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第1章・辺境へ追放されたのはメインヒロイン。
10十二年前の事件。
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虐待……いや、イザベラの過去のような悪意に虐げられてきたものではなかったように感じる。
初日に見た上裸には傷も無かったし肉付きも肌ツヤからは、少なくとも暴力的なものや食事を制限されているようなことは感じ取れなかった。
ズレていたり度々会話に齟齬があったりはするけど、特に教養や品性に問題があるようには思えない。
長い入院生活…………いや、どう診察しても心因性の呼吸器疾患以外は基本的に健康だった。
年齢的にも犯罪者として投獄されていたとかも考えられない。
彼の言い方から察するに、自主的に引きこもっていたとも思えない。かなり不本意だったように感じられた。
多分、彼の言葉に嘘はない。
マジに十二年間を家から出ないで育ったんだと思う。
ありえない…………なんてことは思わない。
彼は息絶え絶えに言っていた。
何者にも。
実にノンプリ的というか、シナリオライターのYuKiCo氏らしいエピソードだ。
ノンプリはサブタイの通り、何者でもない若者たちが己の無力さとか弱さに足掻きながら恋と共に向き合って成長して達成する物語だ。
十二年も世界から隔絶されていた美少年が世界とのズレに悩む、というのはノンプリのド真ん中といえる。
さらにこの十二年間の隔絶ってのがまた、YuKiCo氏が書きそうな設定だ。
軍人のベルデ・アダムスキーが王家からの極秘指令でたった一人で九年をかけてボロボロになりながら、悪事を働いて国に仇なす貴族を粛清して回ったり。
他の作品だけど、生まれてから信仰の象徴と女神に祈る装置である聖女として生まれてからずっと教会で生きてきた壊れた少女だったり。
これもまた他の作品だけど、自身を救ってくれた先生を待つ為に凶悪なモンスターから町を十六年間守り続けたギルド職員だったり。
YuKiCo氏は人格形成に影響を及ぼすほどの長年の孤立や孤独からの解放というカタルシスを作中に入れ込みがちなのである。
容姿においても非常にノンプリ的というか、キャラデザ原案のイラストレーターである柿山しぶたろう先生の描きそうなビジュアルだ。
柿山しぶたろう先生の画集はほとんど持っていて、画集を元に立体物を何個も作ってきたので傾向というか癖はかなり理解している。
ゲームには居なかったのに、ノンプリのメインキャラ級の設定とビジュアル……。
私は机の鍵付き引き出しから、ノンプリの時系列をまとめたノートを取り出して広げる。
十二年間……、ノンプリ本編はメリィベルが十七歳になる年の四月から九月頃までの半年間の出来事だ。
もちろんルートごとに過去編もあって、その半年間で起こる出来事にはもっと前から原因というか起点があったりもする。
ネモ氏が世界から切り離されることになる出来後の原因は、なんなのか。
十二年前となると、私が五歳の頃。
まだ前世の記憶は取り戻していない、メリィベルがメリィベルとして生きていた。
イザベラも五歳、ちょうど実母が亡くなってムーライト伯爵家で暮らし始めた頃。
他のメインキャラの情報でも特に何かあった時じゃあな…………。
「いや……?」
私は年表をなぞって読んでいると、ひとつの項目に引っかかる。
それは今から九年前、軍人ベルデ・アダムスキーが十五歳の時に王家より国に仇なす貴族家への粛清任務を言い渡されたシーン。
ノンプリ本編では詳細な描写はなくてアダムスキーの語りのみだったけど、YuKiCo氏が執筆したifノベライズでの回想シーンで王妃様から直に任務を言い渡されたシーンがある。
そこで王妃様は「三年前の事件以来王家は危機に瀕している~」みたいな話をしていた気がする。
九年前の時点からの三年前、つまり今から十二年前にあたる。
「……この事件って言及されていない……か」
私はあらゆる媒体のノンプリのシナリオや制作スタッフや声優陣インタビューを思い返して呟く。
十二年前の事件。
これは結局語られていない出来事だ。
初日に見た上裸には傷も無かったし肉付きも肌ツヤからは、少なくとも暴力的なものや食事を制限されているようなことは感じ取れなかった。
ズレていたり度々会話に齟齬があったりはするけど、特に教養や品性に問題があるようには思えない。
長い入院生活…………いや、どう診察しても心因性の呼吸器疾患以外は基本的に健康だった。
年齢的にも犯罪者として投獄されていたとかも考えられない。
彼の言い方から察するに、自主的に引きこもっていたとも思えない。かなり不本意だったように感じられた。
多分、彼の言葉に嘘はない。
マジに十二年間を家から出ないで育ったんだと思う。
ありえない…………なんてことは思わない。
彼は息絶え絶えに言っていた。
何者にも。
実にノンプリ的というか、シナリオライターのYuKiCo氏らしいエピソードだ。
ノンプリはサブタイの通り、何者でもない若者たちが己の無力さとか弱さに足掻きながら恋と共に向き合って成長して達成する物語だ。
十二年も世界から隔絶されていた美少年が世界とのズレに悩む、というのはノンプリのド真ん中といえる。
さらにこの十二年間の隔絶ってのがまた、YuKiCo氏が書きそうな設定だ。
軍人のベルデ・アダムスキーが王家からの極秘指令でたった一人で九年をかけてボロボロになりながら、悪事を働いて国に仇なす貴族を粛清して回ったり。
他の作品だけど、生まれてから信仰の象徴と女神に祈る装置である聖女として生まれてからずっと教会で生きてきた壊れた少女だったり。
これもまた他の作品だけど、自身を救ってくれた先生を待つ為に凶悪なモンスターから町を十六年間守り続けたギルド職員だったり。
YuKiCo氏は人格形成に影響を及ぼすほどの長年の孤立や孤独からの解放というカタルシスを作中に入れ込みがちなのである。
容姿においても非常にノンプリ的というか、キャラデザ原案のイラストレーターである柿山しぶたろう先生の描きそうなビジュアルだ。
柿山しぶたろう先生の画集はほとんど持っていて、画集を元に立体物を何個も作ってきたので傾向というか癖はかなり理解している。
ゲームには居なかったのに、ノンプリのメインキャラ級の設定とビジュアル……。
私は机の鍵付き引き出しから、ノンプリの時系列をまとめたノートを取り出して広げる。
十二年間……、ノンプリ本編はメリィベルが十七歳になる年の四月から九月頃までの半年間の出来事だ。
もちろんルートごとに過去編もあって、その半年間で起こる出来事にはもっと前から原因というか起点があったりもする。
ネモ氏が世界から切り離されることになる出来後の原因は、なんなのか。
十二年前となると、私が五歳の頃。
まだ前世の記憶は取り戻していない、メリィベルがメリィベルとして生きていた。
イザベラも五歳、ちょうど実母が亡くなってムーライト伯爵家で暮らし始めた頃。
他のメインキャラの情報でも特に何かあった時じゃあな…………。
「いや……?」
私は年表をなぞって読んでいると、ひとつの項目に引っかかる。
それは今から九年前、軍人ベルデ・アダムスキーが十五歳の時に王家より国に仇なす貴族家への粛清任務を言い渡されたシーン。
ノンプリ本編では詳細な描写はなくてアダムスキーの語りのみだったけど、YuKiCo氏が執筆したifノベライズでの回想シーンで王妃様から直に任務を言い渡されたシーンがある。
そこで王妃様は「三年前の事件以来王家は危機に瀕している~」みたいな話をしていた気がする。
九年前の時点からの三年前、つまり今から十二年前にあたる。
「……この事件って言及されていない……か」
私はあらゆる媒体のノンプリのシナリオや制作スタッフや声優陣インタビューを思い返して呟く。
十二年前の事件。
これは結局語られていない出来事だ。
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