさまのことですか」

「含んでるな」

「益々ダメですよ」

「いいんだよ。姪が喜べば父上も喜ぶから。

納品用ってジクトリクス伯爵で合ってる?」

「はい。夫人のための特注品です」

「納品早くないか?」

「私の番を譲ったのです」

「幸運な夫人だ」



王城に到着すると直ぐに貴賓室に収監された。

「ご挨拶を」

「セリーナは療養が必要だから省く。
今回は叔母上とは部屋を分けたからね」

「はい」

「宮廷医が来るから着替えようか」

メイドを入れると着替えを手伝ってくれた。
荷解きをしているメイドとお茶を用意するメイドと合わせて5人もいた。


寝巻きに着替え終わりベッドの住人に。

少し待つと女医が入室した。

「カプデリオ医師だ。彼女は妃や王女を専門に治療をするんだ」

カプデリオ医師は、国境の町の医師からの手紙を読んだ後に、いくつかの質問をして診察をした。

「お辛い症状はございますか」

「辛いと言うまでではありませんが、体が怠いのと あまり食欲がありません」

「胃に不快感はございますか」

「ありません」

「飲み込み辛いとかは」

「多分ありません。単に食べたくないだけです」

「食べれそうなものがあれば仰ってください。食べないという選択はできません。リクエストが無ければ消化に良さそうなものをお出しします」

「フィリシア叔母上に聞いてみます。よく熱を出したなら対策があるだろうから」


ジュストはフィリシアに聞きに行ったが、“あの子はね、シモンが食べさせれば なんでも食べるのよ”と言われたので、

「じ、自分で食べます」

「聞いたよ。シモン従兄上が食べさせれば食べるって」

「あれはっ」

「ほら、口を開けて」

「むぐっ」




前回の滞在で ジュストにとってセリーナが特別だということは分かっていた。

今回、体調を崩したセリーナのために国境の町に4日も滞在し、ジュスト直々に診療所に泊まり込み、ずっと付き添い 額に乗せる布を変え、水や薬を口移しで飲ませ、寒いといえば一緒のベッドに入り抱きしめて温めた。

その後の移動もジュストが体調の管理をした。

城に着くと抱き上げて貴賓室まで運び、朝から寝るまで世話をして、夜中も一度から二度 様子を見に行くジュストに城中のみんなが驚きを隠せなかった。

同行した兵士達が語り、城で目撃したメイド達が語り、城内で2人は認知された。

ジュストがずっと婚約者を決めずにいたために心配をしていた者達の安堵と、溺愛ぶりを微笑ましく思う反面、恐怖も感じていた。

ジュストは容赦の無いところがあった。 
王族を侮辱するような噂話をする使用人は鞭打ちにして王都から追放した。

王族に夜這いをかけようとすれば兵士に命じて全裸にさせて、城内を引き摺り回し城門から放り出させた。

女の胸などを妄りに触れば指を潰した。
女を犯しても男を犯しても、襲った男を去勢した。

部下や後輩に仕事を押し付けて楽をする者は、王都内の清掃員に配属替えをした。

彼の厳しさは平民だけではなく、貴族籍に身を置いている使用人にも平等に罰した。
文句を言う家門が現れると、“寧ろ教育されているはずの貴族の方が罰が重くあるべきだ” と追加制裁を行った。

使用人に限ったことではない。
パーティや茶会、何かしらの理由で登城している貴族にも厳しく対応をする。

基本的には言い寄る令嬢の相手はせず、度が過ぎると会場から追い出させた。

虐めをしている貴族がいると終了するまで会場内で正座をさせて見せしめにした。

そんなジュストを知っているから、溺愛するセリーナに何かあれば、どんな目に遭わされるのか分からない。

セリーナの担当になったメイドや兵士は精鋭から選出された。


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