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第4章・立ち上がったのは史上最凶の悪役令嬢。

16悪役令嬢として。

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 後は騎士の短槍たんそうけた際に切られた髪をお嬢様が整えて下さるとのことで、お任せしたら片側だけ刈り上げられて脱色され黒髪から金髪にされた。

「金髪アシメかっこいいじゃない! 似合うわよ!」

 と、お嬢様がお喜びになられるので、このアバンギャルドな髪型も受け入れることにした。

 変装目的なのでこのくらいがらっと変えてしまった方が良いのかもしれない。

 ちなみにお嬢様は背中の真ん中まであった髪を肩くらいまでばっさり切って、淡い茶髪を黒に染めていた。

「あっ、そうそう金策の目処が立ったわよ」

 僕の口へシチューを運びながらお嬢様は思い出したように語り出す。

 おお、それはありがたい。
 モグリの医者に治療費を踏んだくられたおかげで、貯えはかなり減ってしまった。



「ブグゴッ⁉」

 お嬢様の衝撃的な金策方法に、シチューを吹き出しそうになったのを無理やり口を塞いで封印する。

 き、き……貴族家を乗っ取る? ええ……?

 まあ既に、これ以上なく僕らは犯罪者で逃亡犯なのだから悪の道を進むしかないのだけれども。

「まあ知識を売って恩を売って、貴族に身分と生活を保証させる。こないだの爆弾みたいな簡単なものなら私でも作れるしね。私としては美味しいパンの焼き方を売れた方が楽で良いのだけれど」

 むせる僕をよそに淡々とお嬢様は続く。

 あの爆弾か……、まあ貴族家に乗り込んで大暴れして制圧するみたいな話よりはマシか。マシだよな?

「あと多分私以外に異世界転生者がいるから、その人物を見つけ出したいわね」

 さらにさらりと、お嬢様は衝撃発言を続ける。

 異世界転生者が他にも……? 百年以上異世界転生者は現れていなかったというのに……。

「あの騎士ディーン・プラティナは、私が異世界転生者である可能性を探るために単独で動いていた。そんな薄い可能性を何も無く追うほど暇だとも思えない。多分あの騎士は他の異世界転生者を知っていた、だから廃屋で彼は隙を見せた」

 僕の頭に浮かぶ疑問符に答えるようにお嬢様は語る。

「ここ数日で知ったんだけどこの国には異世界転生者保護法って法律があるみたいなのよね。確かに国家的な影響力を考えたら、騎士が動くというのは納得できるけど厄介だわ」

 ため息混じりにそう言って。



 ゾッとする一言を漏らす。

 もうかつての、清廉潔白で品行方正なお嬢様はいない。

 ディアマンテ伯爵邸と共に、燃えて崩れた。

 壊れてしまった僕らは、この奇跡にすがるしかない。

 この後、貴族家を乗っ取り財と生活拠点を手にして、他の異世界転生者を探すためにかつてお嬢様が通っていた学園に潜り込んだり。
 異世界転生者を見つけるも化物騎士ディーン・プラティナ付きだったり。

 まあマジに色々とあるんだけど。
 そんなこと、知ったこっちゃあない。

 僕はただ、お嬢様が再び立ち上がったことが嬉しい。

 それが例え、いや事実として。
 悪役令嬢として立ち上がったのだとしても。
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