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第一部5・筋肉は全ての悩みを解決してはくれないが半分以上は解決できる。【全4節】
02筋肉だけじゃどうにもならないことだ。
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母は俺が子供の頃に病気で死んだ。
親父は今、一人で木こりをしている。
森でいつものように斧を振っていると、いつも森には居ない強力な魔物が現れた。
親父も大概の馬鹿力で、大抵の魔物は前蹴り一発で蹴散らしてきた。斧が錆びるから魔物相手には斧は使わないと、豪語していた。
そんな親父が、魔物に負けた。
斧をへし折られ、肺を抉られ、もう長くない。
西の大討伐で北でも冒険者が減り、討ち漏らしが森に逃げてきたのだろう。
多分親父は死ぬ。
村へ戻らざる得なかった。
でも、この町を、クロウさんとメリッサを、見捨てることが出来なかった。
俺は臆病者だ。そして、卑怯者だ。
悩んだ末に俺は、クロウさんに相談をした。
クロウさんは少し驚いて、直ぐに。
「行けよ。ここは任せろ、町のことはギルドが背負うべきことだ。親や故郷のことは、おまえにしか背負えない」
そうやって俺を送り出してくれた。
わかっていた。
わかっていたんだ。
クロウさんなら必ず、そう言ってくれるとわかっていて相談をした。
自分で決める勇気がないから、クロウさんの強さに甘えたんだ。
俺は臆病者で卑怯者だ。
冒険者でも、英雄でも、勇敢でもない。
トーンの町を出て、北の村へと戻ったその日に親父は死んだ。
「……遅いんだ馬鹿者、だが、よく逃げずに来た……強くなった……」
そう言い残してから昏睡し、夜が明ける前にこの世を去った。
色々と思うところもあるが、色々とやることもある。
葬式に埋葬、親父が倒れて止まってた伐採。
冬越しの薪を用意する為に、親父が乾燥に回してた木をひたすら割った。
とりあえず薪は何とかなった。
これで冬は越せるが、懸念はある。
例の魔物は親父が必死の覚悟で食らわせた一撃により、負傷して逃げたらしい。
魔物の回復力なら、そろそろ復活していて然りだ。魔物は狡猾、恐らく親父を殺してこの村に今防衛能力がないとわかっている。
食い損ねた人間を食いにやってくる。
だから俺は戻ってきた。
故郷くらい守れなくては英雄にはなれない。
しかし、俺は臆病者で弱虫で卑怯者。
俺は一人で魔物と戦ったことがない。
いつだってリコーの姉貴の防御と、バリィの兄貴のサポートがあって、一撃で決めることが出来た。
一人か……、怖ぇ……。
キャミィのように回復役でありながら、一人で魔物を拳で殴り殺すなんてことは俺には出来ない。
いや身体能力と言うか筋力で言えば出来るはずなのだけれど、筋肉だけじゃどうにもならないことだ。
でもやるしかない。
村で加工した硬い木を加工して盾を作り、リコーの姉貴を真似て付け焼き刃だが装備する。
村のみんなから魔物の特徴を聞き、バリィの兄貴よろしく戦力分析をして。
クロウさんに習った立ち回りを当てはめる。
あとはメリッサのような、憤怒を狂気にも近い勇気に変えて。
「……さあ、ここで畳むぞ」
そう呟き、斧を担いで森へと入った。
基本的に遭遇戦は先手必勝だ。
特に俺みたいな近接攻撃役は、後手に回ると中遠距離攻撃で削り殺される。
囮を作り、罠を貼り、身を隠す。
まあやたらデカい俺には向いていないことこの上ないが、一撃を狙うのならこの作戦しかない。
ギリギリまで引き付けて、盾を構えて突っ込んで一撃で頭を叩き割る。
囮に騙され罠にかかるのをひたすら待つ。
体力には自信がある、気も長い方だから待つのは得意だ。
木から鳥を何羽か血抜きをしながら吊るしていた場所を穴の中から匂い消しに、木の粉末や泥を被って迷彩にして身を隠しながら夕暮れから夜中まで待ち続けた。
親父は今、一人で木こりをしている。
森でいつものように斧を振っていると、いつも森には居ない強力な魔物が現れた。
親父も大概の馬鹿力で、大抵の魔物は前蹴り一発で蹴散らしてきた。斧が錆びるから魔物相手には斧は使わないと、豪語していた。
そんな親父が、魔物に負けた。
斧をへし折られ、肺を抉られ、もう長くない。
西の大討伐で北でも冒険者が減り、討ち漏らしが森に逃げてきたのだろう。
多分親父は死ぬ。
村へ戻らざる得なかった。
でも、この町を、クロウさんとメリッサを、見捨てることが出来なかった。
俺は臆病者だ。そして、卑怯者だ。
悩んだ末に俺は、クロウさんに相談をした。
クロウさんは少し驚いて、直ぐに。
「行けよ。ここは任せろ、町のことはギルドが背負うべきことだ。親や故郷のことは、おまえにしか背負えない」
そうやって俺を送り出してくれた。
わかっていた。
わかっていたんだ。
クロウさんなら必ず、そう言ってくれるとわかっていて相談をした。
自分で決める勇気がないから、クロウさんの強さに甘えたんだ。
俺は臆病者で卑怯者だ。
冒険者でも、英雄でも、勇敢でもない。
トーンの町を出て、北の村へと戻ったその日に親父は死んだ。
「……遅いんだ馬鹿者、だが、よく逃げずに来た……強くなった……」
そう言い残してから昏睡し、夜が明ける前にこの世を去った。
色々と思うところもあるが、色々とやることもある。
葬式に埋葬、親父が倒れて止まってた伐採。
冬越しの薪を用意する為に、親父が乾燥に回してた木をひたすら割った。
とりあえず薪は何とかなった。
これで冬は越せるが、懸念はある。
例の魔物は親父が必死の覚悟で食らわせた一撃により、負傷して逃げたらしい。
魔物の回復力なら、そろそろ復活していて然りだ。魔物は狡猾、恐らく親父を殺してこの村に今防衛能力がないとわかっている。
食い損ねた人間を食いにやってくる。
だから俺は戻ってきた。
故郷くらい守れなくては英雄にはなれない。
しかし、俺は臆病者で弱虫で卑怯者。
俺は一人で魔物と戦ったことがない。
いつだってリコーの姉貴の防御と、バリィの兄貴のサポートがあって、一撃で決めることが出来た。
一人か……、怖ぇ……。
キャミィのように回復役でありながら、一人で魔物を拳で殴り殺すなんてことは俺には出来ない。
いや身体能力と言うか筋力で言えば出来るはずなのだけれど、筋肉だけじゃどうにもならないことだ。
でもやるしかない。
村で加工した硬い木を加工して盾を作り、リコーの姉貴を真似て付け焼き刃だが装備する。
村のみんなから魔物の特徴を聞き、バリィの兄貴よろしく戦力分析をして。
クロウさんに習った立ち回りを当てはめる。
あとはメリッサのような、憤怒を狂気にも近い勇気に変えて。
「……さあ、ここで畳むぞ」
そう呟き、斧を担いで森へと入った。
基本的に遭遇戦は先手必勝だ。
特に俺みたいな近接攻撃役は、後手に回ると中遠距離攻撃で削り殺される。
囮を作り、罠を貼り、身を隠す。
まあやたらデカい俺には向いていないことこの上ないが、一撃を狙うのならこの作戦しかない。
ギリギリまで引き付けて、盾を構えて突っ込んで一撃で頭を叩き割る。
囮に騙され罠にかかるのをひたすら待つ。
体力には自信がある、気も長い方だから待つのは得意だ。
木から鳥を何羽か血抜きをしながら吊るしていた場所を穴の中から匂い消しに、木の粉末や泥を被って迷彩にして身を隠しながら夕暮れから夜中まで待ち続けた。
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