事後

さくら優

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6.その後

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『はぁ⋯、あっ、雅ぃ⋯』

雅は、イヤフォン越しに聞こえてくる壱琉の嬌声に、思わず頰が緩むのを隠すようにハンドルに突っ伏した。

ついさっきまで、いつものように壱琉の部屋で2人で過ごし、今は近くの駐車場にいる。

あれから、盗聴器はもとの場所に相変わらず設置されている。もはや壱琉も知っているので盗聴ではないのかもしれないが。

これについては、2人の中でルールを設けた上でそのまま設置されることになった。

壱琉から言われたルールは、1つは、他の人には決して聞かせないこと。これについては言われるまでもない。壱琉の可愛い声を聞かせるなど、頼まれたって嫌だった。

例の壱琉と声がそっくりな声優が出ているドラマCD、あれすらも雅にとっては結構苦痛なのだ。壱琉にそっくりな声を、不特定多数の人間が聞いている。あれは似ているだけで壱琉本人ではないと、すでに1万回くらい自分に言い聞かせている気がする。

そしてもう1つのルールは、雅でも聞いていい時間は壱琉の部屋を出た後の1時間のみ。それ以上聞いてはいけない。

まあこれについては、こっそり聞いていても言わなければバレないかもしれないが、そこは自分も守るつもりだった。信じてくれている壱琉を裏切る行為はしたくない。

それに、この1時間があれば充分だという思いもある。

『あっ、や、あ⋯っ』

平日、雅が帰った後、壱琉は時々こうして、雅が聞いているのをわかった上で自慰をしている。おそらく恥ずかしいのだろう、以前より頻度は減ったが。

『んぅ⋯、あ、雅⋯、すき⋯っ』
「――っ、」

不意打ちで一際甘い告白が聞こえてきて、雅は思わずハンドルに手を叩きつけた。

やばい。今すぐ戻ってもう1度壱琉を抱きたい。

しかし、明日も仕事がある。明日は休むわけにはいかないし、壱琉だって突然仕事を休むのは、壱琉にとっても同じ会社の人たちにとっても迷惑だろう。何よりこんなことで突然休むなんて、社会人としてあるまじきことだ。

雅はイヤフォンを外すと、心を落ち着かせるために何度か深呼吸をする。それから、早く週末にならないかと、スマホに表示されている日付を忌々しげに見つめて溜息を吐いた。

END.
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