82 / 90
2度目
求婚
しおりを挟む
お母様達は昔話に花を咲かせていた。
「セリーナ姫。屋敷をまわってみないか?
俺も久しぶりだから見て回りたい」
「でも…」
「どうぞ行っていらして」
公爵夫妻が促してくれた。
「先ずは最上階から」
ルーフバルコニーのようなところに出た。
「すごい眺めだろう。王城さえ丸見えだ」
「グリーンデサントの頂点にいる様ですね」
「ある意味正解だな。王族という言葉と王族を守る法律が無ければリッツ公爵家が一番だ。
この国でも周辺諸国でも。
俺は媚びられたりするのが嫌で領地に引っ込み社交はしなかった。剣術中心の生活を送った。
そして入学は遥か遠いミーレスという王国のフォース王立学校という恐ろしく厳しい騎士学校へ留学した。実力主義で時には死者まででる過酷な授業をするんだ。
入試で大半を篩い落とし、授業で篩い落とし、進級出来る者がどんどん減る。
仲良くなった男は別の国の王族だったが急流に流されて死んだ。
死んでも文句言わないと親に署名させるから文句の言いようもない。徴兵しているわけでもなく自ら希望して入学しているからな。
卒業できたのは俺を含めて一握り。
何処へでも就職出来る」
「怖くはなかったのですか?」
「寒いか?おいで」
上着の中に私を入れて抱き寄せた。
「あたたかい」
「……若気の至りだな。恐怖よりも平等が嬉しかった。リッツ家の三男の俺に媚びる者はいない。
王族から平民まで皆平等。あるのは武力の優劣だけだ。平民が王族にタメ口をきいて肩を組むんだぞ?
ずっとあそこにいたかった。
グリーンデサントとその周辺諸国の中でリッツ家より優れる家門は無い。だからせめてと、留学から戻るとリッツ公爵家から籍を抜いた。
言い寄る貴族令嬢はほとんど居なくなった。
一夜のお遊びでなら声がかかるがな」
「私はカークファルドを守りたいんです。
カークファルドと兄を。両親を。
セントフィールドの西側は近い将来 旱魃と長雨による水害が連続で襲い過去にない窮地に立たされます。それを防ぐことは出来ませんが対応できるようにしているのです。
運良く自国の王族と仲良くなれて、災害時の便乗値上げの対策をとってもらえました。
そして元々やっていた馬車事業に力を入れました。
その収益で領内の整備や強化をしました。
水没しやすい場所に住んでいる領民は移したりもしました。
今は旱魃時と水害時の其々で育てることができる作物を調達研究し、育てています。
今回 備蓄庫や家畜小屋に施す湿気対策の土をリッツ公爵家の温情で教えていただけるそうで感謝しております」
「……神託か?」
「夢です。とても夢とは思えない夢で地獄を見ました。カークファルドを含む西側は困窮し、私はカークファルドのためと安易な考えで 家族の反対を押し切り政略結婚を決めてしまいました。
結局 救うどころか兄を困らせた挙句、自害しました。あのままでも死んだのでしょうけど。
どうやら夫の愛人に毒を盛られていたらしいのです。跡継ぎを産まないよう害のある避妊薬を」
「そうか」
「翡翠の瞳など無力で、どれほど自分を嫌悪したことか。
ですがリッツ公爵夫妻のお言葉を聞いて救われました。“神の御業を求めてはならない。努力した者が救うのだ”と教えられて重荷が取れました」
「翡翠の瞳を生まれ持っただけで重圧がかかるのだな」
「セントフィールドだから翡翠の影響は余りありません。これがグリーンデサントだったら無能な翡翠と言われて吊し上げられたでしょう」
「セリーナ。そんなものは壊してしまえ。
10代の令嬢に背負わせるものではない。
“お前達でなんとかしろ”と唾でも吐いてやれ」
「ふふっ お兄様みたい」
「兄君が?」
「すごく温和で優しくて妹想いの素敵な兄ですが、いざとなると私のために戦ってくれる人です。
どんなものよりも私をとってくださいます」
「俺の妻になれば そうしてやれるぞ」
「え?……そんなつもりで言ったわけでは。
励まし方が似てるなって、」
「もう一度言う。俺の妻になればセリーナの憂いを取り除いてやる」
「政略結婚ということですか」
「……そうではない。
だが、ジュスト殿下が好きなんだろう?」
「従兄妹として好きだったのに…」
「殿下が男を意識させたのだな」
「……」
「君は俺の持つ貴族令嬢のイメージを払拭した女だ。
平民の護衛騎士として紹介された俺に対し、丁寧なカーテシーで挨拶をしてくれた。王族の血を引いた貴族令嬢がだ。
身分にではなく職に敬意を払ってくれた。
次期国王の溺愛する令嬢と聞いて警戒していたが、殿下は見る目を持っていたようだ。
それに優雅に暮らすことしか考えない令嬢達とは違い、領地や領民のために学生ながらに働いていると聞いた。過労で倒れるほどに疲れた体でもなお、仕事をしようとする。
強い志を持つ一方で放っておけない弱さを持っている。
あんな女なんかひっぱたき返して髪を掴んで引きずり回せ」
「え?」
「トイレでセリーナに平手打ちした女のことだ」
「綺麗な方でした。財力もあってグリーンデサントの侯爵令嬢で」
「あれは綺麗とは呼ばない。表面の金だけ磨いても中身が腐った木なら価値はない。
セリーナの表面は金で中身はダイヤか白金だろう」
「止めてください。そんな価値はありません」
「セリーナが自信が無くとも 周りの者が価値を見たんだ。俺にはセリーナが光り輝いて見える。
求める物がちがうのだから価値観は其々だ。
例えば飢えて死にそうな者に必要なのは食糧であって美女ではない。
子を産ませたいのに女ではなく馬を持ってこられても意味はない。
俺はセリーナのような女が欲しい。他の女では意味がない」
「……」
「一先ずピビッチ侯爵家の次男にはその気は無いと明確に示せ。
狸と狐と蛇と蜘蛛の化身だと思った方がいい」
「何ですか、その化け物は」
「確かに」
「セリーナ姫。屋敷をまわってみないか?
俺も久しぶりだから見て回りたい」
「でも…」
「どうぞ行っていらして」
公爵夫妻が促してくれた。
「先ずは最上階から」
ルーフバルコニーのようなところに出た。
「すごい眺めだろう。王城さえ丸見えだ」
「グリーンデサントの頂点にいる様ですね」
「ある意味正解だな。王族という言葉と王族を守る法律が無ければリッツ公爵家が一番だ。
この国でも周辺諸国でも。
俺は媚びられたりするのが嫌で領地に引っ込み社交はしなかった。剣術中心の生活を送った。
そして入学は遥か遠いミーレスという王国のフォース王立学校という恐ろしく厳しい騎士学校へ留学した。実力主義で時には死者まででる過酷な授業をするんだ。
入試で大半を篩い落とし、授業で篩い落とし、進級出来る者がどんどん減る。
仲良くなった男は別の国の王族だったが急流に流されて死んだ。
死んでも文句言わないと親に署名させるから文句の言いようもない。徴兵しているわけでもなく自ら希望して入学しているからな。
卒業できたのは俺を含めて一握り。
何処へでも就職出来る」
「怖くはなかったのですか?」
「寒いか?おいで」
上着の中に私を入れて抱き寄せた。
「あたたかい」
「……若気の至りだな。恐怖よりも平等が嬉しかった。リッツ家の三男の俺に媚びる者はいない。
王族から平民まで皆平等。あるのは武力の優劣だけだ。平民が王族にタメ口をきいて肩を組むんだぞ?
ずっとあそこにいたかった。
グリーンデサントとその周辺諸国の中でリッツ家より優れる家門は無い。だからせめてと、留学から戻るとリッツ公爵家から籍を抜いた。
言い寄る貴族令嬢はほとんど居なくなった。
一夜のお遊びでなら声がかかるがな」
「私はカークファルドを守りたいんです。
カークファルドと兄を。両親を。
セントフィールドの西側は近い将来 旱魃と長雨による水害が連続で襲い過去にない窮地に立たされます。それを防ぐことは出来ませんが対応できるようにしているのです。
運良く自国の王族と仲良くなれて、災害時の便乗値上げの対策をとってもらえました。
そして元々やっていた馬車事業に力を入れました。
その収益で領内の整備や強化をしました。
水没しやすい場所に住んでいる領民は移したりもしました。
今は旱魃時と水害時の其々で育てることができる作物を調達研究し、育てています。
今回 備蓄庫や家畜小屋に施す湿気対策の土をリッツ公爵家の温情で教えていただけるそうで感謝しております」
「……神託か?」
「夢です。とても夢とは思えない夢で地獄を見ました。カークファルドを含む西側は困窮し、私はカークファルドのためと安易な考えで 家族の反対を押し切り政略結婚を決めてしまいました。
結局 救うどころか兄を困らせた挙句、自害しました。あのままでも死んだのでしょうけど。
どうやら夫の愛人に毒を盛られていたらしいのです。跡継ぎを産まないよう害のある避妊薬を」
「そうか」
「翡翠の瞳など無力で、どれほど自分を嫌悪したことか。
ですがリッツ公爵夫妻のお言葉を聞いて救われました。“神の御業を求めてはならない。努力した者が救うのだ”と教えられて重荷が取れました」
「翡翠の瞳を生まれ持っただけで重圧がかかるのだな」
「セントフィールドだから翡翠の影響は余りありません。これがグリーンデサントだったら無能な翡翠と言われて吊し上げられたでしょう」
「セリーナ。そんなものは壊してしまえ。
10代の令嬢に背負わせるものではない。
“お前達でなんとかしろ”と唾でも吐いてやれ」
「ふふっ お兄様みたい」
「兄君が?」
「すごく温和で優しくて妹想いの素敵な兄ですが、いざとなると私のために戦ってくれる人です。
どんなものよりも私をとってくださいます」
「俺の妻になれば そうしてやれるぞ」
「え?……そんなつもりで言ったわけでは。
励まし方が似てるなって、」
「もう一度言う。俺の妻になればセリーナの憂いを取り除いてやる」
「政略結婚ということですか」
「……そうではない。
だが、ジュスト殿下が好きなんだろう?」
「従兄妹として好きだったのに…」
「殿下が男を意識させたのだな」
「……」
「君は俺の持つ貴族令嬢のイメージを払拭した女だ。
平民の護衛騎士として紹介された俺に対し、丁寧なカーテシーで挨拶をしてくれた。王族の血を引いた貴族令嬢がだ。
身分にではなく職に敬意を払ってくれた。
次期国王の溺愛する令嬢と聞いて警戒していたが、殿下は見る目を持っていたようだ。
それに優雅に暮らすことしか考えない令嬢達とは違い、領地や領民のために学生ながらに働いていると聞いた。過労で倒れるほどに疲れた体でもなお、仕事をしようとする。
強い志を持つ一方で放っておけない弱さを持っている。
あんな女なんかひっぱたき返して髪を掴んで引きずり回せ」
「え?」
「トイレでセリーナに平手打ちした女のことだ」
「綺麗な方でした。財力もあってグリーンデサントの侯爵令嬢で」
「あれは綺麗とは呼ばない。表面の金だけ磨いても中身が腐った木なら価値はない。
セリーナの表面は金で中身はダイヤか白金だろう」
「止めてください。そんな価値はありません」
「セリーナが自信が無くとも 周りの者が価値を見たんだ。俺にはセリーナが光り輝いて見える。
求める物がちがうのだから価値観は其々だ。
例えば飢えて死にそうな者に必要なのは食糧であって美女ではない。
子を産ませたいのに女ではなく馬を持ってこられても意味はない。
俺はセリーナのような女が欲しい。他の女では意味がない」
「……」
「一先ずピビッチ侯爵家の次男にはその気は無いと明確に示せ。
狸と狐と蛇と蜘蛛の化身だと思った方がいい」
「何ですか、その化け物は」
「確かに」
486
あなたにおすすめの小説
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
【完結】私が誰だか、分かってますか?
美麗
恋愛
アスターテ皇国
時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった
出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。
皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。
そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。
以降の子は妾妃との娘のみであった。
表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。
ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。
残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。
また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。
そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか…
17話完結予定です。
完結まで書き終わっております。
よろしくお願いいたします。
【完結】これをもちまして、終了とさせていただきます
楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。
伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。
そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。
「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」
神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。
「お話はもうよろしいかしら?」
王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。
※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
虐げられた令嬢は、耐える必要がなくなりました
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私アニカは、妹と違い婚約者がいなかった。
妹レモノは侯爵令息との婚約が決まり、私を見下すようになる。
その後……私はレモノの嘘によって、家族から虐げられていた。
家族の命令で外に出ることとなり、私は公爵令息のジェイドと偶然出会う。
ジェイドは私を心配して、守るから耐える必要はないと言ってくれる。
耐える必要がなくなった私は、家族に反撃します。
結婚十年目の夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。彼は「送り間違えた」というけれど、それはそれで問題なのでは?
ぽんた
恋愛
レミ・マカリスター侯爵夫人は、夫と政略結婚をして十年目。侯爵夫人として、義父母の介護や領地経営その他もろもろを完ぺきにこなしている。そんなある日、王都に住む夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。義弟を通じ、夫を追求するも夫は「送り間違えた。ほんとうは金を送れというメモを送りたかった」という。レミは、心から思った。「それはそれで問題なのでは?」、と。そして、彼女の夫にたいするざまぁがはじまる。
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる