名探偵の条件

⑩事件発生！？

事件というものはドラマティックに始まるもの。
少なくとも僕はその時までそう思っていた・・・いや、期待していた。


例えば、美女の悲鳴で駆けつけた探偵の前に物言わぬ惨殺死体・・・。
驚きの表情で立ちつくす関係者一同にむかい、探偵の鋭い一言。

「皆さん、この部屋に入ってはいけません。警察が来るまで現場を保存しなければなりません。
これは殺人事件です。」

この辺りで、夜空に稲妻でもはしれば正に文句なし、といったところか。

まあ、ドラマの見過ぎだと言われればそれまでだが、やはりそれなりの雰囲気があってよいのではと思う。


実際のところの探偵さんは、事件発生時にはまだ僕とのお話中であった。
もちろん第六感で犯行に気がついた・・・はずもない。

まあ、彼も一応は人間だという事だろう。


僕たちが事件の発生を知ったのは、病室に来た刑事から聞き込みを受けた時であった。
・・・というよりも、病室をチェックしにきた刑事から聞き出したといった方が正しいだろう。


かわいそうに・・・その刑事にとって、僕たちの病室は鬼門とでもよべる場所であったのだ。