執事は男装令嬢!?

葉月

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六話

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 ウィステリアの部屋の扉の前に立ち、軽く扉をコツコツと叩く音がした。

「ウィステリアお嬢様。失礼致します。今日のお部屋の担当は、私デリアが執り行わせていただきます。

「・・・デリア。では、よろしくお願いします。掃除の邪魔になりますから、ロゼそろそろ行きましょうか。」

 早く渡したくて、見せたくて表情が綻ぶ。いそいそと髪飾りを小箱の中へ仕舞い込むと、テーブルの引き出しに入れる。お茶の作法を学ぶ為、ロゼを連れて中庭へと歩き出した。

「今日の、お茶は最近お母様が力を注いでいるお茶と聞きましたわ。楽しみですね。」

 お茶の作法も終わり、足早で部屋に戻ってきては、作法の振り返りをしつつ、作法で余ったお菓子に手を伸ばしていた。

「あのお菓子美味しかったですね。見た目は真っ白く雪の様にふわふわかと思いきや、口の中ですぐ蕩けてなくなってしまいました。また、食べられるでしょうか。」

 あの味を、想像するだけでも顔が緩んでしまいそうになる。
 
 お茶請けにでたお菓子は、砂糖と卵の卵白から作られている。材料は、その二つだけ。檸檬や苺の果汁を混ぜたりしても美味しい。

「いつか作ってみたいです。オットーが話すには、美味しさのコツは卵白が重要だと言っていましたね。何でお菓子はこんなにも美味しくてお茶に合うのでしょう!」
 
 オットーとは、お父様専属の侍従である。髪は、落ち着いたモスグリーン色で、瞳は灰色をしている。

「オットーから淑女の振る舞いについては、まだまだとお叱りを頂いてしまいましたロゼ!でも、お茶の作法については合格点でした。飲む楽しさもそうですが、お茶を淹れる動作は目を奪われますね。私もいつかオットーの様に淹れてみたいものです。オットーの手作りお菓子はいつも美味しいですわ。」

 作法も終わり、ターニャに髪飾り渡そうと引き出しを開けると、髪飾りが入った小箱が無い事に気づく。

「入れたはずの小箱が無いですわ!!」 

 焦ったウィステリアは、泣きそうになりながら、部屋中探し回ったが小箱は一向に出てこない。

「何で、何で小箱がありませんの・・・」

 入れた場所に間違いはなく、ウィステリアは自室から髪飾りを持ち出してはいない。

 扉を叩く音がしたが、ウィステリアは、髪飾りのことで頭がいっぱいになっていた。

 泣きながらロゼを抱いていると、扉を開けて入ってくる侍女デリアに目を向けた。

 ウィステリアは目を疑った。デリアの髪に、三日月の形をした髪飾りが着けられている。それは、ターニャに贈るはずの髪飾りであった。何故なら、三日月の形以外に、小さな石が三つほど輝いていたからだ。

「・・・・デリア!?そ、その髪飾りは・・・・!」

 ウィステリアが、髪飾りの件を聞こうとしてもデリアは一切ウィステリアに目を向けず、お茶の準備だけして帰っていった。

(ふふっ。あの顔。やはりお嬢様は泣き顔が似合っていますね。お嬢様には不幸が似合っているわ。)

 嘲笑い黒い笑顔を浮かべては、ウィステリアを見やる。装飾品を盗み出す事が快感に繋がっていき、途中からやめられなくなってしまった。

 デリアに髪飾りの事を聞きたく、探していると、デリアがお母様に話かけられている。

「お母様と何を話しているのでしょうか。」

 見つからない様にそっと近づいていくと、話の内容は衝撃的なものであった。

「あら!?その髪飾り。もしかしたらウィステリアからの贈り物かしら。」

「はい!奥様。この髪飾りは、ウィステリアお嬢様から頂いたものなんです。この様な素敵な物を侍女である私に贈ってくださるなんて大変喜ばしい限りです。」

 ウィステリアから盗みを働いた事を、バレない様に咄嗟に嘘をついたのであった。泣き顔が見たく、返そうと部屋に行こうとした所、フィーアに出会ってしまった。

(奥様に髪飾りの、件を尋ねられた時は、流石に危なかったわ。)

 デリアは、この事をウィステリアに聞かれているとは思いにも寄らなかった。

「・・・・・!!」

 デリアが部屋に入り、小物類を持ち出していたのは薄々と感じてはいた。ターニャに贈る物を持ち出し、あたかも自分が貰った物と言い出したのは言葉が出なかった。

 ショックから涙が溢れだし、視界はぼやけ眼を腫らしながら部屋に戻った。だが、引き出しの中に入っているはずの小箱は何度探しても出てこない。
 
 無視だけならまだ耐えられた。ターニャに贈るはずである髪飾りは、もう戻って来ないと思うと、また涙が溢れてだした。

「どうしてそこまで、私に意地悪するの・・・・。」
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