巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監

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第七章 面倒事の始まり

7ー2 フレデリカの面倒事 その一

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 俺が側室候補であるケイト嬢とのデートのために王都に滞在している際に、騒動が持ち上がった。
 王都別邸にエルフの男三名が突然訪ねて来たのだった。

 応対は家宰のジャックが為したのだったが、男たちは当初から無礼な態度でしかも強硬だった。
 ファンデンダルク家のメイド長であるフレデリカをすぐさま渡せとほざいたのだ。

 口論の挙句に、エルフの一人がジャックに魔法攻撃を仕掛けた。
 幸か不幸か、時空間領域で待機していた守護ゴーレムは発動せず、ジャックは軽傷を負っただけで済み、警護騎士が飛び出して三人のエルフを取り押さえたのだった。

 一応、王都警備隊に身柄を引き渡して一旦は幕引きとなったのだが、翌日には俺に貴族院から招集がかかった。
 俺が貴族院に行っている間にエルフたちに襲撃されても困るので、別邸には結界を施して俺は貴族院に出かけた。

 貴族院は主として貴族に関わりの有る紛争を調停するなど裁判所の権能もあるが、一部外交問題の相談窓口でもある。
 今回俺が招集された理由は、エルフの国であるシュルツブルドの名誉領事が王都に滞在しており、昨日俺の屋敷で蛮行を働いた三人のエルフたちの弁護活動をしているようだ。

 その名誉領事の申し出により俺が引っ張り出されたわけだが、・・・。

 貴族院の一室で、エルフではないヒト族の者を名誉領事として紹介された。
 貴族院としては外交問題としては考えてはおらず、あくまで俺と名誉領事の架け橋の役目を果たしただけのようだ。

「私は、センティネル・ヴィン・ハウザーと申しまして、シュルツブルドの名誉領事を拝命させていただいております。
 生憎とシュルツブルドとこのジェスタ国とは疎遠故に、シュルツブルドの大使館や公使館若しくは正式な商館は置かれては居りませんが、私が一応その外交代行権限を有しております。
 何はともあれ、ジェスタ上位貴族であるファンデンダルク卿のお屋敷内で、昨日、エルフの華族とその従者三名が何の前触れもなく訪れるという無礼を働き、なおかつ閣下の従者に怪我をさせた不手際について改めてお詫び申し上げます。
 国家間の紛争とはいたしたくなく存じますので、どうかご慈悲をもってお許しをお願い申します。」

「ふむ、ハウザー名誉領事殿の申し入れ故、謝罪を受け入れますが、・・・。
 そもそも貴族の屋敷を訪れて勝手に無礼を働くなど、誠に遺憾の極みにございます。
 いかなる理由があっても貴族の館で無礼を働いた者は即座に切り捨てられても文句の言えない立場であることはご承知でしょうか?」

「はい、私は重々承知しておりますが、エルフ族の気性として往々にして他種族を見下す傾向がございます。
 それゆえに、若気の至りで傍若無人な行いを働いたものと思われますが、何せ余所の国での礼儀にいささか欠ける嫌いがあるのです。」

「確か、三人の中で一番若い方でも138歳であったかと承知していますが、それでも未熟とおっしゃりますか?」

 ハウザー名誉領事は、一瞬唖然とした表情を見せた

「いや、これは手厳しい。
 確かに138歳にもなって未熟とは問題かもしれませぬが、エルフの中では未熟者であることには間違いございません。
 ファンデンダルク伯爵殿は、未だ19歳でございましたな・・・。
 そのような方からご指摘を受けると、名誉領事としては非常に困る立場にはございますが、エルフの場合200歳に届かぬ者は未だ幼き者に例えられるのです。
 但し、伯爵様は何故エルフの年齢を御存じですかな?
 三人から聞き及んだところでは屋敷では出身国と名前しか名乗っていないと聞いておりますが。」

「フム、ご内聞にお願いしたいが、私は鑑定の能力がありますので、騒動の後で捕らえられたもの達を念のために鑑定したので知っています。」

「その138歳のカネン・スポルザー殿がエルフ国の貴族に相当する華族であることもご承知でしょうか?」

「はい、華族の位階としては三番目にあたる少納将しょうなしょうでございましたか・・・。」

「おおっ、エルフの国の位階に詳しき方にお会いしたのは初めてのことにございます。
 では、ご承知かもしれませんが、シュルツブルドの国では、エルフの王の麾下きか大納将だいなしょう中納将ちゅうなしょう、少納将の上位三位階があり、その下に、大将、中将、少将、更に大弁士、中弁士、小弁士の位階がございます。
 大納将から少納将までは、ジェスタ国の公爵、侯爵、伯爵に相当するとお考え下さい。
 大将から少将は、子爵や男爵に相当しますが、大弁士、中弁士、小弁士はどちらかというと准男爵に相当するぐらいでしょうか。
 納将なしょうの位階にある者は、王族の親族となることができる位階でもございます。
 カネン・スポルザー殿は、スーレン・スポルザー大納将の嫡男であり、若くして少納将に抜擢された優秀なお方と聞いております。
 それゆえに、シュルツブルグの第二王女フレデリカ・バイデン様の婚約者にされたと聞いております。」

「ふむ、それはいつの事でしょうか?」

「あー、確か、39年から40年程前の事と聞き及んでおります。」

「そのような古証文、未だ効力があるのですか?」

「えー、まぁ、ヒト族の婚約ならば40年も経てば正しく古証文、ほとんど役には立ちませんが、エルフの国では未だ有効なのです。」

「その婚約話はどのようにして成ったものかご存知ですかな?」

「申し訳ございません。
 その点は私もあずかり知らぬことでして、カネン殿の婚約者が第二王女のフレデリカ殿であることしか知らされておりません。」

「エルフの国の王女の婚約はどのように決められるかご存知か?」

「いえ、生憎と承知しておりません。」

「ヒト族でしかも年端の行かぬ私が言うのも信頼できぬものの一つかもしれませんが、エルフの王女の婚姻は森の守り手ドリアードと精霊樹ユグドラシルが認めた者と婚姻すると聞いておりますが、その点は如何に?」

「ドリアードにユグドラシルですか・・・。
 エルフの神話になりますが、確かにそのような記載はございます。
 しかしながら少なくとも千年以上にわたってユグドラシルからのお告げは無いとも噂話では聞いております。」

「で、王が勝手に王女の嫁ぎ先を決めることがエルフの掟では許されているのですか?」

「あ、いえ、掟では確かにその通りなのですが、お告げも無いまま王女達を未婚のままにはできないので、止むを得ず、王が嫁ぎ先を決めているとの噂は小生も聞き及んでいますが、正式には聞いておりません。」

「フレデリカは、今現在私の庇護下にある者です。
 例え、シュルツブルグの王が来られたにしても、安易には引き渡せません。
 まして当人の望んでいない婚姻話になどもってのほかです。」

「そうは申されましても、放置すればフレデリカ殿を巻き込んで、ジェスタ王国とシュルツブルグ王国のいさかいになる恐れがございます。
 フレデリカ殿の居場所が判明した以上、エルフの王から何らかの指示がございましょうが、それにも逆らうおつもりでございましょうか?」

「逆らうも何も、私はシュルツブルグ王の指揮下には無い。
 まして、さしたる国交のないシュルツブルグに配慮する必要があるのですか?
 私の一存で良いならば、シュルツブルグ王の指示であれ従いません。
 どうしても従わせたくば、ジェスタ国王を動かしなさい。
 ジェスタ国王の命とあればそれが理不尽でない限り私も従うことになる。
 今一つの方法は、森の守り手ドライアドと精霊樹ユグドラシルのお告げを確認することです。
 ドリアードの加護を持つ、森の巫女ならばそれができるでしょう。」

「いや、その・・・。
 これも噂話で確証は無いのですが、森の巫女は久しく選ばれていないとか・・・。
 ですからお告げの確認は無理と思われます。」

「ハウザー殿、私はエルフの国の掟を尊重するからこそ、掟に従って丁重にご意見を申し上げている。
 フレデリカは私の従者であり、尚且つヒト族の国に棲んでいる住民の一人なのだから、エルフと言えど人の掟によって処理するがそれでよろしいか?」

「ヒトの掟によって処理するとは?」

「本人の同意できない婚約など解消する。」

「いや、それは困ります。
 それはシュルツブルグに対する内政干渉です。」

「内政干渉とおっしゃるか。
 では、我が屋敷で無礼を働いた不逞ふていの輩三人は我が手で成敗しても構わないとおっしゃるのかな?」

「それは先ほど謝罪を受け入れられたではありませんか、今更蒸し返されても困ります。」

「では、40年近く前の古証文は蒸し返しても良いという訳ですな。
 エルフの掟に逆らってまで・・・。」

「ファンデンダルク卿は、なぜにそのように抗いますのかがわかりません。
 精霊魔法の使い手たるエルフ一族と争っても益はありませぬぞ。」

「ハウザー殿に一つお教えしておこう。
 フレデリカ殿は森の巫女たる資質を有している者だ。
 ここ五千年程は巫女が現れていないと私も聞き及んでいるが、そもそもそうしているのは王の掟破りの所為ではないのか?
 巫女になる前に婚姻を決めてしまえば巫女にならずじまいでお告げも告げられぬではないのか?
 恐らくは森の守り手ドリアードも精霊樹ユグドラシルも困っているのじゃないのかな。
 巫女が居ないでは、お告げもできない。」

「まさか、そのようなことが・・・。
 ファンデンダルク卿には確証がございますのか?」

「確証という訳では無いが、フレデリカを鑑定で見た時に変わったものがいくつかあった。
 ドリアードの加護があったし、称号にはエルフの家出王女と並んで未確定ながら森の巫女とあった。
 森の巫女になるためには何をすればよいのかはわからぬが、少なくともフレデリカは森の巫女となってお告げを為すかもしれぬのだ。
 にもかかわらず勝手に決めた婚姻で巫女の出現を消すのが王の意図であるなれば、私はフレデリカを守るためにエルフの王とでも敵対するつもりだ。
 無礼者三人についてはどうでも良いが、これ以上王都で騒ぎを起こすなら無礼討ちにすることもあり得る。
 シュルツブルドへは間違いなく私の意向を伝えて欲しい。
 私からの話は以上だ。」

 呆気に取られているハウザー名誉領事を置いて私は貴族院を退去した。
 本来ならば、俺はヴォアールランドへ戻る予定だったのだが、この件で王都滞在を余儀なくされている。

 一応その旨は本宅には知らせているものの、嫁sはご機嫌斜めのようだ。
 その後、1週間ほどして再度貴族院での会談を申し込まれた。

 その間にシュルツブルドまで往復したとも思えないから、エルフは、どうも、冒険者ギルドが保有しているような遠距離通信の魔法か魔道具を有しているようだ。
 開口一番でハウザー名誉領事が言った。

「伯爵の口上は細大漏らさず、シュルツブルドへ連絡いたしました。
 その上で、伯爵への依頼がございました。
 フレデリカ殿が、森の巫女の資質を有していると言うことならば、シュルツブルドに出頭させて確認させる必要があるので、どうかフレデリカ殿を帰国させてほしいとの申し上でございます。
 この件、如何でしょうか?」

「ふむ、フレデリカ殿の帰国については考慮に値するが、一方でそのまま取り込まれる危険性もあるな。
 その点はシュルツブルグではどのように考えているのだ?」

「フレデリカ殿は元々第二王女でございます故、そのままシュルツブルグに居られることが最も自然な形と思われますが?」

「巫女となるか否かを確認もせずに取り込まれるのは困るということなのだよ。
 巫女となるための手法がシュルツブルグではわかっているのかね?」

「それは・・・。
 正直に申し上げてシュルツブルグでは古文書をひっくり返して調べておりますが、巫女の成り方については何も記載がないとのことです。
 最古老のエルフにも口伝を確認させておりますが目ぼしいものは無いと聞き及んでおります。
 向こうとの連絡は先日お会いした日にもついていたのですが、シュルツブルグからの回答が遅れていたので遅くなった次第です。」

「やれやれ、空手形でフレデリカを帰国させろって?
 エルフって本当にいい加減なところがあるねぇ。
 そんなので庇護者が納得して送り出せると思うの?」

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