戦国タイムトンネル

サクラ近衛将監

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第二章 与えられし能力

2ー7 蒼龍隊 その一

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 わいは、今浜の朝日でガキ大将をやっていた伊助いすけじゃい。
 智福寺ちふくじ界隈の大五郎とは、よう張り合っていたもんじゃ。

 大五郎は、身体がでかくてのぉ。
 張り合うには、わいと晋三しんぞうの二人でないとまず無理じゃったな。

 大五郎の手下たちが左程強くも無かったから、何とか釣り合うておったんじゃ。
 で、いつものように縄張りをかけて取っ組み合いをしようとにらみ合っていたら、そこに若様が来たんじゃ。

 実のところ、そん時は、羽柴の若様とは知らんかったじゃ。
 少なくともワイらよりも良いべべを来た子じゃったから、どこぞの坊ちゃんとは思うておったが、まさか侍の子とは思っていなかったのよ。

 なりは、ワイよりも小さいし、細いから、年下じゃとは思っておった。
 で、急に出て来たそのガキが言うんじゃ。

「なんかワッパ同士でけんかしてもつまらんじゃろ。
 此処は、俺に仕切りを任せんか。
 俺に任せてくれれば、互いに良いようにしちゃる。」

 ワイは、その物言いにカツンと来たな。
 目下の者に云うような言い草じゃったでな。

 ワイらは、誰の手下にもならんとそう思っていたから余計のことじゃ。

「何言うとる。
 訳の分からん者が生意気言うな。」

「おう、どうせ縄張り争いじゃろう?
 そんなケチなことで怪我をしてもつまらんじゃろ。
 どうしても縄張りを明確にしたければ、俺がええ様にしたる。
 だから、任せぇや。」

「その物言いが気に食わん。
 ごちゃごちゃ抜かすなら、お前からシバくぞ。」

「ほう、・・・。
 お前らが俺をシバけるわけがない。
 何とか話し合いで決着を付けてやろうと思うたが、ダメなようじゃな。
 なら、お前ら全員で俺に掛かって来いや。
 そうすれば、誰が上か、ようわかるじゃろう。
 但し、お前らが負けたなら俺の言うことを聞けや。」

 そんな風な言い合いから始まった一対八、いや一対十七の喧嘩やった。
 売られた喧嘩は買わにゃぁ男じゃありゃぁせんじゃろ。

 じゃが、始まって間もなく俺ら全員が地面に転がされておった。
 全員が本気で生意気なクソガキに突っかかって行くんじゃが、いいようにあしらわれてしもうた。

 どんな格好でも捕まえてしまえば、寄ってたかってシバくつもりじゃったが、まったくクソガキに触れられんうちに俺達は地面に転がされるんじゃ。
 しかも転がされる度にかなりの痛みを伴うんじゃぞ。

 突き倒され、腕を引き回されて地面に叩きつけられる。
 何だか夢を見ておる様じゃったわい。

 何度転がされたかわからんものの、それでも最後まで立ち上がったのは、俺と大五郎だけじゃったが、次に突っかかって行って、見事に地べたに叩きつけられて、力尽き、動けんようになった。
 で、結局のところ、俺達は降参した。

 不思議なことに、あれだけ地べたに転がされたというに、誰も怪我はしとらんのじゃ。
 打ち身が少しばかり痛かったのじゃが、それも若様が不思議な術で直してくれた。

 若様は、羽柴与一郎という武家の子じゃった。
 後で聞いた話では、今浜に城を作っている大将の親戚の子らしいから、かなりのエライさんの子やと初めて知ったわい。

 いずれにしろ、その日からその場にいた17名の内6名を除いたワイら11人と、ワイらには属していなかった平蔵が加わって、総勢12名が若様の子分になったんや。

 ◇◇◇◇

 俺の小技能(スキル)については、与一郎の身体に乗り移ってからも、月に一度のペースで増えているし、天正三年の正月には中スキルがひとつ選択可能になった。
 小スキルについては、皐月(5月)に「忍術」、水無月(6月)に「統率」、文月(7月)に「狙撃術」、葉月(8月)に「斥候術」、長月(9月)に「木登り」、神無月(10月)に「岩登り」、霜月(11月)に「隠形術」、師走(12月)に「調伏」、睦月(1月)に「解呪」、如月(2月)に「呪法」、弥生(3月)に「縄術」、卯月(4月)に「鞭術」、皐月(5月)に「傀儡(くぐつ)」を取得した。

 それぞれが初期値の0.01だが、経験を踏むと徐々に数値が上がって来るのを見るのは結構楽しいものだぜ。
 中スキルについては、いずれ要るかもしれないので「語学師」という奴をとったんや。

 語学師と言うスキルは、結構使えるスキルだと思うぜ。
 取得したばかりで左程レベルは高くもない筈だが、古語がよく分かるようになったし、何よりも草書体で読めそうになかった文字が結構読めるようになったよ。

 下手糞へたくそな字が読みにくいのはそのまま変わらずやけどな。
 あとは、朝鮮語、明語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語などが簡単な会話ぐらいなら何となくできそうな気がしているんやが、生憎とその機会が全くない。

 泉州の堺辺りまで行けば、南蛮人もいるのやろうが、さすがに近江にはいないな。
 尾張の熱田も結構な交易はしているようやが、南蛮船や明の船はさすがに入ってこないみたいや。

 若狭あたりなら、朝鮮もしくは明との密貿易もやっているかもしれないなぁ。
 いずれにしろ、ロクに勉強もしていないのに何故に外国語が分かるのかという疑問も生じるやろが、それこそ合理的な説明がつかないから、これも魂の移転に伴う付随効果と思うしかないのやろうな。

 何せ、使えるはずのない魔法のような仙術が使えるんだから、それに比べたら大したことでもないやろ。
 そんなこんなで、間違いなく俺は戦国時代の仙術使い(妖術使い?)になれるみたいやな。

 仙術の「土」、「水」、「火」、「樹」、「風」については、ほぼ一年ほどの修練の成果で、ある程度自在に扱えるようになった。
 威力のほうは大魔法と言えるほどの効果は今のところ出ていないんやが、修練を重ねるたびに目に見えて効果が大きくなるのが分かるから、今後が楽しみなんや。

 陰陽術の「日」、「月」、「幻」、「冥」、「回復・再生」については、まだ効果がやや不明の部分もあるが、主要な術らしきもんは発動ができることを確認している。
 中でも「回復・再生」は、自分にも他人にも効果を及ぼせるということがわかっている。

 実は他人に試すのも何だから、動物を捕まえて色々と試してみたんや。
 そう言えば、平成や令和で、近所の猫やらをいじめ殺していた高校生が問題になっていたケースもあったよな。

 まぁ、ある意味で俺も似たようなマッド・サイエンティストかもしれん。
 俺が使ったのは、その辺に居たドブネズミをモルモット代わりに使ったんや。

 捕まえておりに入れ、最初に陰陽術の「日」性で清浄化をかけ、消毒をしてから、色々傷を与えては治すということを繰り返したんや。
 ネズミの場合、首さえねなければ、心臓が動いている限り治癒し、再生させることができるということがわかったよ。

 尤も、ネズミの足を四本とも切り飛ばして再生させるのは、1日に三回だけ。
 それ以上は、俺の仙気力(?)が持たないみたいなんや。

 尤も、最初は1日に足一本の再生がやっとだったのが、今では、ネズミと言う小動物ながら四本の足を一日に三度も再生できるんだから、かなりレベルが上がったように思う。
 数値的には、積み重ねで月に0.08ほど伸びるから、今現在は回復・再生のレベルが1.5になっている。

 ただ、能力的に以前の五割増しと言うよりも、経験値による完成度は、その二乗に近いのじゃないかと思うよ。
 つまりは初期値の2倍以上ってところかな。

 多分、人の手足の一本ぐらいなら今でも何とか再生できそうな気がしているよ。

 ◇◇◇◇

 当然のことながら、中スキルの治癒師や薬師の能力もアップしているんやで。
 天正三年五月初め、俺は仲間を引き連れて、田村山に向かったよ。

 先ずは縄張りを明確にするために、敷地の周囲に四尺ほどの高さの木製の柵を巡らせた。
 柵の素材は、山に生えていた樹木を木材に加工して造った。

 周囲に柵と浅い空濠をめぐらせ、田村山北東部の山頂付近に小屋を建てれば、それだけで子供たちの秘密基地になるだろう。
 将来的には、ここを拠点とする秘密基地を盛大に造るつもりやけどね。

 やろうと思えば一気にできるけれど、飯場はんば代わりの仮設寮だけを先に造って、手間と時間をかけつつ、天正三年文月(7月)には周囲の柵と建坪40坪ほどの平屋建ての集会所が出来上がったよ。
 また、そのすぐ隣に子供たちが住んで生活できるように、建坪が20坪程度の正規の寮も併せて造った。

 一応、「長浜蒼龍隊」と言う看板を造って、麓の入り口に掲げてあるんだ。
 発足時の隊員は、俺を除いてわずかに12名だけだ。

 近所の子供たちや寺などで居候になっているような孤児を集めて造った隊やからな。
 将来的には、女の子も隊に入れてやる予定だ。

 どちらかと言うと女子はまかない要員の予定なんだが、巴御前みたいな女傑じょけつが居れば戦士としての加入もありやな。
 俺としては、周辺の食えないガキどもを集めて、ここで養うつもりでいる。

 飯を食わす代わりに、それなりの仕事はしてもらうんやで。
 そのためにガキどもが寝食のできる家を造ったというところやな。

 当座の間は、成人した人間を入れるつもりはないけれど、必要に応じて将来的にはありかもな。
 寮の部屋は、食堂等の共用部分を除いて8室あり、全部が二段ベッドを備えた四人部屋なので取り敢えず32名までならすぐにも収容できる。

 人数が増えれば、その都度、寮を増築する予定だ。
 食料は俺が手配することにしているが、原則として二日分程度しか置かない。

 この時代、野盗もいるし、流れ者のごろつきもいる。
 食糧が大量にあると知れば、襲撃してくる恐れもあるからや。
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