【完結】悪魔に祈るとき

ユユ

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1年生

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学園生活が始まった。

「ネルハデスさんは伯爵令嬢なのに話しやすいわ」

「お昼はみんなで食堂に行きましょう」

食堂に行って大丈夫なのかしら。

「イヤ?」

「上位クラスが怖くて」

「会いたくない人がいるの?」

「複数」

「分かったわ。隠してあげる」

「髪型を変えるとか」

「食事の時だけ違う色のカツラを被るとか」

「あ、俺、壁になってやるよ」

「私も壁になれそうだ」

「ありがとうございます」

「堅苦しいよ。このクラスの中でくらい楽に話そうよ」

「そうよね」

「ここは天国だわ」

「おかしなネルハデスさんね」

「リヴィアと呼んで」

「あ、俺パトリス」

「私はティエリーと呼んでくれ」

「私はマリーズよ」

「私はアデールと呼んで」

次々と出て来る名前が覚えきれない。


「選択科目は何にするの?」

パ「俺 剣術」

マ「私は刺繍よ」

ティ「私は乗馬だ」

ア「私は詩よ」

リ「私も乗馬にしようかなと」

ティ「乗れるのか?」

リ「乗ったことは無いわね」

全「……」

リ「大丈夫よ。そのために先生がいらっしゃるのだから」



そして昼食の時間。

リ「ごめんなさい」

全「気にしないで」

私が隠れて食べることができそうな席は角の暗い場所だった。

リ「みんなは陽の光の元で生きていけるのに…」

ティ「何、囚人みたいなことを言ってるんだ」

ア「そうよ」

マ「あ~。グリーンピースが…」

パ「先に寄越せ。俺が食べるから」

ティ「リヴィアは大丈夫か?」

リ「大丈夫よ」

ア「伯爵家だと嫌いな物を克服する教育がしっかりしているはずよ」

ティ「そうか」

リ「克服というか、我慢よ。顔に出さずにね」

マ「どうして?」

リ「マナー違反になりかねないし、美しくないし、好き嫌いが偏ると毒殺されやすくなってしまうわ」

マ「そうなの!?」

リ「せっかく食事で持て成してくださるのに、多少の味の好みで残すのは申し訳ないし、お皿の上にそれだけ残っていては見た目にも好まれるものではないわ。

毒味も王族だって全て出来るわけじゃないわ。毒味が全ての場所を食べていたら大変だもの。
一つの固形の料理で毒味がフォークを入れて食べたとしても、他の部分にかかっていたら?毒味は完全ではないの。確率を下げてはくれるけどね。

いくつかある料理から取り分ける場合だと、嫌いな物をいくつかの料理に混ぜて、確実に選ぶ料理に毒を混入すれば確率は高くなるし、摂取量でより重篤になるなら尚更、集中して同じ料理を食べさせることができれば致死率があがるもの。

だから好き嫌いをしない、偏った食べ方をしないことを徹底されるの」

マ「私は貴族じゃないから毒の心配はないわよね」

リ「あるわ。受け継ぐものがあったり、財産や希少な物を持っていたり、仕事のライバルや恋敵、婚約者や配偶者の不貞、恨み、妬み、巻き添い、実験と様々よ」

マ「が、頑張るわ」

リ「アレルギーや具合が悪くなるほど駄目なものは頑張らなくていいのよ?」

マ「グリーンピースはちょっと味が好きじゃないだけなの。考えてみたら死と引き換えにする程のことでもなかったわ」

リ「偉いわ」

ティ「リヴィアは毒を盛られたことがあるのか」

リ「1年以内にあったわ。病気としたくて少しずつ盛っていたらしいの。早いうちに発覚したから無事だったわ」

全「……」

リ「早く食べないと間に合わなくなるわよ」


今日は最後にホームルームの時間が取られた。

「みんな、選択科目は決まったか?
用紙を配るから書いてもらう。
その前に先に知っておきたい。
明らかに不向きなものを希望している場合は先生が説得するからな」

用紙が配られた。

「まずは刺繍希望は手を挙げて……よし。
次、詩歌は手を挙げて……よし。
次、テーブルマナー希望は手を挙げて……よし?」

なんで疑問系?

「次、ダンス希望は手を挙げて……つ、次」

なんでこっち見るの?

「剣術希望は手を挙げて……よし……
次、乗馬希望は手を挙げて………待て、ネルハデス。間違えたんだな?間違えたんだろう」

「間違えておりません」

「いや、間違えたはずだ。詩だ。詩歌だろう」

「先生、何故私だけ嫌がるのですか?
先生の平等とか公平とか何処へやったのですか」

「向き不向きがあると言っただろう。馬に乗ったことはあるのか?」

「ありません」

「止めておけ」

「先生、乗ったことがないのですから私にも先生にも向き不向きが分かるわけがありません。ここは学びの場。そして女生徒が乗馬をしてはならないという規則もありません。駄目だと仰るなら納得のいく具体的な理由を仰ってください」

「駄目な場合は単位を落とすし、落馬すれば怪我もする。蹴られたり噛まれたりもするんだぞ?」

「先生、承知しています。お祖父様みたいな心配の仕方をなさらないでください」

「どうしてもか」

「しつこいです」

どうしちゃったのかしら。

刺繍もテーブルマナーもダンスも飽きたの!前回も徹底的にやらされたんだから。詩歌は嫌だし、後は剣術か馬術だけど、剣は無理なのだから乗馬しかないのに!

「変えるとしたら剣術になります」

「俺を殺す気か」

「はい?」

「分かった、馬術だな。
よし、みんな。記入して提出してから帰ってくれ」


態と最後に提出して話しかけた。

「先生、そんなに私に教えるのが嫌ですか?」

「そうじゃない。お前に怪我をされたら困るんだ」

「それは他の生徒も同じではありませんか」

「お前は特別に怪我をしちゃ駄目なんだ!」

「遠回しの求婚ですね?」

「違う!」

「では、みなさんと同じようにしっかり教えてくださいね。ごきげんよう」

「はぁ~」



【 モイーズ・アンドレの視点 】

モロー隊長、怒るだろうな。
そう思うが報告しなければならないのが辛い。

「それで、選択科目は何にしたんだ?」

「……馬術です」

「危険だろう!」

「そう言いましたけど、不公平だと抗議されたら却下できません。馬術が駄目なら剣術にすると言い出して、意外と頑固なんですよ。隊長が説得してください」

「私が知っていることがまずおかしいだろう」

「では仕方がないです」
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