バビロニア・オブ・リビルド『産業革命以降も、神と科学が併存する帝国への彼女達の再構築計画』【完結】

蒼伊シヲン

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2章.ギルタブリル討伐

19『曇天と飛行船』

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 ギルタブリル討伐作戦の実行当日、バビロニア帝国付近は曇天に覆われていた。
雨に濡れる東圏側の街並みを、南花達を始めとする十数名からなる討伐小隊は、頭上から見下ろしていた。
エンキが開発した試作型の飛行船に乗って…

討伐作戦の陣形の後方から、狙撃を担当する南花とアリサ、サクラ・コマチ・アオイは、
30口径のレバーアクション式のライフルを主武器プライマリとして手にしている。
そのライフルには、本作戦用に南花が発案した弾頭を金属で覆い貫通力を高めた、実包カートリッジが装填されている。

そして、作戦陣形の前線に立つ盾兵ペルタスト役のペコ達は、全身を隠せる程の大きさで、約20キログラムの重さがある盾を手にした上に…
更に、腰に装備出来るサイズ感の筒状のケースには、投擲用の短い槍が複数本、収納されている。

全長50メートルの飛行船は、東圏側の城壁を通りすぎ、ギルタブリルの住みかである、ザグロス山脈が見えてくる。

戦に備えた装いの討伐小隊に反して、指揮官たるエンキはいつも通りの白衣という軽装で現れる。
「もう少しで降下ポイントに着くけれど、緊張していないかい?」
「はい。ですが…どのように降下するんですか?」
エンキの一番近くに立つ南花が問い掛ける。

「あぁ、生身で降下してもらうよ。」
「えぇえ!生身で!」
大声を上げたペコは震えている。

「ウソウソ、私の魔術で、着地時の衝撃から皆を保護するから大丈夫だから。」
怯えるペコを見つつ、エンキはニヤニヤする。
「エンキ局長、降下ポイント到達まで、あと60秒です。」
飛行船のパイロットからのアナウンスが船内に響く。

はい、は~いっと軽く返事したエンキが降下用の魔術の準備に移るため…
白衣の右ポケットから、クリスタルの様に透明度の高い、手のひらサイズの菱形の立体物キューブを取り出す。
「私の半神格の元に展開しなさい、【メーエアプス・イージス】」

術者の声に呼応した菱形の立体物キューブは分身した上で、飛散し、討伐部隊達の各右手の甲に、平面的に黒く刻印される。

「えっと…これはどのような原理なのでしょうか?」
右手に刻印された菱形を見つつ、アリサが質問する。

「そうだね。もうすぐしたら、飛行船の後方ハッチが開くから、そこから飛び降りて貰うんだけれど…」
「えっ、飛び降りる…」
声が震えるペコを他所に、エンキは説明を続ける。

「適切な高度に達したら、その刻印が光るから、そのタイミングで刻印に触れたら着地時の衝撃を吸収してくれる魔術が発動するっていう流れだから安心して飛び降りてね。」
討伐部隊達が頷いたタイミングで、後方のハッチが開いていく…

開いたハッチから、船内に強風と雨が入り込んでくる。
「よし、行こっか!」
エンキの号令と共に、盾兵ペルタスト役の兵士達が、次々と飛び降りていくが、ペコは躊躇う。

「もしかして、ペコ先輩怖いんですか?」
南花がニヤつきながら煽る。
「そ、そんな訳ないでしょ!」

「そうですか?お先に失礼しまぁ~すぅ~」
南花を筆頭に、狙撃を担当する面子達も、次々と飛び降りて行く。

「なんか、ワクワクするな!」
「うん、確かに。」
コマチの高揚する気持ちにアオイは同意しつつ、2人も飛び降りる。

「はぁ、もう少しは緊張感持って欲しいんだけどなぁ…」
そうぼやいたサクラも飛び降りる。

「ようやく、討伐作戦が始まるわね…」
自分に言い聞かせたアリサも飛び降りる。

討伐部隊の中で最後の一人になってしまったペコ。
未だに震えているエリート兵士の背後に気配が迫る…

「へぇ?エンキ局長…」
「フフッ…作戦開始だよ!」
改めて宣言したエンキは、躊躇いごとペコを蹴落とす。

「い、イヤァア~!」
「アッ~ハッハ!ペコ君、中々、良い声で叫ぶねぇ…」
ペコの悲鳴とエンキの笑い声が、ザグロス山脈の地に舞い降りていく。
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