名探偵の条件

ヒロト

文字の大きさ
13 / 44

13ちょっと現場に

しおりを挟む
「羽鳥刑事・・・そんな大切なこと聞かないで、この部屋から逃げようとしたのかい?」

「うっ」

「後、質問の仕方に丁寧さが足りないと思うな。
『どこにいたんだ』はないんじゃないかと思うよ。」

「うぅ・・・すいません。教えてください。」


・・・これ以上冬弥の刑事いじめに付き合っていてもしょうがないので、僕から説明することにした。


「僕と冬弥は、その前からずっとこの部屋で話をしてましたよ。」


ようやく冬弥から逃げる口実ができ安心したからか、羽鳥刑事は一瞬ほっとした顔を見せる。

「わかりました。ご協力感謝します。
それではまだ部屋を廻らないといけないので失礼させてもらいます。」

 逃げ出すように羽村刑事がドアノブに手をかけた瞬間、冬弥が声をかけた。


「それで、現場はどこなんですか、羽鳥さん。」


「・・・まあ隠しても直ぐにわかることだからな。

・・・201号室と206号室だ。」

「現場が2部屋?何人殺されたんだい。」


「被害者は一人だけだ。
ただ、死後移動させられたらしくてな。まあそういう意味で現場は2カ所だ。」


「なるほどね。それで死体はどっちにあったんだい?」

ちらっと手帳をちらつかせながら冬弥が聞く。

「・・・201号室の方だ。」

「まだ死体はそこにあるのかな。」

「ああ、検死もあるし、1時間ぐらいはそのままだろう。」
「なるほど・・・まあ、まだ聞きたいこともあるけれど。」
冬弥が微妙な笑みを浮かべて僕を見る。


「弘幸、ちょっと現場に行ってみようぜ。」
「・・・やだよ。」

「大丈夫、中には入れっこないから。
いくら刑事様の権限でも無関係の人間を犯行現場には入れられないよ。

だから、やじうまにいくだけ。
まあ、僕は部屋の中を遠くから、ちょっと眺めたいだけだよ。弘幸も暇だろうし・・・いいだろう?」


僕は羽鳥刑事の方を見た。

冬弥の言葉をそのまま信じるのは、あまりにあやうく思えたのだ。

「確かに、私に犯行現場に部外者を入れる権限なんてないよ。
それにまだ他の部屋もまわらないといけないから、私はついていけない。」

「という事だ。中には入れない。
それならいいだろ。」


僕も、確かに事件にはそれなりに興味があった。

もともと刺激の少ない入院生活に退屈もしていたところだ。冬弥の態度にきなくささも感じるが、実際に何ができるわけでもないだろう。
そう考えると、着いていくくらいならいいかと思えた。

「しょうがない。ついていくだけだぜ。」

「それでいいさ。どうせそれ以上のことはできないんだから。
まあ、見ていいというところまでは一緒に見に行こうよ。」


 なにか、言い回しに微妙なニュアンスを感じたが、気にする程ではないと思ってしまった。


・・・今思えば、なんたる油断、としかいいようがない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...