巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監

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第十章 嫁sの実家

10-9 ウェイン家 その一

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 俺がホブランドへ来てから五年が過ぎた。
 ベルム歴724年晩秋後月の16日が俺の召喚記念日でもある。

 今はベルム歴730年晩初春月の10日であり、四人目の側室であるエリーゼの実家に向かっている途上にある。
 四人目の側室エリーゼは、カラミガランダの南西部に領地を有するウェイン子爵の次女であった。

 ウェイン子爵領のヴォルグは、カラミガランダとの間に山岳地帯があるためにまっすぐに向かえる道路は無く、カラミガランダとの交易は、他の領地二つを経由した迂遠うえんな道筋を辿らねばならないが、他の嫁sの実家よりは近い距離にある。
 エリーゼ、三男マクシミリアン5歳、四女クリスティア4歳、九女ヴェルデ3歳、それにいつも通り伴の者と警護の騎士が一緒だ。

 人数が変わらないことから、例によって車列の規模も変わらない。
 生憎と途中の道路はあまり良くないのだが、カラミガランダを早朝に立って夕刻にはウェイン子爵領ヴォルグの領都フラバカニアに到着した。

 ウェイン子爵領ヴォルグがカラミガランダから比較的近い為に、ここではより長く滞在する余裕もあるのだけれど、他の実家との兼ね合いもあって領主宅には一泊だけでおいとまをする予定なのだ。
 ウェイン子爵領ヴォルグもデュホールユリ戦役の後で元王弟派のヴィクセン伯爵領を中道派クラーレンス伯爵や国王派エーベンリッヒ伯爵と分け合って、領地が加増された口である。

 この元ヴィクセン伯爵領の分割加増による問題は、今のところ特に生じてはいないのだが、旧来の領地も新たに増えた領地もオルテンシュタイン帝国との分水嶺でもあるラノーシェル山脈に接している。
 そうして、かつてヴィクセン伯爵が抱えていたオルテンシュタインとのつなぎをつけられる一族が新たに子爵領に加増された領域に住んでいるのだった。

 この一族は高地での生活をものともしない一族で、地球におけるヒマラヤのシェルパ若しくは富士山や日本アルプス等の高峰登頂に際して重量物の運搬に従事する強力ごうりきのような仕事を易々と行う一族である。
 高地の強い紫外線によって日焼けした肌を持つ小柄な種族だが、力は強く、身の丈の二倍ほどもある荷物を背負って峻険な山道を往来できる一族なのである。

 彼らは自らの一族をトゥワルパと呼んでいる様だ。
 エリーゼの実家訪問に際しての俺の目的の一つは彼らトゥワルパ族に会うことなのだ。

 彼らは独立心が強く、無法な圧力には屈しないだけの戦闘力も有している。
 但し、人口は少なく、女子供を含めても千人ほどの所帯である。

 彼らは強大な敵に対しては、山脈の奥地に引っ込んで抵抗するために、ヴィクセン伯爵も武をもって制するのではなく融和政策で取り込んでいたようだ。
 彼らにとって平地の領主が誰にとって替わろうとも、自分たちの生き方に何ら変化はない。

 平地の民との細々とした交易を行うことで日々の糧を得ていたのである。
 その交易品も絶対に必要だというわけではなく、あれば便利という程度であるために、必要とあればいつでも交易を停止できるようだ。

 高山由来の珍しい植物と奥地で採取できる珍しい鉱石、それに山岳部に住む獣の皮などが彼らの出し得る交易品であるが、平地ではこれが高値を呼んでいるのは確かである。


 ところでエリーゼの子もやはり皆可愛いのだぞ。
 特にヴェルデは生後830日余りで、地球ならば2歳と三か月余りだろうか。

 未だヨチヨチ歩きで名前を呼ばれると笑顔を見せながらトテトテと寄ってくる姿がとても愛らしく、ジジ・ババ(エリーゼの両親)それにオオジジ・オオババ(エリーゼの祖父母)の目尻は下がりっぱなしだ。
 ウェイン子爵領でも過分の歓待を受けた俺だったが、翌朝には子爵邸をお暇した。

 ウェイン子爵には事前の許可を得て、俺はフラバカニアの南西部にあるジャンセル地方に向かっている。
 そこの山岳部入り口にトゥワルパ族との交易場所でもある町、ファーリングトンがある。

 途中の道はかなり険しく、普通の馬なし馬車では無理だったのでかねて用意の無限軌道車両を使用することにした。
 警護の者達は、一緒に来る一名を除いて麓の町の郊外で野営してもらっている。

 無限軌道車両ならばオフロードでも40度程度までの坂道ならばなんとか登れるのだ。
 但し、そこまでの道が細いことが判っているので幅の狭い特殊な車両ではある。

 俺としては警護の騎士も不要なのだが、どうしても一名は連れて行ってくれと部下たちに懇願されたので止む無く同道している。
 この無限軌道車両は、海を走るジェットバイクの二人乗りに小型の三角状の無限軌道を四つ付けたような特殊車両だ。

 運転は止むを得ず今回の派遣隊副隊長のリジェルに任せることにした。
 俺は後部座席にまたがって後方からの警戒に当たる。

 この無限軌道車両中々優秀だぞ。
 40度の斜度ぐらいなら登れるし、20度までの斜面ならば横切ることもできる。
その場回頭もできるし、サスペンションとダンパーの効きが良く、なおかつ座席の水平保持機構が良く作動しているので乗っていても非常に楽ちんである。

 時速20キロ程度しか出ない代物だが、険しい山道を歩くよりははるかに速い。
 山道を登り始めてから概ね1時間で標高1500mほどにある町ファーリングトンに到着した。

 ファーリングトンでは俺やリジェルは明らかに異邦人である。
 肌の色が違いすぎるのだ。

 俺達も多少の日焼けはしていても、日常的に高山で紫外線を浴び続けている住民の肌の色とは全く違うのだ。
 ここの住民は濃い褐色の肌をしているからそんな中では俺やリジェルの肌の白さは際立ってしまう。

 街の入り口では門衛にファーリングトンを訪れた理由を聞かれた。
 俺はウェイン子爵から預かった書面を提示し、この町での交易の様子を確認するとともに、交易相手のトゥワルパ族と話をしたいと伝えたのだった。

「ふむ、ちょうど良い時期に来られましたな。
 今日の午後が、彼らとの交易市が開く日でしてな。
 今日の昼までには彼らが交易のために降りてくるはずです。
 市には誰でも参加できますし、その折にトゥワルパ族とも話ができましょう。
 但し、トゥワルパ族の者は少数を除き皆片言の言葉しか話せません。
 彼ら独自の言語を持っていましてな、我らに彼らの言葉はわかりません。
 彼らとの接触については特段の許可は必要ありませんが、領主様の書状をお持ちのようですから、代官所にも立ち寄られてはいかがでしょうか?
 代官所は町の中央にあり、その前の広場が交易場所になっていますから。」

「いや、色々と教えていただき感謝いたします。
 では、代官所に行きその後で交易市に行ってみることにしましょう。」

 ここでは騒ぎを引き起こしたくはないので俺は冒険者の風体をしているし、リジェルも同様の格好だ。
 俺たちはゆっくりと町の中を進み、中央の広場に到達した。
 
 広場ではすでに交易の準備が始まっていたが、未だトゥワルパ族は到着していないようだ。
 あまり必要はないのだが代官所に顔を出すことにした。

 当然のことながら俺たちの乗る無限軌道車両は人目を引いた。
 馬なし馬車ですら珍しいのに、無限軌道を持った車両など珍奇に違いない。

 俺は一人で代官所に入り、代官と面会して挨拶をしてきたのだが、代官にだけは身分を明かしておいた。
 戻るとリジェルが多数の商人に囲まれて閉口していたようだ。

 単純に売ってはくれまいかということのようだが、勿論断った。
 さもないと俺たちの帰路に困ることになる。

 俺が広場に戻って間もなく広場の北西方向の山道からトゥワルパ族が下ってくるのが見えた。
 20名ほどの隊列を組んでいるのだがそのいずれもが山のような荷物を背負っているので、遠目にはまるで荷物が動いているようにも見える。

 なるほど、確かにシェルパであり、強力の様だ。
 彼らは広場の一角に到着するとすぐに手慣れた様子で店を開き始めた。

 するとそこに商人たちが集まるのだった。
 この交易市では定価などというものは存在しない。

 特にトゥワルパ族の持ち込む品は、単純にその場での「競り」で決まる。
 前の領主のヴィクセン伯爵の時代には代官が暗躍していて、トゥワルパ族からの買取は代官が専属で行っていたようだが、領主がウェイン子爵に変わってから以降は、需要と供給に任せ、商人達の交渉に任せているようである。

 その為にトゥワルパ族からの買取価格は従来の五倍近くにも跳ね上がっているのだが、商人達が出費する金は左程高くはないのだった。
 むしろかつての代官が行っていた売り惜しみのような意図的な価格統制が無いだけに、商人達の儲けも増えているのだった。

 如何にヴィクセン伯爵時代の代官が巨利をむさぼっていたかがわかるというものだ。
 トゥワルパ族も収入が増えることで困ることは無いはずだった。

 俺はトゥワルパ族の交易隊の頭目と面会した。
 男は身長が精々150センチ程度、肩幅が広く筋肉質で何の予備知識もなくこの男を見たなら、絶対にドワーフと勘違いするはずだ。
 
 ほかのトゥワルパ族も、同じような体型ではあるんだぜ。
 このホブランドにおける、ドワーフは髭もじゃだし、体型もどちらかというとビヤ樽風だから寸胴に近いトゥワルパ族の体型とは若干異なる。

 ドワーフの髪は茶髪一択なんだが、トゥワルパ族は燃えるような赤毛だな。
 従ってドワーフを知っている者が見間違えることは無いだろう。

「私は、リューマという。
 この場所からなら東の遠方にあるカラミガランダの領主をしている者だ。
 つかぬことを聞くが、あなたたちトゥワルパで困っていることは無いか?」

 俺はトゥワルパ族の言語で話していた。

「ン、何故、儂らの言葉が判る?
 お前たちヴァラヴィアクティ大きな人で儂らの言葉を知っているものは少ない。
 知っていても片言のはずだが・・・。
 トゥワルパの里に行ったことがあるのか?」

 一応、トゥワルパ族の里にも行ったことはあるんだが、秘密の訪問であり、誰にも姿は見られていない。
 飛空艇で上空に行き、インヴィジブルと認識疎外を掛けて地上に降り立ち、転移の目標ポイントを確認、その上で監視のためにδ型ゴーレム三体を配置しているんだ。

 だから、トゥワルパ族の里で、今現在、何が起きているかも十分承知しているのだが、それをこの男バジャに教えてやる必要は無いだろう。

「いや、一度もないぞ。
 俺は、いろいろな言葉が判る能力を持っているんだ。
 だからトゥワルパ族の言葉もわかる。それだけの話だ。」

「ほう、珍しいな・・・・。
 山の峰の向こうの国でも儂らの言葉を流ちょうに話せる奴はいない。
 そんなお主なら儂らの悩みを聞いてもらっても良いか・・・。
 実はな、儂らの里で奇妙な流行り病が起きたのじゃ。
 この町に住む治癒師にも無理を言って診てもらったが、治癒魔法では治らぬらしい。
 薬師のところにも尋ねたのだが、儂らのところで起きている病についての知識は無く、無論それに効き目のありそうな薬も無いようだ。
 お主、誰ぞ、有能な薬師若しくは治癒師は知らんか?」

「さて、有能かどうかは知らぬが、俺が治癒師でもあり薬師でもある。
 病の症状を聞かせてくれないか?
 場合によっては、力になることができるやもしれぬ。」

「そうか、儂は、バジャという。
 今回の交易隊の隊長だ。
 流行り病の症状は食中毒のような症状だが、最初に腹痛が起き、次に水のような下痢や屁が出る。
 そうして病人は10日ほど苦しんで死ぬことになるんだが、何故か流行るんだ。
 我らの仲間の50人ほどが既に亡くなっておる。
 老人ならやむを得ないとも思うが、次代を担う子供までが犠牲になっているのは耐えられんのだ。
 お主の力で何とかならんか?」

「流行り病ならば、ここに来ているトゥワルパ族の中にも患者がいるかも知れぬな。
 全員を紹介してくれるか?
 一人一人確認する。
 取り敢えず、バジャ、あんたは大丈夫だぞ。」

「ウン、何だ?
 何もしないでそんなことが判るのか?」

「あぁ、まぁな、他の人には内緒だぞ。
 俺は鑑定を掛けることで病持ちかどうかがわかる。」

 その後一人ずつトゥワルパ族を見て回った。
 そうしてそのうちの二人が流行り病の宿主とわかった。

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 7月14日、一部の字句修正を行いました。

   By サクラ近衛将監

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