名探偵の条件

ヒロト

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42親愛なる

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しかし、そんな僕達の様子に構わず、冬弥が再び話し出した。
「『アリバイ』で思い出したけど・・・今の話からすると、『犯行時刻』について証言しているのは、巡回していた看護士さんなのかい?」

「・・・そうだ。
6時に見回りをした時には、201号室・206号室・被害者の病室・・・異常はなかったそうだ。

被害者はちょうどその時寝ていたそうだが・・・しっかり顔も確認したし、間違いなく生きていたらしい。

そして、8時に見回りに行くと・・・201号室が『血の海』になっていたという訳だ。」

「なるほどね。ちなみに、その看護士が虚偽の証言をしている可能性は?」


「鑑識が出した被害者の死亡推定時刻は『6時から7時半』だ。
証言と一致している。

現場の血の乾き具合から考えても、この時間帯に事件が行われたとみてよいだろう。
巡回をしていた看護士には、事件を行っている時間はなかった。

証言は信じてよいと思う。」


「OK。わかったよ。それじゃあ、これが最後の質問ね。」

冬弥が首を回しながら話し出す。
時計を見ると、羽鳥刑事と話を始めてから、かなりの時間が経過している。
確かに、そろそろ話を終わらせなければいけないだろう。

「入院患者達のアリバイについては、今のところどうなっている?」


「・・・まだ、確認を進めているところだ。
一人部屋の患者も多いから、裏をとるのが大変なんだよ。」

「確かに、時間がかかるだろうね。がんばっ!!」

「・・・そして、またお前に報告しなくちゃいけないってことか。」

「ご名答! 羽鳥さん、冴えているね。」


羽鳥刑事は、冬弥の言葉に大きくため息をつき、額を押さえた。

「まあ・・・いまさら、断れんしな。」
がっくりと肩を落としながら、元気のない声で羽鳥刑事は答えた。

しばらくの間、病室が沈黙に包まれた。
すると、冬弥が羽鳥刑事に近づき、励ますように背中をさすり出した。

「いろいろと情報をありがとう。
ずいぶんと時間をとっちゃって、ごめんね。」

「もう、終わりなんだな!」
羽鳥刑事の顔に輝きが戻る。

「もちろんだよ。
それにしても本当に助かったよ、ありがとう。

だからさ・・・言わないでおこうと思っていたけど、特別に一つ教えてあげるよ。」


「なんだ?」


「昨日、羽鳥さんとMさんの写真を載せた暑中見舞い出しちゃった・・・奥さん宛に。」


「なに~~~~~~!!!」


「いや~、珍しくうまく写真が撮れたからさ・・・つい。」

満面の笑みを浮かべ、冬弥は可愛らしく小首をかしげる。


羽鳥刑事は、ショックで頭の中が真っ白になってしまったようだった。

しばらくの間は、言葉もなく口をパクパクさせていたが、
「馬鹿野郎~~~~!!!」と、悲鳴のような叫び声をあげると、全速力で羽鳥刑事は病室を飛び出していった。


僕は、羽鳥刑事の背中を見送ると、半眼になって、冬弥の方を振り向いた。


「いじめすぎだぜ、冬弥。」
「そうか?」
「・・・まあ、ちょっとだけな。」

僕は、ため息を一つつくと、言葉を続けた。
「さっき、羽鳥刑事の背中に張りつけた紙には、なんて書いておいたんだ?
・・・大体予想はつくけどさ。」

そう。冬弥は、さっき羽鳥刑事の背中をさするふりをして、背中に紙を貼り付けていた。
あの紙は、羽鳥刑事が挑戦的な発言をした時に、冬弥がメモしていた紙だろう。

「そんな、たいした事は書いてないよ。まあ・・・簡単に言えば『謝罪文』かな。」

「謝罪文?」

「そうさ。えっと、こんな感じだったかな。」


『親愛なる羽鳥様へ

 ごめんね・・・さっきのウソ♪ 

これからも自主協力すると言ってくれている羽鳥さんの秘密を、僕がばらす訳ないじゃないか。

あっはっはっは。

 でも、僕に対する言葉づかいには気をつけようね。まあ、『王様に話しかけている』ぐらいの心がけは必要だと思うよ。

それじゃあ、また『情報漏えい』よろしくね♪

                冬弥 & 弘幸』 


「連名かよ!」

他にもつっこみどころ満載な文章だったが、とりあえず僕自身の不利益に対して、抗議しておく。

「まあ、細かいことは気にするなって。
さて、不幸な羽鳥さんのことはとりあえずどこかに置いといて、元の話に戻りますか。」

冬弥は僕の抗議と羽鳥刑事の悲劇を、『まあ』と『さて』という、シンプルな言葉で切り捨てた上で、あっさりと次の言葉を言い放った。


「さて、弘幸。今回の事件の真相、もうわかったかい?」
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