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1・男はただ、誰かと話したかっただけなのに。

6.奥の手。

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 上体が反って腹筋が伸びきったところに、前足の三日月蹴りを突き刺す。

「ゴェ……ッ」

 今度は身体をくの字に折り曲げて、大口を開けて息を吐き出す。

 その大口を顎ごと潰そうと膝蹴りの為の重心移動を行おうとした時。

 

 咄嗟に膝を抜いて、うつ伏せに倒れ込むように避けるが、左肩から背中に掠って焼ける。

 畜生痛えマジかよこいつ、口からも出せんのかそれ。どうなってんだ、そんな熱光線を口内に含んだら粘膜焼けただれるだろ。
 ふざけんなよライトなファンタジー世界、言葉通じねえくせにわけわかんねえとこご都合主義出しやがって……。

 しかしこの体勢は不味い、ここから出せる技じゃこいつには通らな――。

 迷った隙は見逃しては貰えず、俺はそのまま蹴り飛ばされる。

 足の鋭い爪で裂かれつつ、盛大に吹っ飛ぶ。

 肋が二本完全に折れた。
 裂かれた傷も浅くねえ。
 背中を焼かれて動きが悪い。

 さらに距離を取られた。これが最悪だ。

「ガムブラァア――――――ッ!」

 ドラゴン野郎はそこから、例の熱光線を連射してくる。

 半身で構えて、足運びで躱す。

 手のひらから直線的に発射される。
 薙ぎ払いで撃たれても、動きを読み切れば躱しきれる。
 両手から時間差だったり多角的に同時で放ったり、巧みじゃねえか。この距離がこいつの距離か。

 畜生ギリギリだ。
 辛うじて避け切れてはいるが近づけねえ。
 じりじりと掠って肉を焼いていく、運動量が多すぎてスタミナが削られる。

 くっそ、これ死ぬぞ俺。

 だが、まずは避け切れ。
 焦らしてイラつかせる、雑になったところを漬け込む。集中しろ、まだある。

 感覚を研ぎ澄まして、反応して行く。
 速射や連射は出来るようだが起こりを消すのは出来ねえようだ。

 両手、二本の射線に集中しろ。

 頭を振って、顔を追わせる。
 誘え、撃たせろ、少しずつ距離を誤魔化して近づけ。

 これ以上なく集中し、山の景色が白く解けて相手の起こりにのみ反応する機械と化す。

 

 舐めていた、こいつは修練が足りないただの馬鹿強い素人だと舐めていた。ドラゴン野郎……いやドラゴンさんだな。認めてやる、こいつはこいつなりの理合をちゃんと持っている。

 この距離での戦闘においてはこいつの方が一枚上手だった。こういう戦いに慣れていた。

 両手に集中したところ、両の手から厳しい角度で熱光線が放たれ完全に回避行動終わりで重心が片足に乗り切ったそのタイミングで。

 奴は口を開いて、の熱光線を放とうとしていた。

 三射同時も出来たのか。
 そうか、本来あの口からの光線は奥の手であり見せるつもりはない必殺の戦法だったのか。
 さっきのは完全に緊急措置として放ったんだ。

 避けられない、これは詰んだ――――。
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