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43レミーの想い

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「もう・・・俺がどういう存在かはわかっているよな。」

「・・・もちろん転生者よね。」

「俺たちは別に死んではいないから、転生とは、ちょっと違うけどな。」


「そうなんだ。
でもまあ、それは正直どうでもいい。
あなた達にはやられたわ。


・・・でも、ありがとう。」


「・・・ありがとう?」


「怖くなっていたのよ。
知り合いが処刑されるなんて・・・

しかも、自分のせいで。

でも、止められなかった。

だから、これはゲームって自分を納得させようとしていたんだ。


とっくに、今が・・・
今こそが現実だってわかっていたのにね。

だから、ありがとう。

私の好きだった世界を守ってくれて。


暴走していた


ヒロイン(私)を止めてくれて・・・



ありがとう。」

レミーは肩の力を抜いて、微笑みを浮かべた。


「この世界に来て、もう1年経つわ。
何がきっかけだったのかもわからない。
ただいつものようにゲームをしていたはずなのに、ふと気がついたら・・・ゲームの世界にいたの。
意味がわからなかった。
夢だと思った。

でも、何日経っても何も変わらなかった。

みんなは私のことをレミーと呼んでくるけれど、私にはこの世界の記憶なんて一欠片もなかった。

私がやっていたゲームみたいに、それまでの人生の記憶なんて残っていなかった。

レミーってどんな子だったの?

必死で話を合わせて・・・
苦しくて苦しくて・・・

通っていた学校に行ったら何か思い出せるかも・・・
何か変わるかも・・・

そう思って学校に行ったけれど、やっぱり何も思い出せないし、何も変わらなくて・・・

どうしようもなくなって、途方に暮れて・・・私はもう泣くことしかできなかった。

誰にも見つからないように、庭の隅っこで、ただ泣いているしかなかったの。

でも、誰も来ないと思っていた、そんな庭の隅っこにあの人は来た・・・来てくれたの。

王太子・・・ライリー様が。


ライリー様は事情を優しく聞いてくれたけれど、まさか本当のことは話せなかったから・・・学校が辛いという話をしたの。
それはもちろん嘘なんだけれど、辛いという気持ちを吐き出せるだけで.私は嬉しかった。
本当に嬉しかったの。

それから、私は何回もライリー様に話を聞いてもらったわ。
ライリー様は毎回、親身になって話を聞いてくれた。
私が話していることは嘘だらけだったから・・・嘘しかしゃべることがなかったから・・・もしかしたら、何か変だって気がついていたかもしれない。
でも、優しく話を聞き続けてくれた。

そして、『信頼できる仲間だ』っていってサミュエル様達を紹介してくれたの。
サミュエル様達も優しく話を聞いてくれた。笑顔を向けてくれた。
何にもない、しかも嘘だらけの私に笑いかけてくれたの。


嬉しかった。


だからね、私はライリー様達に、本当に感謝しているの。」
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