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第四章
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しおりを挟む雲ひとつない晴天。眩しいほどの秋晴れの中、私は駅の改札口で楓先輩を待っていた。
同じ高校に通っているとはいえ、私と先輩では自宅の最寄駅の路線が違うため、合流地点であるターミナル駅で待ち合わせをすることにしたのだ。
待ち合わせの時刻まであと十五分。緊張でそわそわと落ち着かず、鼓動がどんどん速まっていく。
日曜日の朝九時十五分。平日の登校時間とは違い、サラリーマンや制服姿の学生などはほぼいない。
地元の駅とは違い、たくさんの人が行き交っているけれど、ひとりの人も連れ立って歩いている人も、この駅にいる誰も彼もが都会的で洗練されているように見えた。
私は自分を見下ろし、今日の服装を改めてチェックする。
ビッグカラーの白いブラウスに、今日のために買った形の綺麗な膝上の台形スカートを合わせた。ブラウンのチェック柄が秋らしく、少し短いけれど中がパンツになっているので安心感がある。
上に羽織ったオフホワイトのカーディガンはショート丈で袖にボリュームがあるタイプで、これを着るだけで可愛い雰囲気になるからお気に入りの一着。
歩きやすいように足元はエンジニアブーツにして、バッグは財布とスマホなど最低限のものが入るショルダーバッグを選んだ。
雑誌で秋のトレンドやおしゃれに見える着こなしなどを参考にしてコーディネートを組んだけど、本当に正解かどうかはわからない。
髪も京ちゃんに教えてもらった通りに緩くサイドを捻って止め、黒髪でも重く感じず垢抜けた印象を目指した。
この街に馴染むとまではいかなくても、浮いてないといいなと願う。そうでないと、一緒に歩く楓先輩に恥ずかしい思いをさせてしまうから。
スタイリング剤で束感を出し、鏡の前で必死に作った前髪をいじりながら無駄に速まっている鼓動を落ち着かせていると、改札の奥に楓先輩を見つけた。
私との距離はおよそ二十メートル。人混みの中、彼はバッグから定期を取り出そうとしていて横顔しか見えなかったのに、それでも先輩だとすぐにわかった。
だって私の目には、楓先輩だけがキラキラと輝いて見えるから。
改札を抜け、周囲を見回した先輩が、壁際で立ち呆けている私に気が付いて片手を上げた。
白いTシャツに黒のスキニーパンツ、オーバーサイズのミリタリーシャツというシンプルな格好だけど、長身でスタイル抜群なおかげで、ファッション誌から飛び出してきたモデルさながらの出で立ちだ。
学校のダサい体操服だって着こなしてしまうんだから私服姿の破壊力たるや抜群で、まだ挨拶すら交わしていないというのに、私の心臓は限界まで速いリズムを刻んでいる。
手を振り返すこともできないまま、先輩が目の前までやってきた。
「おはよう。早いな。待たせた?」
「おはようございます。いえ、全然」
なんとか平常心を心がけて挨拶を返し、首を横に振る。
まだ約束の時間の十分前。私が早く来すぎてしまっただけで、先輩が遅れたわけじゃない。
待ち合わせのお決まりのやり取りをしていると、近くを通り過ぎる人がちらちらこっちを見ていることに気がついた。
ほとんどが楓先輩のカッコよさに思わず見惚れているハートマークがついた矢のような視線だけど、中には隣に立つ私を値踏みする鋭いものもある。
これほどイケメンでスタイルのいい先輩の隣にいるのが平凡な私だから、どういう関係なのか気になって見てしまうんだろう。
これまでの私なら卑屈になってしまいそうなところだけど、お守りにしている言葉を頭の中で再生する。
『〝なんか〟呼ばわりするなんて、菜々本人でも許せない。菜々を貶めるのは、菜々を大好きだって思ってる私のことも貶めてるのと一緒だよ』
京ちゃんが伝えてくれた思いが、私を少し強くしてくれる。
四方から感じる視線をシャットアウトして、意識して背筋を伸ばした。
せっかくふたりで出かけられるんだから。緊張しすぎたり卑屈になったりしていたらもったいない。
それに今日は勉強を教えてくれた先輩にお礼をしたいと思ってるんだから、ひとりで空回ってないでちゃんとしないと。
夕方まで一日中一緒だから、話題も考えておかないと話が尽きてしまうかもしれない。先輩を退屈させないように、少しでも楽しいと思ってもらえるように。
昨夜、何度もシミュレーションしたんだから大丈夫。下調べもバッチリだ。
「じゃあ、早速行くか」
「はい」
図書館で並んで勉強していたのが定着して、一緒にいると私の右側が先輩の定位置になっている。
なんとなく右手をそわそわさせながら、隣に並んで歩き出した。
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