【完結】悪魔に祈るとき

ユユ

文字の大きさ
15 / 100

学園初日

しおりを挟む
私はひとつ策を打っていた。
入学案内に従ってクラスに向かう。
Dクラス。最下位クラスだ。そう。私は手を抜いた。
ヘンリー王子殿下もカシャ公爵令息も団長の子息も大臣の子息もコーネリア様も、この最下位クラスに来るはずがないと想定したからだ。


先生がすぐに入ってきた。

「私はモイーズ・アンドレ。専攻は馬術と剣術だ。
1年間、このクラスで担任を務める。

このクラスにいる者は気を引き締めて欲しい。進級できない者が数名出て来るだろう。
我が校は傷病や、当主である親に何かあり代理を務めなければならなかった時だけに留年が許される。

傷病による場合は学園で用意した医師の診察を受けなければならない。
例えば片腕を骨折しても通えるが、両腕なら通えない。病も軽度なら認めないし、重度なら逆に見込み無しということになる。

素行不良については入学前に提出した誓約書の通り。退学も停学も王族から平民まで適用される。

不適切な男女間の関わりが発生した場合も厳しく処罰する。特に婚約者持ちは厳しくするぞ。そして婚約者持ち相手に不適切な関わりを持った相手も同罪だ。

だから最初に確認するように。相手に婚約者がいるかどうか、全校生徒名簿で確認できるようにした。
相手がいる場合には丸が付いている。

だから知らなかった、騙されたという弁解は通じない。職員室に置いてあるから確認しに来い。
勿論、持ち出し禁止だ。

他人の物に手を触れるな。
嫌がらせをするようなバカには私が相手になろう。
このクラスで虐めのようなことは許さない。
子供だから、女だから、高位貴族だからといって手加減はしない。分かったな?」

こっ、こわい!!

「ネルハデス」

「は、はいっ!」

「怯え過ぎだ。後半は多分君には縁のない話だろう」

「え?、はい」

「さて、これから講堂に移って入学式だ。
終わったらそのまま帰っていい。
帰ってすることは、明日の授業で使う教材の準備、筆記用具、ハンカチなど必需品も忘れるなよ」

あれ? この先生、何処かで会ったような。

「ネルハデス。取り残されたぞ」

「え?」

本当だ。みんな廊下に出ちゃった。

「何か考え事か」

「先生と会ったことがあるような気がして…」

「教師のナンパは禁止だぞ」

「そ、そんなんじゃないです!本当なんです!」

「分かった、分かった。早く行け」

いや、そんなつもりでもいいかもしれない。

「先生、独身ですか?婚約者は?」

「まさか?」

「私、フリーなんです。丁度良いと思いませんか」

「バ、バカっ!止めろ!今すぐ止めろ!
俺はまだ生きていたいし、出世もしたい!」

「失礼ですよ、疫病神みたいに言わないでください。
お勧めですよ。若いし、平凡な伯爵家の平凡な娘ですから。勿論純潔ですし、浮気もしません」

「俺には妻がいる!」

「なんだ。残念」

「本当に止めてくれ」

「傷付きますよ、先生」

「そうじゃない。独身でも生徒からは困るんだ。
ほら、講堂へ向かうぞ」

「はい」

「なんで俺なんだ?」

「物言いが素敵だなと思いました」

「あんな口調は貴族令嬢が嫌がるだろう」

「はっきりしていて良いです。
浮気もしなさそうですし」

「……爵位は貰えないがな」

「別に拘りません」

「平民になっても?」

「貴族だから幸せなわけではありません」


講堂に着くと良い席が空いていた。
大柄な人の真後ろだ。これなら隠れられる。

「そこじゃ見えないだろう」

「だから此処なんです」

「寝るなよ」

「違います」




【 モイーズ・アンドレの視点 】

学園で1年生の担任になった。
名前はモイーズ・アンドレ。
本名は違う。

俺は近衛騎士団から特務部に派遣された騎士だ。
1ヶ月前に特命を受けて潜入している。
 
“リヴィア・ネルハデスを護れ”

特務隊長の予想通り、最下位クラスになっていると情報を得た。態々最下位クラスになるように手を抜く令嬢とは以前王宮で会っている。
会話を交わしたわけではない。彼女が登城した時に側にいた。

教室にいる少女は分かりやすい反応をする可愛い子だ。
思わず妻がいるなんて嘘をついてしまった。
その方が手っ取り早く済むと思ったからだが、これから隊長に報告を上げなくてはならない。

はぁ。どこまで報告したらいいのか。
でもあの子の口からバレた時が怖いしなぁ。
あと、あの話はどうしよう。


コンコンコンコン

「カルフォンが参りました」

「入れ」

「失礼します」

「座ってくれ。どうだった」

「元気にしておりました」

「会話の内容を教えてくれ」

ある程度話したところで締めくくると、

「他には無かったか」

「……妻や婚約者はいるかと尋ねられました」

「つまり?」

「妻がいると嘘をつきました」

「求めている返事はソレじゃない」

「……自分はどうかと売り込まれました」

「求婚ということか?」

「そんな大袈裟なものではありません」

「何をしたんだ?何をしたらリヴィアから求婚されるんだ」

「モロー隊長、違います!彼女は盾が欲しいだけです」

「続けてくれ」

「盾を求めに週末、茶会に行くそうです。下級貴族が中心のものだとか」

「男を漁りに?」

「ちょ、隊長、伴侶探しと言ってください」

「他には」

「以上です」

「ありがとう。部屋で休んでくれ」

「失礼します」

パタン


……やっぱり隊長は。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

死んで初めて分かったこと

ルーシャオ
恋愛
ヴィリジアの王女ロザリアは、大国アルデラ王国のエアル王子の婚約者として王城で暮らしていたが、エアル王子には罵倒され遠ざけられ続け、次第に周辺の人々も近づかなくなっていた。 しかし、エアル王子が故郷ヴィリジアを滅ぼしたことをきっかけに、ロザリアは何もかもを諦める。「殿下。あなた様との婚約は、破棄いたします」、そう宣言して、ロザリアは——。

完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう

音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。 幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。 事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。 しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。 己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。 修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

処理中です...