51 / 52
エピローグ
1
しおりを挟む「そういえば、三者面談どうだった?」
「もう聞いてよー! お母さんが来たからその場はなんとかなったけど、帰ってからが最悪! やっぱりお父さんに反対された。大学ぐらい出ろって。美容師っていう夢が固まってるのに大学に行くなんてお金も時間も無駄なのにさ」
京ちゃんが口をへの字にして文句を言う。そんな彼女の頭を、日野先輩がぽんぽんとなだめるように撫でた。
「まぁまぁ。親父さんだって京香のためを思って言ってるんじゃない?」
「絶対違う! 美容師をチャラチャラした職業だって言ってたもん。ほんと頑固おやじ!」
京ちゃんのお父さんに会ったことはないけれど、彼女いわく『絵に書いたような生真面目人間』らしい。美容専門学校に行きたいと話したら頭ごなしに反対されたそうで、京ちゃんの夢や手先の器用さを知っている私からしたら、とてももったいないと思う。
「京ちゃんが誰かのヘアアレンジをしてるところ、お父さんに見てもらえないかな。そしたらきっと、京ちゃんの才能とか凄さをわかってもらえるのに」
前に一度ヘアアレンジをしてもらった時、本物の美容師さんのように手際よく可愛くしてくれて、まるで魔法だと思った。それを京ちゃんのお父さんにも見てもらいたい。
私がそう言うと、京ちゃんがハッとして私を見つめた。
「お正月に親戚で集まる時、みんな着物着るから美容室を予約するの。その時のお母さんとか従姉妹たちの髪、私がやってみようかな」
「わぁ、いいかも! みんなきっと喜ぶよ。お父さん、美容師っていうお仕事に関心持ってくれるといいね」
「ありがと。長期戦覚悟で頑張ってみる。菜々は? 進路の話した?」
「うん。帰ってからお父さんに話したよ。まだどこの大学に行くかは決められてないけど、スクールカウンセラーを目指したいって話したら一緒に色々調べてくれた」
これまで将来の夢を考えたことがなかったけれど、ふと浮かんだことがあった。
悩んだり居場所がないと感じた時、吐き出させてくれる存在というのは絶対に必要だ。私には辛い時に楓先輩や京ちゃんがいたけれど、大切な人だからこそ話せない時もある。
学校でもいいし、別のコミュニティでもいい。どこか逃げる場所があって、気軽に話を聞いてくれる人がいたら。例えば、保健室の田村先生が優しく受け入れてくれたように。
保健室や相談室などの安心できる居場所を作る手伝いがしたい。そう考えた時、一番近い職業がスクールカウンセラーだった。
スクールカウンセラーになるにはどうしたらいいのか、どんな資格が必要なのか。お父さんはネットや本屋などで情報を集め、民間の資格講座の資料なども取り寄せてくれた。
心理学を学びながら養護教諭の資格を取れる学科がある大学に行くのが良さそうだったから、これから色んな大学を調べてみようと思っているところだ。
「いいなー、娘の夢に理解のあるお父さん。それにしても真央さん、めちゃくちゃ綺麗な人だね」
本来なら三者面談にはお父さんが来る予定だったけど、前日になりどうしても仕事の都合がつかなくなったので、急遽真央さんが来てくれることになった。京ちゃんはその時に私と一緒にいる真央さんを見かけたらしい。
私はやっぱり真央さんを〝新しいお母さん〟とは思えない。だから呼び方は変わらないままだ。彼女はお父さんの奥さんであって、私にとって〝お母さん〟はお母さんだけ。お父さんも真央さんもその考えを受け入れてくれている。
それに〝親〟じゃないからこそ話せることもある。私にとって真央さんは、頼りになる姉のような存在となった。
「そうなの。あの見た目で性格もいいし、お料理も上手なんだよ。ハイスペックすぎるよね」
夕食中、三者面談に来られなくて拗ねていたお父さんをいなしながら、先生とどんな話をしたのか伝える真央さんを思い出した。
ずっと長い間悩んでいたけれど、自然と真央さんを褒める言葉が出てくる。そんな自分の変化が擽ったいけれど、右隣にいる楓先輩が私を見て小さく微笑んでくれたから、これでいいんだと思える。
京ちゃんには、お父さんの再婚について自分の中のわだかまりが消えたのをきっかけに、家庭の事情について話していた。
忘れられない恋人がいると思っていた楓先輩を、お母さんを想いながら再婚したお父さんと重ねて苦しかったことを話した時は、京ちゃんも一緒に泣いてくれた。
『菜々……ひとりで悩んで辛かったね。話してくれてありがとう。なにかあればいつでも助けるからね……!』
大好きな京ちゃんにずっと言えなかったことを打ち明けられてホッとしたのと同時に、彼女の優しさに改めて感謝の気持ちでいっぱいになった。
20
あなたにおすすめの小説
あいみるのときはなかろう
穂祥 舞
青春
進学校である男子校の3年生・三喜雄(みきお)は、グリークラブに所属している。歌が好きでもっと学びたいという気持ちは強いが、親や声楽の先生の期待に応えられるほどの才能は無いと感じていた。
大学入試が迫り焦る気持ちが強まるなか、三喜雄は美術部員でありながら、ピアノを弾きこなす2年生の高崎(たかさき)の存在を知る。彼に興味を覚えた三喜雄が練習のための伴奏を頼むと、マイペースであまり人を近づけないタイプだと噂の高崎が、あっさりと引き受けてくれる。
☆将来の道に迷う高校生の気持ちの揺れを描きたいと思います。拙作BL『あきとかな〜恋とはどんなものかしら〜』のスピンオフですが、物語としては完全に独立させています。ややBLニュアンスがあるかもしれません。★推敲版をエブリスタにも掲載しています。
丘の上の王様とお妃様
よしき
恋愛
木崎珠子(35才)は、大学を卒業後、帝国財閥の子会社に勤めていた、ごくごく平凡なOLだった。しかし、同じ職場の彼に二股をかけられ、職場にも居づらくなり、あげくに両親が交通事故でいっぺんに他界。結局会社を退職し、両親がやっていた喫茶店「坂の上」を引き継ごうと、地元へ帰ってくる。喫茶店の仕事は、会社務めに比べると、珠子にはなんとなくあっているようで...ご近所さんを相手にユルくやっていた。そんな珠子が地元へ戻ってから半年ほどして、喫茶店「坂の上」の隣にある、通称「お化け屋敷」と呼ばれる大豪邸に、帝国財閥の偉い人が越してくると話題になる。珠子は、「別の世界の人間」だからと、あまり意識をしていなかったのだか...
「お化け屋敷」の噂からひと月後。いつもは見ない紳士が、喫茶「坂の上」によってきて。そこから始まる現代シンデレラ物語
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
憧れのあなたとの再会は私の運命を変えました~ハッピーウェディングは御曹司との偽装恋愛から始まる~
けいこ
恋愛
15歳のまだ子どもだった私を励まし続けてくれた家庭教師の「千隼先生」。
私は密かに先生に「憧れ」ていた。
でもこれは、恋心じゃなくただの「憧れ」。
そう思って生きてきたのに、10年の月日が過ぎ去って25歳になった私は、再び「千隼先生」に出会ってしまった。
久しぶりに会った先生は、男性なのにとんでもなく美しい顔立ちで、ありえない程の大人の魅力と色気をまとってた。
まるで人気モデルのような文句のつけようもないスタイルで、その姿は周りを魅了して止まない。
しかも、高級ホテルなどを世界展開する日本有数の大企業「晴月グループ」の御曹司だったなんて…
ウエディングプランナーとして働く私と、一緒に仕事をしている仲間達との関係、そして、家族の絆…
様々な人間関係の中で進んでいく新しい展開は、毎日何が起こってるのかわからないくらい目まぐるしくて。
『僕達の再会は…本当の奇跡だ。里桜ちゃんとの出会いを僕は大切にしたいと思ってる』
「憧れ」のままの存在だったはずの先生との再会。
気づけば「千隼先生」に偽装恋愛の相手を頼まれて…
ねえ、この出会いに何か意味はあるの?
本当に…「奇跡」なの?
それとも…
晴月グループ
LUNA BLUホテル東京ベイ 経営企画部長
晴月 千隼(はづき ちはや) 30歳
×
LUNA BLUホテル東京ベイ
ウエディングプランナー
優木 里桜(ゆうき りお) 25歳
うららかな春の到来と共に、今、2人の止まった時間がキラキラと鮮やかに動き出す。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
モース10
藤谷 郁
恋愛
慧一はモテるが、特定の女と長く続かない。
ある日、同じ会社に勤める地味な事務員三原峰子が、彼をネタに同人誌を作る『腐女子』だと知る。
慧一は興味津々で接近するが……
※表紙画像/【イラストAC】NORIMA様
※他サイトに投稿済み
不遇の花詠み仙女は後宮の華となる
松藤かるり
恋愛
髙の山奥にある華仙一族の隠れ里に住むは、華仙術に秀でた者の証として花痣を持ち生まれた娘、華仙紅妍。
花痣を理由に虐げられる生活を送っていた紅妍だが、そこにやってきたのは髙の第四皇子、秀礼だった。
姉の代わりになった紅妍は秀礼と共に山を下りるが、連れて行かれたのは死してなお生に縋る鬼霊が巣くう宮城だった。
宮城に連れてこられた理由、それは帝を苦しめる禍を解き放つこと。
秀礼の依頼を受けた紅妍だが簡単には終わらず、後宮には様々な事件が起きる。
花が詠みあげる記憶を拾う『花詠み』と、鬼霊の魂を花に渡して祓う『花渡し』。
二つの華仙術を武器に、妃となった紅妍が謎を解き明かす。
・全6章+閑話2 13万字見込み
・一日3回更新(9時、15時、21時) 2月15日9時更新分で完結予定
***
・華仙紅妍(かせんこうけん)
主人公。花痣を持つ華仙術師。
ある事情から華仙の名を捨て華紅妍と名乗り、冬花宮に住む華妃となる。
・英秀礼(えいしゅうれい)
髙の第四皇子。璋貴妃の子。震礼宮を与えられている。
・蘇清益(そ しんえき)
震礼宮付きの宦官。藍玉の伯父。
・蘇藍玉(そ らんぎょく)
冬花宮 宮女長。清益の姪。
・英融勒(えい ゆうろく)
髙の第二皇子。永貴妃の子。最禮宮を与えられている。
・辛琳琳(しん りんりん)
辛皇后の姪。秀礼を慕っている。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる