【完結】笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

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エルザの王子様

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「ドミニク・テイラーが王子殿下ならびに王子妃様にご挨拶を申し上げます。彼は画家のジョアンです」

「ジョ、ジョアンです…と申します…ご指名いいいただき、ここここ光栄にぞ…」

「(存じます)」

「存じます」

「わざわざ足を運んでくれてありがとう。いくつか見つけられない作品があったと妻が残念がっていてね。何度も足を運ばせるわけにはいかないだろう。だから来てもらったんだ。並べさせていいかな?」

「はい。ぜひ」

使用人達が壁に掛けたり、壁際に置いた簡易机の上にジョアンさんの作品を並べた。

「妻が探している間はゆっくり食事を楽しんでくれ」

エルザは殿下と一緒に絵を見始めた。テイラーさんとジョアンさんは食事を始めた。

「ジョアンさん、緊張しなくて大丈夫ですよ。リラックスして王宮料理人の食事を味わった方がいいですよ」

「は、はい」

無理かな?持ち帰りの方が良かったかも。テイラーさんは味わっているわね。

「あっ!子どもの脚がない!」

「本当だね」

あれのネタばらしは多分、木の箱の前に子どもがいるのではなくて、木の箱の向こうに子どもが立っているんだと思う。木の箱に脚が隠れているだけ。

ふふっ。エルザったら殿下にべったりしがみつきながら見ているわ。殿下も嬉しそうにエルザを抱きしめてる。

「あれ?この顔…既視感があるわ」

エルザが見ているのは豚舎がある牧場の豚の絵だ。たくさんの豚の中から例のものを見付けてしまったみたい。
っ!! 駄目っ笑っちゃ駄目!!

「人の顔に見えるね」

「何処かで見たような…」

殿下は目線を私に送った。お気付きなのですね。その通りです。豚の顔の柄とあちらで食事をしている方の顔がよく似ているのです。
殿下は私からテイラーさんに一緒目線を移してすぐに絵に戻った。

「クッ」

「どうなさったのですか?」

「何でもないよ。さあ、次の作品を見よう」

さすが王族。一度天井を見てから気持ちを切り替えてエルザを豚の絵から遠ざけたわ。

1時間もかけて見終わった後、結局見つけられなかった2枚の答えを殿下が教えた。今、テイラーさん達は宝物庫を見に行っている。殿下の計らいなのだけど、多分エルザのために席を外させたのだと思う。だって目の前にテイラーさんが座ったら間違いなくエルザには耐えられないもの。

「一つはこの垂れ下がったロープみたいなものだね?下が輪になっていてまるで…」

「仰る通りです、殿下」

「こんなの見つけられないわ。ティナは見つけたの?」

「一番最初に見つけたのがこの作品です」

「すごいわね」

「もう一つは、この女性の持っているパンを見て。尻尾が見えるだろう?」

「ああっ!」

葉野菜と何かを挟んだパンなのだけどネズミの尻尾のようなものがはみ出て垂れ下がっているように見える絵だった。

「ティナ、これは何なの?」

「山菜の一種のみたい。北に行ったときに描いた絵らしいわ。平民はその辺の道端とか雑木林とか山とかでキノコや山菜や木の実をとって食糧にするから」

「ジョアンさんに聞いたの?」

「彼も村のパン屋さんで同じものを食べたらしいわ」

「次の展覧会が楽しみだわ」

「エルザ、大事な話がある」

「え?」

「あの豚の顔だが」

ついに教えてしまうのね。

「はい」

「テイラー氏とそっくりなんだ」

「…………ああっ!!」

「君に教えるとテイラー氏を見て笑うだろう?それは失礼だから彼らを宝物庫見学に出したんだ」

「……っ!」

エルザは笑いを堪えていた。

「駄目ですね。テイラーさんが戻ってきたらエルザは確実に笑いますわ。しかも止まらないでしょう」

「そうだな」

「大丈夫よ。王子妃教育を受けてきたのよ?」

「エルザ、今既に顔がニマニマしているのに無理よ。失礼なことになったらもう連れて来ないわよ」

「ティナぁ」

「王子妃様に笑われたらテイラーさんは一生の傷になってしまうわ」

「う、うん…」

結局、最後は殿下だけが彼らに会って絵を返した。2人が帰って殿下が戻って来ると私も帰ろうとした。

「え?なんで?泊まって行ってよ」

「新婚でしょう。私は邪魔だわ」

「そんなことないわよ。そうですよね?」

エルザは殿下に同意を求めた。

「もちろん邪魔なんかじゃないよ」

「ほら」

エルザ。あなたはどうして殿下に関して鈍感なの?明らかに邪魔しないでくれって顔に書いてあるじゃない。

「殿下がいいと仰っても新婚夫婦の邪魔をしては駄目なの。もう少し落ち着いたらたっぷり夜通しお喋りしましょう?」

「分かったわ」

殿下はエルザの後ろでうんうんと頷いていた。










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