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第一部5・筋肉は全ての悩みを解決してはくれないが半分以上は解決できる。【全4節】
04そういう勇気もある。
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斧を両手で握り、一歩で距離を詰める。
魔物は両腕に力を入れて身体を固めて防御態勢に入るが。
無駄だよ。これは一撃だ。
俺はこれ以上なく、身体中の筋肉や地面からの抗力、斧と体重などの重さ。
全ての力を総動員して斧を振り抜く。
最早斬った手応えも、叩き潰した手応えも無く。
振り抜いた後には、氷結魔法で固定された足だけと、薄く積もった雪が弾け飛んだ魔物の血と肉片で赤く染まった景色が残った。
「ひゃー、相変わらず凄まじいね……、国内最高峰の近接火力なんじゃねえかな……」
しゃくしゃくと雪を踏みながら、この国最高峰の速さを誇るクロウ・クロスギルド長はそう言って。
「まあ、元気そうで何よりだ。さみいから家に入れてくれ、僕は寒いのが苦手なんだ」
空間魔法で取り出した東の酒を俺に見せながら、笑顔でそう言った。
とりあえず、親父の仇をとった俺は自宅に戻ってクロウさんのやたら治りの早い回復魔法で治療を受けた。
そこからクロウさんは親父の墓に手を合わせてくれたり、俺が居なくなった後にメリッサが勇者になって、帝国に町を譲ってギルドを辞めて町を去ったみんなに会ってきた話をしてくれた。
驚いた。
メリッサが勇者になったことより、クロウさん一人で町を守り抜いていたことに驚いた。
一人で魔物と戦い続けてきた勇気に、驚愕した。
情けなくて涙が出る。止まらない。
「おいおいどうした! 何で泣くんだ! おまえそんなに酒弱かったのか?」
慌てるクロウさんに俺は自分の弱さを語る。
俺には無理だった。
あのままだったら死んでいた。
一人じゃ何も出来ない臆病者だ。
「……親父は、強くなったと言ってくれたけど…………、行かせてくれるとわかっていてクロウさんに相談をした……俺は弱虫だ。ごめんなさい」
俺はクロウさんに自分の弱さをさらけ出して謝る。
「……あ? おまえが気にすることじゃないっていうか、相談じゃなくて報告で良かったんだぞ? そもそもバリィとリコーが抜けた時におまえのパーティは解散になっちまってんだから、そのタイミングで抜けても良かったんだ」
本当に気にも留めていない様子でクロウさんは語り出す。
「もちろん僕や町のみんなとしては、本当に、ほんっとぉぉぉ…………に助かったけど、おまえの人生なんだ。文句は言わねえし言わせねえよ」
酒をコップに注ぎながら、続く。
「それに一人じゃ戦えないってのは……、まあ一人で戦えるに越したことはないんだろうけど冒険者として本質的には意味をなさない。教えたろ、連携こそが戦いの核だって。お互いをカバーしつつパーティや小隊と言う、一つの戦闘単位になることが大切なんだよ」
かつてギルドで何度も聞いた冒険者としての基礎を語り。
「逆を言えばおまえは、誰かと組めば相手を確実に一撃で消し飛ばすほどの力を発揮出来る。誰かと一緒なら強くなれる」
そう言って、注いだ酒を飲み込んでから。
「そういう勇気もある。おまえは勇敢だ」
笑顔で俺が言われて一番嬉しいことを、さらりと言ってのけた。
そこから朝日が昇るまで、みんなの近況を聞いた。
バリィの兄貴とリコーの姉貴は南の街で産まれてきた子供と幸せに暮らしているとか。
西に行ったジスタさんたちやシードッグさんたちは、キャミィを守って散っていたこと。
次は公都で治療中のブライさんとセツナさんに会って、会えたら勇者になったメリッサにも顔を見せるらしい。
俺も冬を越したら南に行ってみようか。
バリィの兄貴たちにも心配かけているみたいだし、兄貴たちの子にも挨拶をしておきたい。
そんなことを思いながら、クロウさんと酒を飲み交わして、一人ぼっちの魔物討伐は俺には無理と言う結論を持って成功に終わった。
魔物は両腕に力を入れて身体を固めて防御態勢に入るが。
無駄だよ。これは一撃だ。
俺はこれ以上なく、身体中の筋肉や地面からの抗力、斧と体重などの重さ。
全ての力を総動員して斧を振り抜く。
最早斬った手応えも、叩き潰した手応えも無く。
振り抜いた後には、氷結魔法で固定された足だけと、薄く積もった雪が弾け飛んだ魔物の血と肉片で赤く染まった景色が残った。
「ひゃー、相変わらず凄まじいね……、国内最高峰の近接火力なんじゃねえかな……」
しゃくしゃくと雪を踏みながら、この国最高峰の速さを誇るクロウ・クロスギルド長はそう言って。
「まあ、元気そうで何よりだ。さみいから家に入れてくれ、僕は寒いのが苦手なんだ」
空間魔法で取り出した東の酒を俺に見せながら、笑顔でそう言った。
とりあえず、親父の仇をとった俺は自宅に戻ってクロウさんのやたら治りの早い回復魔法で治療を受けた。
そこからクロウさんは親父の墓に手を合わせてくれたり、俺が居なくなった後にメリッサが勇者になって、帝国に町を譲ってギルドを辞めて町を去ったみんなに会ってきた話をしてくれた。
驚いた。
メリッサが勇者になったことより、クロウさん一人で町を守り抜いていたことに驚いた。
一人で魔物と戦い続けてきた勇気に、驚愕した。
情けなくて涙が出る。止まらない。
「おいおいどうした! 何で泣くんだ! おまえそんなに酒弱かったのか?」
慌てるクロウさんに俺は自分の弱さを語る。
俺には無理だった。
あのままだったら死んでいた。
一人じゃ何も出来ない臆病者だ。
「……親父は、強くなったと言ってくれたけど…………、行かせてくれるとわかっていてクロウさんに相談をした……俺は弱虫だ。ごめんなさい」
俺はクロウさんに自分の弱さをさらけ出して謝る。
「……あ? おまえが気にすることじゃないっていうか、相談じゃなくて報告で良かったんだぞ? そもそもバリィとリコーが抜けた時におまえのパーティは解散になっちまってんだから、そのタイミングで抜けても良かったんだ」
本当に気にも留めていない様子でクロウさんは語り出す。
「もちろん僕や町のみんなとしては、本当に、ほんっとぉぉぉ…………に助かったけど、おまえの人生なんだ。文句は言わねえし言わせねえよ」
酒をコップに注ぎながら、続く。
「それに一人じゃ戦えないってのは……、まあ一人で戦えるに越したことはないんだろうけど冒険者として本質的には意味をなさない。教えたろ、連携こそが戦いの核だって。お互いをカバーしつつパーティや小隊と言う、一つの戦闘単位になることが大切なんだよ」
かつてギルドで何度も聞いた冒険者としての基礎を語り。
「逆を言えばおまえは、誰かと組めば相手を確実に一撃で消し飛ばすほどの力を発揮出来る。誰かと一緒なら強くなれる」
そう言って、注いだ酒を飲み込んでから。
「そういう勇気もある。おまえは勇敢だ」
笑顔で俺が言われて一番嬉しいことを、さらりと言ってのけた。
そこから朝日が昇るまで、みんなの近況を聞いた。
バリィの兄貴とリコーの姉貴は南の街で産まれてきた子供と幸せに暮らしているとか。
西に行ったジスタさんたちやシードッグさんたちは、キャミィを守って散っていたこと。
次は公都で治療中のブライさんとセツナさんに会って、会えたら勇者になったメリッサにも顔を見せるらしい。
俺も冬を越したら南に行ってみようか。
バリィの兄貴たちにも心配かけているみたいだし、兄貴たちの子にも挨拶をしておきたい。
そんなことを思いながら、クロウさんと酒を飲み交わして、一人ぼっちの魔物討伐は俺には無理と言う結論を持って成功に終わった。
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