名探偵の条件

ヒロト

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32同類

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「冬弥。・・・いつかお前、刺されると思うぞ。」
「ん。じゃあ、弘幸守って。」
「自分でまいた種だろ。自分でなんとかしろ。」
「ん~。じゃあ、代わりに刺されて。」
「あほか!!」

2人で漫才みたいな会話をしていると、羽鳥刑事がドアをノックして、もう一度部屋に入ってきた。

「失礼します。」

・・・丁寧に頭まで下げている。


さすがは刑事さん・・・素晴らしい精神力だと驚く。

ただその能力は、本来もっと違う場所でいかされるべきものなんだろうなと思い、少し切なくなる。


「羽鳥さん。曲げた腰の角度が・・・」
「やかましい!」

更に、難癖をつけようとした冬弥に、思わず僕はつっこんだ。

・・・おかしい。さっきから、すっかり僕がつっこみ役になってしまっている。


もしかしたら・・・これが、冬弥なりの『思いやり』なのだろうか。
落ち込み気味な僕の気持ちを盛り上げようとしてくれているのだろうか。


だとしたら・・・


(すみません、羽鳥刑事。
どうやら先ほどからの理不尽な仕打ちは、間接的にとはいえ僕にも責任があるようです。

できるだけのフォローはしますので、懐にしまってあるものを引き抜こうとするのは止めてください。

そして・・・もし撃つのならば、狙いたがわず冬弥だけに当ててください。)


・・・冬弥の影響を受けすぎている。少し、反省しなくては。


そんなこんなで(『そんなこんな』でまとめられたら、羽鳥刑事も浮かばれないとは思うが)ひとしきり大騒ぎをした後、ようやく羽鳥刑事からの報告を聞くことになった。
羽鳥刑事は・・・すでに、ぐったりとして目つきもあやしくなっている。


――かわいそうに――


(でも、聞き出せる限りは無理矢理でも聞き出すから・・・覚悟を決めてくださいね、羽鳥刑事。)

・・・冬弥のようなセリフが、自然に自分の頭に浮かんでしまい、僕は少し焦る。


「羽鳥さん。知っている限りの情報を吐いてもらうからね。覚悟しなよ~。」

・・・どうやら、僕はすでに冬弥の同類になってしまったらしい。
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