笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

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寝不足と心地良さ

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暖かい。
重苦しいのに落ち着く。

パチっ

目を開けると裸のヒューゴ様の腕を枕にしていた。彼は私のことを抱きしめて眠っている。

こんな面倒なことをしないで、歳の近い綺麗で家格の合う令嬢を相手にすればいいのに。

昨夜は衝撃過ぎてなかなか眠れなかった。

アレが一般的ならシャルル様も同じということだし、ソレを他の令嬢の中に挿れていると思ったら、モヤモヤしてしまった。
分かっていると思っていたけど甘かった。
だけど改めて現実を理解しても、悲しいという感情ではない気がする。
本当、私ったらどうしちゃったのだろう。

「ティナ…」

「……」

起きたのかと思ったら寝言だった。

「んっ」

本当に寝ている?
ヒューゴ様は腕枕をしていない方の手で、私の背中や腰やお尻を撫でている。
家族に背中をさすられるのとは違う感覚…

手は下へ伸び、お尻を掴んだまま手が止まった。
寝息なのは間違いなさそう…だけど指が少し際どい部分に近い。
 
私…もしヒューゴ様となったら…

「ん…クリスティーナ、おはよう」

「っ! お、おはようございます」

「起きていたんだ?」

「起きたばかりです」

「そう?」

「あの、そろそろ手を何とかしてもらえます?」

ねぇ?」

っ! ヒューゴ様、起きていたんだわ!!

「これで分かりましたっ、ヒューゴ様は私を騙す名人だって」

昨日のティアラのように彼の身体を突っぱねたけど全くびくともしない。

「オスのティアラもメスのティナも同じことをするな」

「なっ!」

「いいか、クリスティーナ。君は男の力には敵わない。だから絶対に男と2人きりになるな。
女の数が勝っている環境にいろ。たとえあいつが相手でもだ」

「そんなの、」

「クリスティーナ!」

「っ!」

「頼むから…お願いだから頼みを聞いてくれ」

何でそんな真剣な顔をするの。

「……はい」

「ンニャ~」

「おっ、起きたか?」

「ニャ」

「お、重い」

「クリスティーナが大好きなんだな。俺もクリスティーナが大好きなんだ。だけどこっちにおいで。クリスティーナが潰れちゃうだろう」

私の上に乗ったティアラを抱き上げたヒューゴ様はティアラの毛に顔を埋めた。

「クリスティーナが嫁に来るときは おまえも来るんだぞ?毎日魚を出してやるからな」

またそんなことを言って…

ペロっ

ティアラがヒューゴ様の顎を舐めた。

「舌がザラザラだな」

「毛繕いのためだと思います」

「なるほどな チュッ」

「!!」

ティアラを片手にヒューゴ様は早技のように私の唇にキスをした。

「毎朝したいな」

「ヒューゴ様! キャアっ!!な、何してるのですか!」

「ん? 外の様子を知りたくて」

「そうじゃなくて!」

ティアラを片手に抱いたままベッドから出て立ち上がり窓に向かって歩いたヒューゴ様は全裸だった。

「ん?」

「全裸じゃないですか!」

「俺、クリスティーナと寝るとき全裸じゃないと駄目なんだ。
天気も良いし風邪もなさそうだな。良し、今日は馬で少し出かけよう」

「羽織って!」

「仕方ないなぁ。ティアラ、ちょっと下ろすぞ」

ヒューゴ様は服を着て呼び鈴を鳴らした。

コンコンコンコン

「入ってくれ」

「失礼します。
おはようございます、公子様、お嬢様様」

「身支度を手伝ってやってくれ。
今日はクリスティーナと馬で出かける。
乗馬服はあるか?」

「ございます」

「準備しておいてくれ。あと、うちの者たちにも出掛けると伝えておいて欲しい。そうだな10時にしよう」

「かしこまりました」

パタン

「勝手に決めて」

「俺の馬に乗せてやるから」

「動物は好きでも乗馬は…」

「そうか。なら良い機会だ」

「はぁ…」

強引なんだから。
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