162 / 215
恋文
しおりを挟む
「お嬢様、お手紙が届きました」
「ありがとう」
すぐに分かった。ジオ家がいつも使う封筒に、ジオ家の蝋印。送り主は“君のヒューゴより”と書いてある。
中を開けると建築部分は完成して内装の仕上げの段階で、同時にサブマ草も進めていると書いてある。
その後にはいかに淋しく思っているか、どれだけ会いたいかが書かれていた。
そしてお父様と仲良く頑張っているみたい。
“義父上は厳しく頼りになる方だね。義父上の合格をもらっている義兄上もすごい人だと思うよ”
私と違ってお兄様は幼い頃から後継者教育を受けていた。歳が離れていなければ自由に暮らしている私なんて恨まれていたかもしれない。
お返事にジョアンさんの絵のことを詳しく書いた。もしかしたらジオ領で絵が描けるかもしれないもの。
昼にはアフレックとサリーが来て食事をしながら話をした。
「え?サリーは行ったのか?」
「はい。絵の中の何かをなかなか見つけられなくて、あまりに1点目から進めないことを不憫に思ったのか係の方が教えてくださいましたわ」
なるほどね。流れてくれないと困っちゃうものね。
「クリスティーナが関わっていると知っていたら行ったのに」
「好みがあるからそういう知らせ方はしなかったの。私のお店に告知を貼り出して宣伝したくらいかしら」
「サリーはどうやって知ったんだ?」
「クリスティーナのお店に行った友人が誘ってくださいましたの」
「もうやってないのか?」
「そうなの。元々の別の展示の予定があって、そちらを優先させるから一旦終わりにしたの」
「残念だな」
「まだ未定だけどまた機会はあるわ」
「そうか。そのときは教えて欲しいな」
「では主催者のテイラーさんに伝えておくわね。あれはセルヴィーとしては関与のないことだから」
「だったら何故クリスティーナの店で宣伝を?」
事情を説明した。
「素敵!あの絵の場所にデートに行ったのね!」
「ええ、楽しかったわ」
「クリスティーナは婚約者とは距離を置いていたように思えていたんだけど」
「飼い猫が亡くなって落ち込んでいたから気を遣ってくれたの。シャルル様も動物が好きみたい」
「クリスティーナはこのまま彼と結婚するのか?」
「契約だもの、多分そうなると思う」
「乗り気ではないんだね?」
「あれだけ酷い扱いをされていたし、ヒューゴ様の存在もあるし。でも最近は好きになったときの彼が垣間見えて…自分の気持ちがはっきりしないの」
「式の日程は決まってるの?」
「父が長期不在だから先延ばしにしているわ。このままだと来年中には嫁ぐことになりそう」
「もし、クリスティーナが断りたいのなら、」
「アフレック様」
「何?」
「悩んでいるクリスティーナにあまりあれこれ言うのは良くありません。私達が知らないいろいろな事があるはずです。それを踏まえて悩んでいるのですから見守りましょう。クリスティーナ自ら話題にしたときか助けを求めたときに側にいればいいのです。第三者のもしは今は必要ありませんわ」
「だけど」
「アフレック、心配してくれてありがとう。だけどサリーの意見に賛成だわ。政略結婚の色が濃くなってしまったし、父を交えないと何も決められないの。後悔しても自分で決めて後悔する方がいいわ」
「分かった」
「ごめんね」
「クリスティーナが謝ることはないよ」
それより2人の式はいつなの?と聞きたかったけど、この2人の微妙な雰囲気に立ち入る勇気はなかった。
2日後。
遅くなっちゃった。エルザったら結婚してからちょっと執着が出てきてしまった。しかも私なんかに。殿下は王子の微笑みを苦笑いに変えてしまったし。まだ帰らないでと言われること4回目で逃れてきた。一度屋敷に戻り慌てて着替えてタリー伯爵邸に向かった。もうパーティが始まって1時間が経とうとしている。
到着して会場に案内してもらうとタリー夫人が迎えてくださった。
「まあ、セルヴィー嬢に来ていただけて嬉しいですわ」
「遅れまして大変失礼をいたしました」
タリー伯爵夫人とは昔お会いしたことがあった。
「王子妃様に呼ばれては仕方ありませんわ。シャルル様はあちらの休憩室で友人の令息方と集まっていますわ」
「声をかけてみます」
「案内を」
「1人で大丈夫ですわ」
「あ、クリスティーナ」
「サリー」
「どちらへ?」
「休憩室にシャルル様がいらっしゃるみたいなの」
「ご一緒するわ」
夫人と別れてサリーと休憩室へ向かった。廊下の先のドアの開いてある部屋だろう、明かりと声が漏れていた。
ドアのすぐ側まで来るとシャルル様が親しくしていた学友2人の姿が見えた。他にも声がする。
「そろそろ夜会に来いよ。もうヘマしなきゃいいだろう?」
「そうだよ。新顔の令嬢も増えてるから今のうちだぞ」
はぁ…まったく成長しないわね。でも挨拶だけしておかないと。
「で、どうするんだ?婚約者とは」
「どうするって?」
私の名が出たのでピタッと足を止めた。
「ありがとう」
すぐに分かった。ジオ家がいつも使う封筒に、ジオ家の蝋印。送り主は“君のヒューゴより”と書いてある。
中を開けると建築部分は完成して内装の仕上げの段階で、同時にサブマ草も進めていると書いてある。
その後にはいかに淋しく思っているか、どれだけ会いたいかが書かれていた。
そしてお父様と仲良く頑張っているみたい。
“義父上は厳しく頼りになる方だね。義父上の合格をもらっている義兄上もすごい人だと思うよ”
私と違ってお兄様は幼い頃から後継者教育を受けていた。歳が離れていなければ自由に暮らしている私なんて恨まれていたかもしれない。
お返事にジョアンさんの絵のことを詳しく書いた。もしかしたらジオ領で絵が描けるかもしれないもの。
昼にはアフレックとサリーが来て食事をしながら話をした。
「え?サリーは行ったのか?」
「はい。絵の中の何かをなかなか見つけられなくて、あまりに1点目から進めないことを不憫に思ったのか係の方が教えてくださいましたわ」
なるほどね。流れてくれないと困っちゃうものね。
「クリスティーナが関わっていると知っていたら行ったのに」
「好みがあるからそういう知らせ方はしなかったの。私のお店に告知を貼り出して宣伝したくらいかしら」
「サリーはどうやって知ったんだ?」
「クリスティーナのお店に行った友人が誘ってくださいましたの」
「もうやってないのか?」
「そうなの。元々の別の展示の予定があって、そちらを優先させるから一旦終わりにしたの」
「残念だな」
「まだ未定だけどまた機会はあるわ」
「そうか。そのときは教えて欲しいな」
「では主催者のテイラーさんに伝えておくわね。あれはセルヴィーとしては関与のないことだから」
「だったら何故クリスティーナの店で宣伝を?」
事情を説明した。
「素敵!あの絵の場所にデートに行ったのね!」
「ええ、楽しかったわ」
「クリスティーナは婚約者とは距離を置いていたように思えていたんだけど」
「飼い猫が亡くなって落ち込んでいたから気を遣ってくれたの。シャルル様も動物が好きみたい」
「クリスティーナはこのまま彼と結婚するのか?」
「契約だもの、多分そうなると思う」
「乗り気ではないんだね?」
「あれだけ酷い扱いをされていたし、ヒューゴ様の存在もあるし。でも最近は好きになったときの彼が垣間見えて…自分の気持ちがはっきりしないの」
「式の日程は決まってるの?」
「父が長期不在だから先延ばしにしているわ。このままだと来年中には嫁ぐことになりそう」
「もし、クリスティーナが断りたいのなら、」
「アフレック様」
「何?」
「悩んでいるクリスティーナにあまりあれこれ言うのは良くありません。私達が知らないいろいろな事があるはずです。それを踏まえて悩んでいるのですから見守りましょう。クリスティーナ自ら話題にしたときか助けを求めたときに側にいればいいのです。第三者のもしは今は必要ありませんわ」
「だけど」
「アフレック、心配してくれてありがとう。だけどサリーの意見に賛成だわ。政略結婚の色が濃くなってしまったし、父を交えないと何も決められないの。後悔しても自分で決めて後悔する方がいいわ」
「分かった」
「ごめんね」
「クリスティーナが謝ることはないよ」
それより2人の式はいつなの?と聞きたかったけど、この2人の微妙な雰囲気に立ち入る勇気はなかった。
2日後。
遅くなっちゃった。エルザったら結婚してからちょっと執着が出てきてしまった。しかも私なんかに。殿下は王子の微笑みを苦笑いに変えてしまったし。まだ帰らないでと言われること4回目で逃れてきた。一度屋敷に戻り慌てて着替えてタリー伯爵邸に向かった。もうパーティが始まって1時間が経とうとしている。
到着して会場に案内してもらうとタリー夫人が迎えてくださった。
「まあ、セルヴィー嬢に来ていただけて嬉しいですわ」
「遅れまして大変失礼をいたしました」
タリー伯爵夫人とは昔お会いしたことがあった。
「王子妃様に呼ばれては仕方ありませんわ。シャルル様はあちらの休憩室で友人の令息方と集まっていますわ」
「声をかけてみます」
「案内を」
「1人で大丈夫ですわ」
「あ、クリスティーナ」
「サリー」
「どちらへ?」
「休憩室にシャルル様がいらっしゃるみたいなの」
「ご一緒するわ」
夫人と別れてサリーと休憩室へ向かった。廊下の先のドアの開いてある部屋だろう、明かりと声が漏れていた。
ドアのすぐ側まで来るとシャルル様が親しくしていた学友2人の姿が見えた。他にも声がする。
「そろそろ夜会に来いよ。もうヘマしなきゃいいだろう?」
「そうだよ。新顔の令嬢も増えてるから今のうちだぞ」
はぁ…まったく成長しないわね。でも挨拶だけしておかないと。
「で、どうするんだ?婚約者とは」
「どうするって?」
私の名が出たのでピタッと足を止めた。
2,659
あなたにおすすめの小説
私と幼馴染と十年間の婚約者
川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。
それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。
アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。
婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?
愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。
ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。
子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。
――彼女が現れるまでは。
二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。
それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……
【完結】恋は、終わったのです
楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。
今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。
『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』
身長を追い越してしまった時からだろうか。
それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。
あるいは――あの子に出会った時からだろうか。
――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。
白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません
鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。
「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」
そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。
——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。
「最近、おまえが気になるんだ」
「もっと夫婦としての時間を持たないか?」
今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。
愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。
わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。
政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ
“白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!
【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか契約聖女になってしまいました
As-me.com
恋愛
完結しました。
番外編(編集済み)と、外伝(新作)アップしました。
とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。
例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。
なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。
ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!
あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。
※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる