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「じゃあ、3つ目の提案だ。

今回の関係者を誰も処刑しないでくれ。」


「それは・・・」
国王が言葉を呑んだ。


「処罰するなとは言っていない。これだけのことがあって、誰も責任を取らないなどありえないからな。
ただ、命を奪う『処刑』はやめてほしい。」

「公爵令嬢の命を奪おうとしたのですよ。」

「だが、かろうじて間に合った。誰も死ななかった。」

「それでも・・・」

「俺はマリアの、『親友を助けたい!』という願いに惹かれてこの世界に来た。
だから、フィーナを助けられたことを嬉しく思っている。でも、その結果、別の誰かが処刑され、悲しむ人が生まれるのは本意じゃない。
・・・俺は人を殺したり、悲しませたりするためにこの世界に来たんじゃない。」


「・・・」
国王は沈黙したままだ。

だから、俺は国王にだけ聞こえる声で話を続けた。

「王太子が関係者な以上、父親のあんたが厳しい処分をせざるを得ないのはわかる。そうじゃないと、国民に示しがつかないからな。

だから、この件は俺が背負ってやるよ。」

「神様・・・」


ここで、声を張り上げる。

「国王よ。『この件での処刑は許さない!!』 これは神の意思であり決定だ。反論はあるか!!』


「・・・ありません。
謹んで従わせていただきます。」


そして、俺だけに聞こえる声で、

「ありがとうございます、神よ・・・」

と国王が囁いた。
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